00年：ミレニウム・シネマ
監督：トト・ナティヴィダッド
主演：ルディー・フェルナンデス
ロルナ・トレンティノ
ヘルベルト・バウティスタ
リッキー・ダヴァオ
グライデル・メルカド
エース・エスピノサ
トロヴァドール・ラモス・ジュニア
ジェフリー・サントス
レス・コルテス
デイジー・レイエス
実在の警察官であるピン・ラクソンの半生を扱う伝記映画。というか、制作の時点で現役の警察将軍だけに、この人物が持つ負の部分を描けず、キレイごとにおさまるのはしょうがないか。
１９７１年に警察学校を卒業し、ジェフリー・サントスやボーイ・ロケが演じる凶悪犯を貧民街の銃撃戦でやっつけるアクション・シーンへと続く。希望によってレイ・ヴェントゥラがチーフを演じる特殊部隊へ配属されてからは、１９８１年のロビナ・ゴコンウェイ誘拐事件の解決が登場し、当時としてはエポックな出来事だったようだ。もう一つ、１９８２年のマニラ・プラザ・ホテル爆弾事件も、画期的なニュースとして残っていると思われる。
途中、マルコス大統領の会見や、大学生たちのデモ、１９８３年のニノイ・アキノ暗殺などのニュース・フィルム挿入で時代背景を表わし、もっともトト・ナティヴィダッド監督などスタッフが苦心したのは、１９８６年のビープルズ・パワーによるアキノ政権発足のエピソードじゃないかと想像する。おそらく体制側である警察組織のメンバーだけに、ピンは民衆を弾圧したと推測できるも、ここは一線を退いたとの設定。しばらく田舎で養鶏を始めていたら、１９８６年に依頼を受けて復帰。パトリック・デラ・ロサがリーダーを演じる自動車窃盗団を全滅へ追いこむ１９８７年の活躍で再び注目を浴びる。
映画は１９８９年にセブへ赴任し、エース・エスピノサとロンメル・パディーリア演じる銀行強盗をやっつけるとともに、黒幕がレス・コルテス演じる市長と暴いて最優秀警官の賞を受賞。１９９２年のラグーナへの赴任では、ガミー・ヴィライ演じるシンジケートのボスからの買収を断ったためにトロヴァドール・ラモス・ジュニア演じる部下を襲撃で殺されるなどを語りながら、いかにピンが現在の地位へついたかを明らかにする。
もちろん家庭の描写もでてきて、ロルナ・トレンティノ演じる妻と三人の子どもたちとの愛情が核。ジュニー・ガンボアとピラル・デ・レオン演じる両親との交流は、つけ足し程度かな。おそらくジョーリエ・ペラエズ演じるバーの女とグライデル・メルカド演じる歌手との浮気エピソードはフィクションだろうが、実際に女性関係は華やかだったに違いなく、この手のスケベぶりはかえって人間っぽいといえる。
いくらなんでもつくり話なのは、特殊部隊の中にリッキー・ダヴァオ演じるピンの活躍をこころよく思わない隊員がいる点。もちろん実際に対立は存在したと推測するも、マイク・ガヨソやアルヴィン・アンソンなどが演じる部下とともにリッキーが誘拐犯へ転じ、ヘルベルト・バウティスタ演じるピンの片腕を射殺、とはどんなものかと首をかしげる。ハデな見せ場をプラスしたかっただけじゃないかと…
冒頭でピンのやりかたが暴力的だと査問委員会が開かれ、エルニー・サラテやメンゲー・コバルビアスが演じる上院議員がピンに質問。クリス・ダルス演じる運動家が民衆を率いて反ピンの集会を開いている光景を実録っぽく再現し、なかなか面白そうとワクワク盛りあげたわりには、それに応じる無罪判決のシーンがあっさりしすぎでもの足りないなど、全体的にイマイチの印象なのはぬぐえない。駆け足でピンの活躍のさわりばかりを並べた構成が一番の原因と考えるながら、しょせんモデルが健在のヒーロー的な伝記ものとはこんな程度かもしれない。
主人公のピンを演じるルディー・フェルナンデスはトレード・マークのヒゲをそってリアリティーをだそうとの意欲をみせるが、可もなく不可もない印象。若い頃にもっとギラギラした殺気が漂い、将軍となったあとに貫禄というか、内面よりわきでる風格を感じさせるまでにはいたっていない。ロルナは浮気を問いつめるときにおかしさを醸し、法廷では無言で夫への愛情を表現するも、いささか出番が少なめで残念。
またレイを暗殺するヒット・ウーマン役でデイジー・レイエスがゲスト出演し、ほんのワン・シーンのみで、もっとみたかったよお。
色っぽい要素はお申し訳程度に盛りこまれ、ピンがジョーリエを訪ねるバーの店内でビキニのダンサーたちが挑発的に踊っていてウハウハ。ジョーリエのワンピースをめくり、一瞬パンティーがのぞくショットでは、スケスケ素材のものだからドキッ。グライデルはピンとのセックスで白いブラまで露出してくれる。
あとロビナを演じたアンジェリカ・クルモナレス、その従姉妹を演じたメロディー・パウガニバンは、パンティー・ラインの浮かぶジャージ姿が視線を奪うも、いささかブスっぽい。ガミーの手下の一人にアルレン・デ・レオン演じる女性がいて、まずまずかわいい容貌で気になった。
※ ピン・ラクソンは２００４年の大統領選挙に立候補したが、落選だった。
※ のちにアンジェリカ・クルモナレスは、無名時代のエンジェル・ロクシンと知った。おそらく映画デビュー作だろう。
