ＰＩＴＩＫ　ＢＵＬＡＧ　（ＢＬＩＮＤ　ＬＵＣＫ）
（目のみえないものが感じる一瞬のきらめき）
　
09年：ＡＬＶエンターテインメント
監督：ヒル・Ｍ・ポルテス
主演：ヴィクトル・ネリ
　　　 マルコ・アルカラス
　　　 パロマ
　たまたま銀行から強奪の大金を拾った男のドラマ。強盗犯に主人公が命を狙われるとのストーリーは『ＢＡＮＡＴＡＮ』『ＴＩＫＩＭ』など同種のものがかなりで、ありきたりな題材といえる。実力派監督と評価するヒル・Ｍ・ポルテスが、このユニーク性の薄い内容でいかに差別化をはかったかに興味が起きる。
　エリック・ラモスの脚本のアイディアだろうが、まず主人公のふたりを映画界にからませる設定がおもしろい。スタントマンのアンヘロ（マルコ・アルカラス）はアクション・スターを夢みて、フェルナンド・ポー・ジュニアにあこがれる。恋人のカラ（パロマ）も女優をめざし、エキストラをつとめている。舞台が五年後に移り、アンヘロがオーディションをうけると、ディレクターもプロデューサーもオカマ。アンヘロの「ＦＰＪのようなアクション・スターになりたい」に「ＦＰＪは亡くなった」と応じて「我々がほしいのはソープ・ドラマのマッチョ・ダンサー役だ」にアンヘロをパンツ一丁で踊らせる。それでもアンヘロは家の部屋にＦＰＪの大統領候補だったときのポスターなどを貼り、ＴＶ放映の映画をみながらアクションをまねる。伯父（？）のドドン（リッキー・パスクア）に借金を頼み、ドドンの家の近くで銀行強盗が発生にガードマンがふたり殺されてひとり入院し、実際の事件をあつかった映画の「『ＰＡＲＡＮＡＱＵＥ　ＢＡＮＫ　ＲＯＢＢＥＲＹ』を思いだす」とドドンがいい、あの映画でガーリー・エストラダが演じた主人公がＦＰＪにあこがれていたのをアンヘロと話す。大金を拾ったアンヘロがＦＰＪのポスターに「このカネは正しく使います」と誓えば、あとで銀行強盗のリノ（ヴィクトル・ネリ）とジョーイ（セシル・パズ）がアンヘロの部屋を調べ、ＦＰＪのポスターをみて「お前はＦＰＪに投票したか？」なんてお互いに問い合う。カラはキアポの旧作映画館の切符売りをつとめ、中に『ＳＥＸ　ＳＣＡＮＤＡＬ』などの映画のポスターが貼られる。アンヘロが入場の際にちょうどセックス・シーンが進行中の上映作が何かはわからないが、大金の入ったバッグを抱くアンヘロにホモの客が近づき、リノが映画館にくるときも入り口の横でホモが視線を送るし、トイレでチンポをのぞくホモが大便の個室でフェラを求めるとリノが冷酷に射殺に、場末の映画館がホモの発展場と示す。アンヘロは自分がほんのチョイ役でスタントを担当の作品をカラと映画館に鑑賞で、まさに出番のシーンのタイミングに座席の前を客が歩いた苦い記憶をなつかしがる。カラには田舎にあずけている幼い娘（ブライサ・イノイ）の前でアンヘロが人気ヒーロー・ドラマの『ＰＡＮＤＡＹ』の主人公に扮した記憶がよぎるが、この『ＰＡＮＤＡＹ』は物語のラストにからむ。
　またフィリピン社会の風俗やフィリピンの人間像をよく盛りこみ、裏の面もふれる。カラはキアポ教会周辺の商店街をうろつき、占いをうける。キアポ近くの貧民街に暮らすアンヘロがジョーイに借金を頼むと、返るあてがないのにジョーイが二千ペソを貸してくれる。隣人のおばさんのネナ（ルビルビ）にも電話代や交通費で百ペソ頼んで、五十ペソを借りる。ジョーイの家に向かう途中でトライシクルの料金を値切れず、歩いたために大金のバッグを拾う偶然に遭遇。ネナがカラに「あなたはまだ若いから、やり直せる」とアンヘロとの離婚をすすめるお節介でアンヘロとカラの生活を詮索し、警察がアンヘロのことを調べにくるとベラベラしゃべる。その軽薄さを嫌うアンヘロが、いったんカラが部屋に戻るのをネナにバレると心配するも、わざとカラがウソの情報を話す。ネナにあれこれ質問の警官のボンガボン（ロベルト・コレア）はリノと兄弟にあたり、実は強盗の仲間。落としたバッグのカネが分け前で、バッグを発見できないと「とりぶんはない」と主犯にいわれている。強盗のあとの逃走がプライヴェート・ジプニーだったため、デコボコ道で大金のバッグをひとつ落とす。リノと一緒にアンヘロとカラを追う強盗のジョーイが男装の女のトンボイなのが、ホモの出没とともにフィリピンっぽい。犯人の疑いのかかったアンヘロが無実とつかみ、リノを射殺し、ボンガボンの正体をあばく刑事のホ（マイケル・タン）が中国系の点は、有能な人物が中国系とにおわせる。
