ＰＡＧ　ＯＲＡＳ　ＭＯ，　ＯＲＡＳ　ＭＯ　ＮＡ
（いつが君の時間かって、もう君の時間だ）
　
00年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：アウグスト・サルヴァドル
主演：フィリップ・サルヴァドル
　　　 サンシャイン・クルース
　　　 ジョコ・ディアス
　　　 エース・エスピノサ
　　　 ジュン・アリストレナス
　　　 シルヴィア・サンチェス
　　　 ハイメ・ファブレガス
　　　 マンディー・オチョア
　　　 チャック・ペレス
　　　 ヴィア・ヴェロソ
　フィリップ・サルヴァドルがひねったキャラクターの刑事を演じるアクションもので、酔いどれの人物になっている。チャック・ペレス演じる殺し屋に幼い息子の命を奪われたうえ、シルヴィア・サンチェス演じる妻から半離婚状態へと追いやられて酒へ走った設定。銃撃戦の最中にグイッと引っかけ、ジュン・アリストレナス演じる上司からお叱りを受けるときはグーグー居眠りでおかしさをだそうとするも、チャックをやっつけた以後は正気に徹していて、中途半端だなあとあきれる。
　ストーリーが面白ければ、そんなことは問題ないと思うも、警官たちが犯罪組織とつるむ悪徳上司を処刑していく内容で、どことなくテッド・ポストの『ダーティハリー２』を連想。実戦を想定した街なみで人物の的を狙う射撃訓練のシーンがでてきて、まったく同じシチュエーションが『ダーティハリー２』にあったことを考えれば、おそらく脚本のフミルデ・“ミーク”・ロハスが参考にしたのだろう。ジュンが黒幕に加わっているなど『ダーティーハリー２』のハル・ホルブルックに酷似で、いただきといったほうがいいかもしれない。ただし警察が法律の限界を感じて正義のために手を汚すのと違い、ジョコ・ディアス演じるリーダー的な警官は心底悪徳で、ジャマになったジュンを始末するのみならず、ハイメ・ファブレガス演じる麻薬組織の大物からフィリップ殺害を請け負うのだから、せっかくの皮肉を生かせないばかりか、ただのドッチラけ。
　アホかいな。
　ヴィア・ヴェロソ演じる愛人とのセックス中に抜けだし、フィリップにも疑惑の伏線を張ろうとするあたりも、こそくすぎて鼻につく。
　マンディー・オチョア演じるフィリップの相棒が、たまたま現場を目撃したためにジョコから撃たれ、血で犯人名のイニシャルだけを複数残すなど、こそくの上ぬり。
　あきれた筋だ。
　アクションに精彩を放てば、とりあえずは楽しめると思うも、自宅を襲撃されたフィリップが応戦し、何名もバタバタ死んで、なぜか予定調和ようにジョコのほか、エース・エスピノサ、エミール・サンドヴァル、ジムウェル・スティーヴンズ演じる主要メンバー四名だけが生き残るなんて、笑ってくださいといっているようなもの。
　クライマックスでフィリップがジョコたちを尾行し、ハイメ一味と会っている現場へ単身乗りこみ、ちょっと脳みそのあるヤツなら無謀とわかるわけで、作戦を練ってないの？　とのバカさ加減は猿レヴェル。エースが唯一、良心の呵責にかられて味方に転じるのは予想通りながら、またも雑魚警官ばかりがバタバタと先に倒れ、ホントに笑っちゃうよ。
　さすがにフィリップとジョコの一騎打ちは走るトラックの上で格闘を繰り広げ、かなりスタントが頑張っているものの、ドライヴァーがジョコの脅しで泣く泣く運転していたにもかかわらず、ジョコが屋根へ去ったのに、なんでまだ走行してるわけ？　常識的には放りだして逃げるよ、との疑問がもたげ、はっきりいって演出がヘタ。
　アウグスト・サルヴァドルは買っている監督だけに、惜しいというか、あ然というか。
　サブ・ストーリーであるロマンス・ネタでは、サンシャイン・クルース演じる女性弁護士が警察の横暴な捜査や過剰暴力を摘発するのに燃えていて、とくにフィリップを嫌うのが、恋仲になる二人のスタートとしてお決まりのパターン。だんだんと打ちとけていくのではなく、突然にサンシャインの気持ちが変化するようにみえるから、語り口がイマイチなのだろう。ボブ・ソレル演じるサンシャインの父親の将軍がハイメと結託し、処刑されたあとにサンシャインの反応がクールなのは、実父の死と、もっとも嫌う汚職に加担していたとのダブル・ショックがあるはずで、どうして涙をハショるわけ？　シルヴィアがジョコに撃たれる展開も、三角関係を避け、フィリップとサンシャインをくっつける常套手段で著しく感心しない。
　まあ、チャックとの決闘がアイス・スノー・ワンダー・パークというテーマ・パークの中で、氷の彫刻をバンバン壊すのは、オッと驚く要素があったかな。冒頭の取り引きが中国人の葬儀でカモフラージュしている点も、中国系住民の風俗的興味を引きつける。ヴィアが日本人をたくみに騙して結婚し、相手がヘンテコな日本語を話すのは相変わらずながら、コメディー部分だけにニコニコ。
　イウィー（メリ・ローシー）・ニコラス演じる娘がフィリップを慕っていて、シルヴィアへ「パパを許してあげて」と訴えたり、家出したヴィアが残した赤ん坊をイウィーのベッドへそっと置き、「ほかの女との子を」シルヴィアが激怒するも、親子で愛情をそそぐとの家庭描写は、そこそこムードがでていたと評価したい。
　また、何といっても嬉しいのは、サンシャインとヴィアのセクシーさ。サンシャインは自宅のプールで泳ぐ登場シーンで、水から空気マットへあがると、ビキニの濡れたパンティーをピタッとお尻に貼りつかせる。ごう慢さの抗議にフィリップが自宅までおしかけてくるときは、ちょうどシャワー中。斜めうしろからのアングルでオッパイをチラチラのあと、フィリップが目の前にきて、すりガラス越しにバス・タオルでとっさにバストを隠す。口論になってフィリップをビンタしようと手をあげたため、バス・タオルがパラリと落下。もーう、キュートなオッパイを堂々の丸だしなんだから、キャーッ。
　ヴィアはフィリップとのセックスで、画面が暗くてみづらいながら、全裸のプロポーションが浮かびあがる。もちろん乳首も、ウッ、みえたか？　みえたぞ！　スリップと黒いパンティーの下着姿もそそり、よしよし、大ファンのヴィアだけのことはある。
　ほかにルディー・メーヤー演じる将軍がら致されるとき、マリー・プンザラン演じる女性とセックス中で、マリーに肝心の露出がないのは残念。裁判の被害者役のジョアンヌ・サラザールは、ほんの顔みせ程度の出番。
　サンシャインとヴィアの魅力で、作品の価値が二段階あがったといえよう。