ＰＡ−ＳＩＹＡＭ
（九日間）
　
04年：リアリティー・エンターテインメント／リーガル・エンターテインメント
監督：エリック・マッティ
主演：ロデリック・パウラテ
　　　 チェリー・パイ・ピカチェ
　　　 オーブリー・マイルス
　　　 マリカル・デ・メサ
　　　 ユル・セルヴォ
　　　 アナ・カプリ
　　　 ハイメ・ファブレガス
　　　 クリスティン・レイエス
　　　 エルミー・コンセプション
　　　 デクスター・ドリア
　　　 クリスピン・ピネダ
　　　 ルイ・マナンサラ
　エリック・マッティが映像に凝ったホラー映画。田舎の屋敷を舞台にとり、エルミー・コンセプション演じる母が亡くなったため、息子や娘たちが葬式に集まるところから始まる。しきたりによって九日間、家にとどらまらなければならないのだが、次々と奇怪な現象が起きるという内容。ロデリック・パウラテ演じる長男が家長で、チェリー・パイ・ピカチェ、ユル・セルヴォ、マリカル・デ・メサなどが演じる兄弟姉妹がいて、オーブリー・マイルス演じる末っ子は知恵遅れ。チェリー・パイにはクリスティン・レイエス演じる娘が同行している。ロデリックがサウジ・アラビアで就労したらしいのがフィリピンっぽい。返事のない携帯電話が鳴ったり、チェリー・パイとクリスティンの寝室が朝にウンコだらけだったりで全員が不気味がり、ハイメ・ファブレガス演じる神父が屋敷をながめる。クリスピン・ピネダ、デクスター・ドリア、アナ・カプリが演じるお手伝いの一家が母と住んでいたのだが、アナにユルがちょっかいをだすも、気持ちの悪さから三人がでていく。事故でアナたちが死んだとの知らせにユルが怒りで去ろうとすると、ルイ・マナンサラ演じる霊媒のようなおばさんが現われて、狂ったように「霊がここにいる」と騒ぐ。家族の昔のアルバムをみつけ、めくってみれば虫がたかり、何枚かは顔のあたりが引っかかれている。マリカルが胎児を産む幻想をみるうえ、ロデリックやクリスティンがベッドの下に水があふれたり、生きものがいたりを感じるが、目を向けると消えている。といった展開で、雰囲気はそれなりに伝わるのに、恐怖へつながらないのがイマイチ。みんなで壁を調べると一面に文章が隠されていて、ハイメが母の秘めたる情事の相手と判明し、オーブリーの父とわかる。クリスティンの顔が血だらけになる幻想があって、ルイを呼び、降霊の儀式をおこなうと、母の霊が出現。介護が必要なのにデクスターの虐待をうけ、自分を放っておいた息子や娘たちを恨んでいて、首吊り自殺だったと告げる。ようは単純な話だが、シンプルなのはむしろ怪談の創造にプラスのはず。それが退屈を招いたのは、表面的な画面づくりを優先的にこだわったエリックの計算違いと思われる。でもハ・タデナの撮影が、各自ロウソクをもつシーンにおける光加減をはじめ、黒を基調に敷くセンスでけっこう買える。自作の“スターバト・マーテル”や“レクィエム”を使ってキリスト教的な世界観のイメージを響かせ、ピアノの不協和音主体にサスペンスへ効果を加えるヴォン・デ・グスマンの音楽がレヴェルの高いできになり、映画の印象を押しあげるのも事実。あまり恐くはないながら、まずまずかもしれない。チェリー・パイ、オーブリー、マリカル、アナ、クリスティンとそろった女優陣では、最近の傾向としてオーブリー、マリカル、アナがもう脱がず、セクシーさ不発といえる。一応、スリップで化粧したり、トイレで顔を洗ったりでマリカルがお申し訳程度にときめきをくれる。クリスティンは黒パンがちょっと色っぽい。なおアルバムの中の写真には役者たち本人の若い頃のスナップが貼られていて興味深く、マリカルの女学生のものがかわいかった。