ＰＩＬＡ−ＢＡＬＤＥ
（こわれたバケツ）
　
99年：グッド・ハーヴェスト・プロダクションズ
監督：ジェフリー・ヘトゥリアン
主演：アナ・カプリ
　　　 アレン・ディゾン
　　　 マルクス・マドリガル
　　　 ハロルド・ピネダ
　　　 エストレリア・クエンスレル
　貧民街の人間模様を描く作品として、かなり上質の部類じゃないだろうか。
　巧みにからみ合う複数の人物の登場に、それぞれの生活ぶりが紹介される。一応、中心となるのは、アナ・カプリ演じる揚げものの売り子で、父親が服役中との設定。エストレリア・クエンスレル演じる祖母とともに洗濯請け負いも行っている。ハロルド・ピネダ演じる洗濯の依頼主で橋向こうにあるお屋敷の息子にホの字で、自分を好きになるおまじないの儀式中にろうそくを倒して大あわてとのエピソードは、あとへの伏線。勝ち気な性格に、男どもを蹴散らす勢いを秘める。マルクス・マドリガル演じるハロルドの友人はアナにほれていて、友人たちと水の配達の仕事を考案。ハロルド宅も顧客で、小金持ちの家ですら水道が完備されてないあたりが興味深い。
　映画は前半にダリリン・ケーテス・ダハオ演じるアナの妹がゴム跳び遊びをしていたり、エストレリアが悲劇のＴＶドラマをみながら泣いていたり、バスケット・ボールのＴＶ中継に興奮したり、町内の宝くじを買ったり、その抽選会風景がでてきたり、はたまたホモ男がマルクスの水浴びをのぞいたり、エヘルベルト・ラモス演じるアナの弟が洗車で小づかいを稼いだり、ハロルドとマルクスたちがディスコ・パブへ飲みに行ったり、次々と暮らしの一端をさり気なくストーリーにプラスで好奇心がワクワク。アルマンド・ラオの脚本が丹念に練ってあるのだろう。マリア・テレサ・パロン演じる水商売に入る女の子が年齢を聞かれて「十六歳」と答え、ブローカーがけげんな顔をしたので「十九歳」と訂正は、さもありなん。アナが市場で靴をじっとみるのは、オシャレの第一に靴を考えているフィリピン人らしい。チャリッサ・パスクアル演じる友人とともにアナがクリス・コルプス演じるオカマからエアロビクスの指導を受けるあたりの微笑ましさや、アナがハロルドのシャツをアイロンで焦がし、ハロルドが「ポロだぞ」と怒る輸入ブランドへのあこがれにも納得が起きる。アマヤ・メイナルド演じるＧ．Ｒ．Ｏ．がスリップ姿で足のツメを磨いてもらう様子も面白いが、実際、友人宅の近所にこのツメ商売の女性がいて、一度エナメルを買ってあげた、というか勝手に買われた個人的な思い出がよみがえる。
　ジェフリー・ヘトゥリアン監督の演出が光るのはエストレリアが亡くなるシーンで、とくにドラマティックに盛りあげたり、センティメンタルに訴えるのではなく、誰も気がつかないうちにそっと息を引きとっている自然さがよい。葬式の際に参列者がイカサマ麻雀を展開しているのは、よく現実をとらえている。
　群像劇にあっても物語の柱を占めるのは、マルクスがアナをダンス・パーティーに誘って待つも、その間にアナがハロルドに処女を捧げるエピソード。アナが妊娠するとハロルドは認知を避けて逃げまわり、違法な避妊薬を飲んで入院のアナをみるや、マルクスがハロルドをボコボコに殴りまくる。これに夫が外国へ出稼ぎ中のローズマリー・ローズ演じる妻がいて、性的欲求不満を知ったハロルドが誘惑。さらにアレン・ディゾン演じるアマヤの情夫がローズマリーと密会したため、アマヤともめるいざこざネタが並行する。浮気のイチャイチャは確かに日常茶飯で、フィリピンにいて自分でも実感のところ。
　クライマックスは火事になり、アナが普段通りに夜をすごしていると、近所から大騒ぎの声が聞こえてくる。外へでてみるや、みるみる火の手が広がり、これによってマルクスの父が焼死するが、いかにも誇張やわざとらしさを抑えた燃えかたの映像に感嘆。翌日、一帯が焼け野原になって、わが家を失った人たちがテントの下、麻雀にきょうじる楽天性からはフィリピン人の本質が垣間みえるよう。ラストのバケツに水を汲んで洗濯を始めるアナの淡々とした態度に生きるパワーというか、雑草のような庶民のたくましさがひしひしと伝わってくる。
　それにしても、さんざんに不幸を振りかけながらも、この人生への肯定というか、登場人物へ向けるほのかな希望は作者たちのやさしさに違いない。絶叫型の熱演や高揚する音楽を控え、あっさりと幕を閉じるがゆえに、ジーンと胸に迫る余韻を残す。
　正直、みごとな作品。
　ジェフリー・ヘトゥリアンに拍手。
　さて、アナが出演しているからには、セクシー・シーン盛りだくさんなのは当然のポイント。処女を奪われるハロルドとのセックスや、ハロルドを成敗で本気と悟ったマルクスとのセックスで、ブラをはずしたあとの正常位や背中を向けての愛撫から正面、上向きなどのオッパイを堪能させてくれる。タイプからはずれる女優ながら、嬉しいではないか。一番興奮できたのはアマヤで、アレンとの騎乗位における小さめのオッパイによだれダラー。アナがこっそりのぞくとき、昼間なんだから鍵をかけてすればとあきれるも、座位で上半身をそったポーズでの上向きオッパイがおいしそう。アナが妊娠の相談にくるときは着がえ中で、トップレスのままパンティーの上にパンストをはいた格好が挑発的でビンビンを招く。ローズマリーも頑張っていて、ハロルドとのセックスでの上向きオッパイや、ベッドに座ってタバコを吸うときのオッパイ丸みえがスゲーッ。アレンとはトップレスになってフェラを始めると、アマヤが猛烈に跳びこんできて部屋から引っぱりだし、バストにあてていたタオルをはぎとるから、オッパイがポロッ。公衆の面前で恥ずかしそうに手で隠すしぐさがそそる。あとマルクスたちが配達中に水浴びをデバガメのシーンがあり、リナ・ロサル演じるダンサーとの役がらの住人がパンティー一枚になってでてくる。うしろ姿ながらも、ギンギンに視線を奪うキュートさ。ただし直後に「コラッ」と追いはらうジョニ・ロドリゲス演じるおばさんがトップレスで、このしなびた垂れ乳はみたくないよー。ハロルドの母（ベッキー・ミサ？）がレオタードでエアロビするのも、オーイ、やめてくれー。マルクスとハロルドたちが飲むディスコ・パブでは、黒いパンティー一枚でお尻を突きだして踊るダンサーが、オッパイをモロだしでハロルドに乗って腰をふるサーヴィスにウハウハ。欲をいえばマリアがかわいいだけに、脱ぐシチュエーションがほしかった。