ＰＩＥＴＡ
（ピエタ＝亡くなったキリストを抱く母マリアの像）
　
(83)年：アマザルディー・フィルムズ・プロダクション
監督：カルロ・Ｊ・カパラス
主演：チャリト・ソリス
　　　 ヴィヴィアン・ヴェレス
　　　 エース・ヴェルヘル
　　　 ルイス・ゴンザレス
　　　 マリオ・モンテネグロ
　不良の息子へ愛をそそぐ母親の物語。
　チャリト・ソリスが母親を演じ、父親がいなくて、マルコ・ポロ・ガルシア演じる反抗的な息子に手を焼いている。ある日、家庭の事情をもつミラ・モンテス演じる少女を引きとり、マルコと一緒に育てることにする。大きくなって息子をエース・ヴェルヘルが演じるようになると、平気で人を傷つける言葉をはくバカものながら、ヴィヴィアン・ヴェレス演じる成長したミラもケンカをふっかけるエースに対してスカートをはだける勢いで反論し、負けていない。ヴィヴィアンのボーイ・フレンドをエースが殴り、兄妹のような感情関係もうかがわせる。マリオ・モンテネグロ演じるヴィヴィアンの父親がやってきて、状況が一気に変化。賭博場で暴れたりのエースを、ヤクザだったマリオがヴィク・ディアス演じるボスに紹介で、悪の世界へ。マリオがチャリトを犯し、それを知ったエースが周囲に「奪うぞ」と宣言したうえでヴィヴィアンのレイプにおよぶ。マリオが部下をひきつれて報復に現われ、ルイス・ゴンザレス演じるチャリトに好意を抱いていたバランガイ議長がとめに入るのを殺すと、ヴィクを始末したエースがマリオをやっつけ、警察に逮捕される。刑務所でヴィヴィアンの出産を聞き、今度はボンバー・モラン演じる仲間と脱獄。生まれた赤ん坊を処分にやってくるストーリー。
　母親であるチャリトの鼻をいじり、エースがこれ以上ない人間のクズに描かれる。チャリトがヴィヴィアンと赤ん坊をルシタ・ソリアノ演じる叔母のもとへ避難させ、エースがジョニー・ウィルソン演じる犯罪組織のリーダーである父親を訪ねると、一緒に取り引き相手をみな殺しのめに合わせる。警官隊との銃撃戦でジョニー一味が全滅し、たまたまチャリトのところへきていたエースだけ助かる偶然が巧みな構成。チャリトとヴィヴィアンが赤ん坊と逃げ、エースが追いつき、ルシタの呼んだ警察の射撃班が駆けつけるクライマックスが盛りあがる。射撃手がもつライフルのスコープでエースをとらえ、赤ん坊を人質に奪おうとする瞬間に発砲。落ちたエースの銃をチャリトが拾い、ヴィヴィアンがかまえ、撃てない彼女たちの横からとどめの一発が命中する。
　あまりにもエースの残忍ぶりが極端なキャラづけで、いささか途中であきれるながら、死体を抱いて泣くチャリトから、母親とはこういうものだとの納得がわき起こる。とりあえずラストのサスペンスでカルロ・Ｊ・カパラスが力量をみせたようだ。
　興味深い要素をいくつか含み、チャリトとミラが七福神のどれかの人形に手をふれるおまじないは、中国文化の影響か。強盗したエースが逃走中に札束をまき、追っ手のパトカーをさえぎるのは『おかしな泥棒　ディック＆ジェーン』の影響だろう。チャリトが医者を迎えにいった間にヴィヴィアンが一人で出産するシーンが、けっこうリアルな迫力に満ちる。ヴィヴィアンがルシタと肉屋を営むマーケットの喧騒もおもしろい。
　また本来はヴィヴィアンのセクシーさを期待したのだが、レイプでワンピースがまくれ、パンティーがチラつき、太腿が色っぽい程度なのが残念。デボラー・サン演じるヴィクの情婦にエースが手をだし、セックスでデボラーがボディーにバス・タオルを巻いたままなのも同様。でもエースがジョニーから紹介される二人の女を演じるジャネット・セルヴォーラコスとスカーレット・ハンセンがウハウハをくれる。３Ｐ描写はイマイチながら、出会いがプールで、水からあがったビキニが二人にピタッと貼りついている。ジャネットとスカーレットの悩殺水着で評価を一つあげたくなる。