　バッグの中身を知ってあせったアンヘロが自分のバッグへカネのつめかえに冷静さを欠き、身分証明書の入った財布を忘れ、それでリノたちに存在がわれる流れで、カネのネコババに対してカラが抵抗を感じ、アンヘロの「どうせ返しても警察が着服する」などの言い訳に納得も、犯人たちに殺されたガードマンの遺族のインタビューをＴＶでみて「この人たちにわけてあげるなら」と条件をつけ、金額もアンヘロの提案より高くこだわるのは、神への謝罪の意味がにじむ宗教的な要素。おそらく犯人サイドが自分たちを探しているのを察しつつ、カネの配達を実行の部分がもっとも作者側のこだわった核に思える。市役所の使いのふりで訪問の葬式では犠牲者の妻（マルー・クリソゴロ）が涙ながらに喜び、感謝を神に述べるあたりが、さらに宗教の浸透をうかがわせる。一家が小さな子どもを五人もかかえる大家族にフィリピンの貧しさを暗示。国会議員の使いをよそおって訪問の葬式では妻（マリフィ・ネシシト）が警戒し、伯父が「その国会議員の不正を弾劾の裁判の姪は証言者だ」と教えて、なんとか「議員は気にしていない」とのごまかしでカネをわたせば、亡くなった夫にはすでに別の妻がいたが、伯父と妻が「カネのことを聞くと分け前をいいだすから、黙っていよう」と申し合わせる。傷をおって入院のガードマンをアンヘロがひとりで訪問すれば、夫が眠れば妻（メロー・ジョンソン）がアンヘロに愛撫の誘惑で計算高い好きものと示すや、ＴＶのニュースにアンヘロの顔が映って看護婦が「強盗犯だ」と騒いだのにアンヘロがカネを置いて逃げるも、前にリノが恋人（トレーシー・トレス）と３Ｐを楽しんだとき、恋人が「フレンドスターで探した」と連れてきた相手の女性がこの妻で、観客には「夫がガードマンで昼間は不在だから…」という妻にリノが買春のカネをあげていた偶然の事実がわかる。まさに三者三様の人間模様が複雑な現代社会の風刺につながる。
　カラの愛犬をリノが射殺で残酷な性格をあらわすも、カラが愛犬の死体に呆然のショットで犬の息がバレて、動物の死の演技はむつかしい。
　結局、ネナが人気の若手カップルのタレントの載る芸能誌をカラにみせる前提をおき、人気若手カップルの撮影でファンややじうまの集まる人ごみに逃走中のカラがまぎれ、札をまいて混乱を誘発は定番ながら、アンヘロがリノに撃たれてネナのみが娘の待つ田舎へたどりつき、アンヘロは「ヒーローになったんだ」と想像でアンヘロが『ＰＡＮＤＡＹ』の剣を天にかざす決めポーズをとるのを重ね、虚構と現実のダブりで終わる。映画やＴＶの与える夢に対し、与える側にまわることの厳しさと、夢にこだわって生きることのさらなる厳しさと、その厳しさに舞いこんだ一時の夢をあつかうも、語り口のうまさでグイグイと盛りあげるとはいえ、ヒル・Ｍ・ポルテスにすれば肩の力の抜けた軽い作品。パロマの売りだしにともなう、あくまで商業的なディジタルの小品に落ちつく。
　セクシーな面を含む構成が個人的には嬉しい点だが、パロマはほぼ全裸に近い雑誌のヌード写真で背中や脚に刺青を入れていると知るため、頭っからタイプをはずれるとの意識がもたげて興奮をそぐ。小さな役がついたとはしゃぐアンヘロと夜の屋外でイチャイチャでオッパイを全開。さすがにアンヘロにもまれる乳房の大きさや形がバツグンで美乳だし、乳首も絶品のうえ、粗末な家で寝るポーズの短パンの太腿がそそり、アンヘロが『ＰＡＮＤＡＹ』のマネを回想で娘とビーチにいて、水着じゃないも、ワンピースのバストの谷間が注意を奪い、モーテルでアンヘロとセックスでふたたび乳首がバッチリのオッパイを丸だし。後半の逃走のかっこうが下半身にピタピタのタイツのごとき黒いジーンズなのがムズムズを呼ぶも、刺青のせいで性欲が起きない。トレーシー・トレスにも同じ指摘があてはまり、リノの左に全裸で座るかっこうで脚がオマンコを隠し、オッパイがモロだしに加え、レズのもだえで乳首が立つあたりに生つばゴクリのはずが、太腿の刺青にシラける。メロー・ジョンソンは刺青やヘソピーをしないボディーがよく、リノの右に座る全裸はオッパイの形がトレーシーに負ける感じとはいえ、服を着るときにＴバックのお尻がみえて刺激をくれるし、病院でアンヘロを挑発のローライズ・ジーンズがセクシー。でも容貌的にパロマと比べればイマイチかな。
　あとマリフィ・ネシシトは『ＳＡ　ＰＵＳＯＤ　ＮＧ　ＤＡＧＡＴ』でオッパイをポロリのマリフェ・ネセシトと同一女優で、若手アイドルに扮したレジェンド・アントニオがなかなかかわいい。
　マルー・クロソロゴとルビルビはうまさが際だった。