ＰＡＮＧＡＮＩＢ　ＳＡ　ＤＩＬＩＭ　　ＴＲＯＵＢＬＥＳＯＭＥ　ＮＩＧＨＴ
（暗闇の中の危険）
　
98年：フィルム・メーカーズ・ワークショップ
監督：ハーマン・ヤウ、リッキー・Ｓ・ブリオソ
主演：レーモンド・ウォン
　　　 アナ・カプリ
　　　 アヤ・メデル
　　 　ヴィア・ヴェロソ
　　 　ポーリン・スエン
　　 　ルイス・クー
　　 　サイモン・ルーイ
　　 　ウェイン・ライ
　　 　アントニー・コルテス
　　 　ピア・パウラ
　　 　チュン・タト・ミン
　　 　フン・ティン・ミン
　　 　カレン・トン
　　 　エミリー・クワン
　　 　チョイ・ワイ・マン
　　 　チャン・ムイ・イン
　香港との合作ホラーである。というか、プロデューサーには香港の名前が並ぶから香港映画とも推測されるが、共同製作にフィリピンの名前がみられ、監督が香港のハーマン・ヤウとフィリピンのリッキー・Ｓ・ブリオソの共同で、製作補に美術も担当しているロリー・ベルナルド（フィリピン映画の多くの作品で美術を受けもち、監督でもある。この作品ではタクシー・ドライヴァー役で出演もしている）の名前があるから、合作だろう。撮影は香港とフィリピンのカメラマンが分担しているが、脚本、音楽、編集などは香港の名前なので、最後の仕上げは香港で行われたに違いない。
　とにかくアナ・カプリ、アヤ・メデル、ヴィア・ヴェロソ、ピア・パウラというフィリピンが誇る（？）セクシー・スターの共演だけに、見逃せない。
　ストーリーは同じ飛行機に乗り合わせてマニラへ着いた香港の旅行者による、三つのオムニバスで構成されている。話は同時進行で、まずレーモンド・ウォンとカレン・トン演じる不倫カップルがホテルで幽霊に遭遇するエピソードに始まり、運送業者やツアー客など、あとのエピソードの主人公たちが宿泊するフロントで、いつも「ここもでる」と騒いでいる狂言まわし的な役どころとして登場。
　第一の物語は、香港から女性の遺骨を運んできたフン・ティン・ミン演じる輸送員の経験談。気持ち悪くて寝るときに遺骨を浴室に置くと、シャワーを浴びている音が聞こえてくる。依頼人の住所まで案内するというアントニー・コルテス演じる男が現われ、次のホテルではシャワー・ルームで抱き合う光景を目撃する。ヴィア・ヴェロソが幽霊を演じていて、ガラス越しのシャワー・ルームからオッパイをポロンとみせてくれるのがキュート。さして怖くないホラーだから、こういうサーヴィス精神のほうが嬉しい。
　実はアントニーも幽霊で、別々に亡くなった恋人同士が死後に再会する設定。遺骨を運ぶことでそれを可能にしてくれたフンに感謝の言葉を述べ、けっこうヒューマン的である。幽霊から挨拶されて別れるのも妙な雰囲気ではないか。
　第二の物語はルイス・クーとポーリン・スエン演じる新婚旅行のカップルの怪談。ポーリンが自分の絵をかけてある店をみつけて驚くと、そこにはノラ・タバロン演じる占い師がいて、不吉な予言をされる。そのあとセクシー・ダンスの店に入ると…
　アナ・カプリが演じるＴバックのボンデージ・ファッションのダンサーの、悪魔的な匂いがプンプンのショーに遭遇する。三分以上もあるダイナミックなダンスは、これが作品のハイライトではないかと感じるくらいに刺激的。アナは雑誌で悪魔の格好をしたヌード写真をみたことがあるが、まったくそういうムードを醸しだしていて、監督たちの狙いに共感。個人的には好みのタイプじゃないから、さして興味はわかないが、うまく魅力を使いこなしているといえよう。
　ポーリンがアナとルイスのセックスの幻想にとりつかれ、ケンカして別行動になったときにルイスが本当に誘惑され、これが原因で怒ってホテルから飛びだしたポーリンを追いかけたルイスが交通事故で死ぬわけである。
　墓場にポーリンが迷いこんだシーンの異様さも手伝い、ちゃんとホラーしていると評価したい。
　ちなみにルイスがアナと再会する店内で、ただ意味深に通りすぎる役だけを演じているメリンダ・アンプラヨがハッとするほどの美人で、すごく気になった。
　第三の物語は、格安ツアーで買春にきたサイモン・ルーイ、ウェイン・ライ、チュン・タト・ミン演じるスケベ三人組のドタバタ劇で、いささかコメディー仕立て。とにかくエミリー・クワン演じるガイドを筆頭に、チョイ・ワイ・マン、チャン・ムイ・イン演じる女性参加者も含め、ただただうるさいツアー客の描きかたは、よくみかける香港人そのものだ納得する。彼らも自分たちで、海外旅行の連中がどんなふるまいをしているのか、ちゃんと観察しているようだ。
　フィリピン＝買春というのは、どこかの国のオヤジたちと同じ図式だが、欧米も含め、そうみられていることは否定できない。三人のうちの一人がホテルの向かいの部屋でアヤ・メデル演じる謎の女性に誘惑され、実は幽霊だったとわかって全裸で逃げだし、チョイとチャンにチンポをみられて大あわて。
　このとき大、大、大ファンであるアヤがスケスケの衣装をズルズルッとおろしてオッパイをポロンとみせるところにカッカするほどの興奮を招くし、陰毛がみえそうになりながらも、カットがかわると全裸で、オッパイもお尻も露わに迫る光景にガーンと打ちのめされるのみ。乳首がツンとしているところなど、我慢できない、たまらない。
　まったく、もう、ホントにアヤは素晴らしい。
　残りの二人が出会う女性はピア・パウラが演じていて、脱ぐシーンはないものの、ピタパンがカッコいい。三人がディスコへ行くと、またアヤとピアがいて、ピアが紹介した女性がヘビ頭であったり、虫入りドリンクを飲ませたりするのだが、それぞれ演じているマリクリス・ボルハとメドア・レイエスがそこそこかわいい。
　三人組の別の男とホテルへ行ったアヤは、またも全裸。
　ああ、アヤのような幽霊なら、もう殺されてもいいや、と思ってしまう。
　結局、女性をセックスの道具にしかみていないと、三人はゾンビたちに裁判にかけられ、アヤが罪を糾弾する。何とか逃げだすものの、ゾンビ軍団に追いかけられるシーンでは音楽がキョンシー風になって、やっぱり香港だなあといった感じを抱く。恐怖によって悔い改める内容だから、同じような体験を日本のオヤジたちにもさせたいものだ。
　全体的に教会が何度も撮られていたり、キリストの磔刑再現の儀式の行列がでてきたり、香港人がカトリックへの興味から恐怖をイメージしたとの印象が生まれてきて、興味深い内容ではある。必要性もなく、ただ異様な雰囲気をつくりたいだけに意味のない人物を登場させすぎる点が感心できないし、第二話以外はさしてサスペンスも盛りあがらないから、平均点には達していないが、異文化の視点の相違をうかがえて、ちょっと面白かったというのが本音だといえる。