ＰＡＴ．　ＯＭＡＲ　ＡＢＤＵＬＬＡＨ　　ＰＵＬＩＳ　ＰＲＯＢＩＮＳＩＹＡ
（パット・オマール・アブドゥラー　地方警察）
　
92年：ムーヴィー・スターズ／スタリオン・フィルム
監督：ホセ・バラグタス
主演：フィリップ・サルヴァドル
　　　 エディー・グチェレス
　　　 ヴィク・ヴァルガス
　　　 ドニータ・ローズ
　　　 フォルトゥナト・‘アトイ’・コー
　　　 ウィリー・レヴィリアーメ
　　　 ディンド・アロヨ
　　　 レーチェル・ロバンコ
　　　 ラモン・ドゥサルヴァ
　ムスリムの警官を主人公にするアクション映画。
　フィリップ・サルヴァドル演じるのがダヴァオにつとめる警官で、たまたま銀行強盗の人質にとられたレーチェル・ロバンコ演じる妻をディンド・アロヨなどが演じる犯人に殺される。幼い息子をアイダ・ペディコ演じる母にあずけ、上司にラモン・ドゥサルヴァ演じる警察将軍あての紹介状を書いてもらい、銀行強盗の多発するマニラへとでてくる。将軍は不在ながら、ヴィク・ヴァルガス演じる警察大佐がうけ入れて、捜査の一員に加わる。同じムスリムだからとジョーイ・パディーリア演じる警官とパートナーを組むも、正義感のフィリップが暴走し、エルニー・フォルテやダニー・ラブラ演じる銀行強盗を射殺する。実はエディー・グチェレス演じる議員が黒幕で、ヴィクやディンドが仲間。「どうなってるんだ」とエディーが責めると、ヴィクが「彼は地方警察のせいだ」という。エディーがフィリップを引きこもうと考えるが、うまくいかず、フィリップの殺害を試みる。いったんディンドに捕まって逃げたフィリップがヴィクに連絡を入れ、ジョーイたちが襲ってきたのでヴィクの正体を知る。
　マニラ署へ最初にきた際、フォルトゥナト・‘アトイ’・コー演じる警官仲間とぶつかってそりが悪く、フィリップのバーでのケンカをアトイがとめて対立の図式をうかがわせるも、結局、アトイが信頼できる味方になるのは、作劇のパターン。フミルデ・“ミーク”・ロハスと監督のホセ・“カカ”・バラグタスのストーリーにもとづくミークの脚本が定石を踏んでいる。敵対中のジョニー・ヴィカール演じる知事やヴィク・フェリペ演じる議員を殺害するとき、ディンドがラジコン飛行機でジョニーのテーブルにぶつかるのに、どことなく『ダーティハリー５』のラジコン・カーを思いだす。町並みにみたてた射撃場で警官たちが競い合うコンテストが『ダーティハリー２』の同様のシーンをマネたっぽく、実際、あのシリーズを参考にしたかもしれない。ムスリムの共同部屋にフィリップが泊まり、ウィリー・レヴィリアーメ演じるそこの男がフィリップとの行動でコメディー・リリーフをになうも、いきがるようすがなんとなく『ツインズ』のダニー・デ・ヴィートや『リーサル・ウェポン２　炎の約束』のジョー・ペシを連想させる。
　もっともフィリップがムスリムである必然性に乏しく、エディーの屋敷にキリスト教の宗教画がいっぱい掛かることに風刺を盛りこむわけでもなく、底の浅いのは当然にして、浅すぎる不満はいかんともしがたい。銀行強盗が連続する経過の部分にいたっては、もはや無法都市だろうとの皮肉も感じて、絵空ごとゆえの迫力不足が致命的。エディーのキャンペーン集会にフィリップが単独で乗りこみ、途中からアトイたちが加勢とはいえ、絶対多数を相手に敵をやっつける、しょせんはご都合主義とのわりきりしか起きてこない。ホセの演出がさっぱり冴えなかったようだ。フィリップとヴィクの一対一による西部劇もどきの早打ち決闘も、現実的にもっと西部劇の構成を学んだらと思わせる。
　これで女優の魅力が輝けば文句もでないながら、ムスリム風なデザインのラメ衣装で登場したレーチェルが、早々に姿を消して残念。ドニータ・ローズがニュース・キャスター役で顔をだし、予想にたがわず、警察批判を繰り返すうちにフィリップと恋仲に発展で、傷ついたフィリップをかくまって一緒にすごすも、キスのみでベッドがなくてイマイチになる。レーチェルは色っぽく、ドニータはキュートだから期待したのに…　ディンドが風呂とベッドで抱き合う娼婦が全裸なのと、ヴィク・フェリペが撃たれるバーのビキニ・ダンサーたちがＴバックのお尻をドアップに迫り、無名の脇ばかりが挑発をくれる。
　なお数ヶ所に散りばめられたアクション・シーンのメンバーにはルエル・ヴェルナル、レネ・ホーキンス、ポリー・カドサワンのほか、ほんのチョイ役でヤヌス・デル・プラド、レナート・デル・プラド、ノノイ・デ・グスマン、マイク・マガット、ヴィク・ヴェラロ、トニー・ベルナル、ルディー・ドミンゲス、ダニー・リエル、ダン・フェルナンデス、テリー・ババサ、ボーイ・ラナイ、ボーイ・ゴメス、監督のホセなどが出演している。