ＳＰＯ４　ＡＮＴＯＮＩＯ　ＣＵＥＲＶＯ　　ＰＯＬＩＳ
　
99/00年：レヴィン・フィルムズ
監督：ロイ・ヴィンゾン／リト・Ｎ・メナ
主演：ロイ・ヴィンゾン
　　　 レス・コルテス
　　　 デイジー・レイエス
　　　 ザンドロ・ザモラ
　　　 ロルダン・アキノ
　　　 レヴィー・イグナシオ
　　 　ボブ・ソレル
　俳優のロイ・ヴィンゾンが監督を兼任した作品であり、共同監督のリト・Ｎ・メナとともに脚本も執筆している。また悪徳警察署長役で出演している俳優のロルダン・アキノがストーリーを担当。
　おそらくロイは強烈な個性を持つという意味では、フィリピンでもトップ・クラスだが、どちらかというとそれは悪役のときに発揮されるように思う。本当なら非情な犯罪者という設定で自作自演してほしいと感じるのだが…
　警察役であろうと関係なく、基本的に演出力不足なのはいかんともしがたい。
　冒頭にバイクで倉庫へ飛びこんで犯人を逮捕するアクションがあり、ＴＶキャスターから「ダーティー・ハリーのようですね」といわれるエピソードを置いている。なるほど『ダーティハリー』をイメージしているのかあ、との狙いを読みとれるも、荒っぽい捜査に反して、デイジー・レイエス演じる恋人との関係など、慎ましやかなプライヴェートを対比。
　ちなみにデイジー・ファンとして、彼女を堪能するためにみた作品だが、ほとんど添えもの的な扱いに残念。ラヴ・シーンも黒いスリップ以上に脱がす、エロティックな撮りかたをしていないから、そりゃないでしょうと落胆が走る。
　友人の息子を名づけ子にしてかわいがっているも、ジョアンヌ・サラザール演じる母がショッピングしている間に、父とともにヒット・マンに撃たれ、鬼となって捜査を開始。ロイはオロンガポの警官なのだが、情報屋から犯人がアンヘレスのシンジケートのさしがねと知って、単身乗りこんで行く。
　なのだが、わりとコメディー調で、緊迫感がないのには困ってしまう。笑えもしないギャグのためにテンポを落とされ、やたら退屈的に長いのだから、イヤになるばかり。
　アンヘレスのクラブ“ジュリアナ”をアジトと踏んで、パトリシア・レイエス演じるそこの歌手に接近。パトリシアは美人というほどでないがかわいく、歌もうまいというほどではないが、ちょっと魅力があって、収穫の新人といえる。ヘソだしのパンツ・ルックで熱唱する姿が妙にそそられるものの、ロイとのベッド・シーンでは、もう少し露出がほしかった。
　とスケベ人間にとって不満なのは、ロイとリトの両監督がマジメだからか？
　安全に保護するので裁判で証言してほしいと頼むも、パトリシアはあっさり殺され、なんともったいない。
　ロイはアンヘレス警察につかまり、ロルダン演じる所長がシンジケートとツルんでいて、留置場で殺されそうになるが、ザンドロ・ザモラ演じる上司が乗りこんできて助かる。こんな設定に、実際のアンヘレス警察は怒らないのか、と不思議になる。前出の“ジュリアナ”にしてもよく撮影を許可したものだ、とあきれるのみだが、そういう考えかたのようだ。
　ジンジケートのほうはボスをボブ・ソレルが、その息子をレス・コルテスが演じていて、ボブの名前がタイトルから落ちているのが謎。まあ、単純に忘れたのだろうが、うっかりミスに平気（？）なあたりもフィリピンか!?
　レスは無理やり女を奪いたくなって、そのパートナーのアメリカ人を殺し、このアメリカ人がいかにもアンヘレスにいる売春野郎で、意外によく観察してるじゃないか、と妙なところに納得。
　アメリカ大使館からの抗議に対して、さすがにかばいきれなくなったロルダンを、ボブとレスが毒殺するエピソードが入り、ここまでくるとトロいテンポもあり、さっさとロイにやっつけられて映画が終わってほしいなあ、というのが正直な印象に。でもアクションには頑張っている部分がみられ、ヌンチャクを持つコメディー・キャラクターをだすなど余計なことをするからいけないわけで、シンプルに日本刀で切り合うところなど、けっこう殺陣に迫力があるじゃないかと感心。
　最後はボブが倒され、頭にきたレスがデイジーを誘拐する展開で、ちょうどデイジーが試着していたウェディング・ドレスのまま。オッと、ビリビリッと破られて肌がみえるシーンがあるぞとワクワクしたが、そうならないから、どうでもいい作品だと断定する。
　ザンドロが敵側だったとわかるラストは、意外性を狙ったというより、無理にドンデン返しを加えるな、といった面のほうが強いし、いったん死んだと思ったヤツが生きていて、デイジーが発砲するのも余計で、パターン演出ばかり。それでもリズムさえつかんでいれば楽しめるはずだが、しょせん素人ということだろう。
　たとえばクリント・イーストウッドにしても、しっかり演出できるようになるまでに数本かかっているから、ロイだっていずれうまくなる可能性があり、続けるなら本気でやってほしい。