(93)年：リーガル・フィルムズ
監督：ホセ・ハヴィエール・レイエス
主演：ルッファ・グチェレス
カルミナ・ヴィリアロエル
イザベル・グラナダ
アナ・ローセス
アルジョン・ヒメネス
ジェフリー・サントス
ルーベン・マナハン
ランディー・ソリヴェン
アンジョー・イリアーナ
カリダッド・サンチェス
ホセ・ハヴィエール・レイエスの監督作品としては、まだそれほどうまくなかった頃のものと考えていいだろう。のちに監督になったエドガルド・“ボーイ”・ヴィナラオが編集を担当している。
三話構成のオムニバスで、エピソードⅠの『ＰＡＮＧＡＫＯ』（約束）は悲劇のロマンティック・ファンタジー。カルミナ・ヴィリアロエル演じる内向的な少女がいて、厳しい両親のもと、自分を解放できないでいる。それが両親の妨害をかいくぐって兄の友人と恋することによって目にみえて明るくなるのだが、恋人が飛行機事故で死んでしまう。すっかり生きる意欲を失ったカルミナに周囲は心配するも、ある嵐の夜、日ごろから信心深かったカルミナが教会でお祈りをしていると、恋人が現れて形見のペンダントを渡し、自分のぶんも生きてほしいと消えていく。
とくにどうってことない物語で、ちょっとお子さまランチ的かなあ、といった印象が残る。
エピソードⅡの『ＫＡＲＡＭＢＯＬＡ』（ボールの投げ合い）はドタバタ・コメディー。アナ・ローセスとイザベル・グラナダ演じる次期大統領を狙う将軍のわがまま娘二人が主人公で、パーティーの最中に誘拐されてしまう。この誘拐犯たちがいかにもドジで、映画館の看板の倉庫をあじとにしているのだが、その看板の恐竜が動くといった低レヴェルなＳＦＸも加えて、全編ただ騒がしいだけで、さして盛りあがりもなく終わるから、ちょっと困ったでき。
ただ将軍がマスコミから写真を撮られるとき、背景に掛けてある肖像画を裏返しにするとアキノ大統領に変わるのは、さすがにクスクスっと笑いが起きる。またトンチンカンな尼僧に扮したコメディエンヌのアイアイ・デラス・アラスとルビー・ロドリゲスが、アクの強い演技で引きつけてくれる。
エピソードⅢの『ＡＰＡＲＡＤＯＲ』（クローゼット）は正統派ホラー。デクスター・ドリアとルッファ・グチェレス演じる親子が越してきた家の、二階のクローゼットから少女の霊がでる。10年前に事故でこの中に妹を閉じこめて死なせてしまった男が登場して事実を説明し、神父を呼んで悪魔祓いをするも、ルッファが少女によってクローゼットの中へ引きこまれてしまう。とにかくきっちりした構成とよく計算された演出でたくみにサスペンスをつくっていて、けっこう楽しめる内容。前の二話だけだったら「しょーもない」のひと言で片づける駄作だが、やっとホセ監督が実力を発揮したといえよう。
でもラストの「あれっ、また何か音がしたぞ」と期待させておいて、気のきいたオチがないのはがっかりで、十分に納得とまではいかない。
なおジュディー・アン・サントスの名前がオープニング・タイトルにあるが、年齢から察して亡霊の少女役だろうか。だと顔が少し違うように感じるが、たぶん間違いない。
