“ＴＵＮＡＹ　ＮＡ　ＭＡＧＫＡＩＢＩＧＡＮ　ＷＡＬＡＮＧ　ＩＷＡＮＡＮ…　ＰＥＫＳＭＡＮ！”
（もう別れることのない本当の友だちだよ…　約束ね！）
　
94年：ムーヴィー・スターズ・プロダクション／Ｍ‐ゼット・フィルムズ
監督：トニー・Ｙ・レイエス
主演：フィリップ・サルヴァドル
　　 　ヴィク・ソット
　　　 マット・ラニーリオ・３世
　　　 サラー・ジェーン・アバド
　　　 リト・ディアス
　　　 ジェニン・デシデリオ
　　　 ジョエル・トーレ
　アクション・スターのフィリップ・サルヴァドルとコメディー・アクターのヴィク・ソットの顔合わせで、ちぐはぐなおかしさを狙った作品。トニー・Ｙ・レイエスが個性の違いをいかにさばいたかだが…
　刑期を終えて出所のフィリップ演じる男のもとへ、エドウィン・レイエスなどが演じるかつてのギャング仲間が強盗の誘いにくる。堅気で暮らそうと決心しているフィリップが追いかえす一方、拳銃と手榴弾を用意で銀行強盗へ単独で向かうヴィク演じる男がいる。たまたまフィリップがカネをおろしにきた銀行で、ロミー・ディアスなどが演じるフィリップを誘った連中の一味が押し入ろうとすると、先に入店していたヴィクが銃をだし、予想外の珍事にどういうことだとロミーたちがあわてて引きあげる。警官隊がかこみ、ヴィクがフィリップを盾にとる。警察のリーダーがフィリップをみて「お前か」というと、フィリップが「オレは人質だ」なんてやりとりがあって、いつの間にかフィリップがドジなヴィクから銃を奪い、まったくこれだから素人はダメだみたいな感じで一緒に逃走する。なんてきっかけの部分は偶然の重なりがたくみで、まずまずの展開。
　メインの筋がずいぶんともたついてくる。
　ヴィクにはサラー・ジェーン・アバド演じる幼い娘がいて、聾唖者のようにひと言もしゃべらない。この娘の病気をアメリカ合衆国で治療させたいがため、ヴィクは強盗に走った設定。ジェニン・デシデリオ演じる妻が突然死以来、サラーは口を閉ざした説明が後半にでてくる。フィリップは前に強盗におよんだとき、警官隊と撃ち合いを起こし、ジョエル・トーレ演じる知り合いの家にあずけていたレディー・リー演じる娘を失った回想が途中にはさまれる。ヴィクが不在の間にフィリップがサラーを連れて逃げ、やっかいに感じていたものの、次第に自分の娘の面影がダブってくるのが核の部分。マット・ラニーリオ・３世演じるロミーたちのボスにヴィクがつかまり、フィリップが助けだしたあと、娘を返して去ろうとするや、意表をついてサラーが「行かないで」と初めて声を言葉を発するのがドラマをつくる。
　ヴィクからカネの横どりを強行でマットの一味が襲ってきて、サラーがら致され、修道院の孤児院へ送られる。ここから神父にバケたフィリップと、尼僧に女装したヴィクがチャリティーのイヴェントにまぎれこんでサラーの救出を慣行のクライマックスをむかえる。
　なにがもたつくといってヴィクがユーモラスに動くコメディーを基調に敷きながらも、フィリップとヴィクの友情、サラーとのふれ合いといったヒューマンなあたたかさ、フィリップが娘を殺される悲劇、フィリップとマットの対決などのアクションを盛りこみ、笑いと涙とスリルを一度に欲張ったバランスの悪さがテンポを落とし、ダラダラしまりの乏しい退屈感を招いた点に尽きる。フィリップがケガをおって片足を引きずったり、マットが片目をつぶしているコミカルなメイクや、ヴィクが偽造パスポートを頼んだロルダン・アキノ演じるインチキ・エージェントがマットの手下で、ヴィクが全然気がついていないシチュエーションのおかしさも生かしきれていない。ラリー・シルヴァとヴァンジー・ラバラン演じるヴィクの大家の夫婦が「やるか」とクンフーもどきのケンカを二度繰り広げ、二度とも太ったオバサンのヴァンジーにハゲ親父のラリーがノック・アウトをくらったり、傷ついたフィリップをヴィクがナネット・インヴェントル演じる祖母の女医のところへ運びこみ、近視のナネットが産婦人科なので妊婦と勘違いしてアコソへ手をかけるギャグや、マーケットでロベルト・タルビーとレナート・デル・プラド演じる警官とヴィクがドタバタ追跡するバカっぽさがクスリとできる程度で、とにかくパンチ力が弱い。
　サラーの訴えにほだされて二人が無罪になるラストもイマイチ。
　まあ、カッコよくフィリップがロープを滑ってヴィクの援護に駆けつけ、マットと対戦で銃を向けられたフィリップに、娘へいいところをみせるべく今度はヴィクが「オレも行くぞ」でロープをつたわろとうとしてズッコケるあたりにニヤニヤが起きたかな。
　結局、フィリップとヴィクの双方を立てようとしてどっちつかずとなったトニーの演出が冴えず、個性の異なる役者をかみ合わせる難しさを思い知る。おそらくトニーは、この駄作から多くのものを学んだに違いない。わりとセンスを買っている監督だけに、そんななふうにイメージできる。
　なお、尼僧役のメリー・タガサやデブラリス・ヴァレソテがまったく活躍をしないのは、いささか拍子抜け。ヴィクが尼僧のコーラスと一緒に歌うバックでなにか暴れてほしかった気がしないでもない。マーケットでヴィクに新聞を売る女役はジンキー・オダのようだが、クレジットに名前がなかった。