ＰＡＧＮＡＮＡＳＡ
（欲望）
　
98年：ＮＥＯフィムルズ
監督：ドン・エスクデロ
主演：イネス・ヴェネラション
　　　 ガーリー・エストラダ
　　　 サマンタ・ロペス
　　　 イザベル・ロペス
　　　 リチャード・クアン
　　　 ダニー・ラモス
　　　 ポッポ・ロントク
　　　 ダンテ・ハヴィエール
　　　 ワマシル・グアンコ
　　　 ノエル・サンドヴァル
　かなり重い愛憎劇で、部分的な描写に誇張があるにせよ、こういう話は実際にフィリピンで起こっているのだろうなあと思わせる。まずは逮捕のシーンから始まり、荒っぽい警察の追求のあと、回想で物語が進んでゆく。
　何といってもこの作品の魅力の第一は主役のイネス・ヴェネラションに尽き、浅黒い肌に南洋的な顔だち、明らかに日本人と異なる雰囲気を持ち、彼女にときめきを感じられないなら、ただつまらないドラマかもしれない。
　イネス演じるのはマニラへでることを夢みる田舎の道路沿いにある簡易食堂の娘で、イザベル・ロペス扮する母と、ワマシル・グアンコ演じる妹との女ばかり三人暮らし。彼女にはリチャード・クアン扮するトライシクル・ドライヴァーのボーイ・フレンドがいるが、まだ一線を越えていない。
　サマンタ・ロペス扮する客が店の奥でセックスするのをイネスが目撃が、まず最初の見せ場。サマンタはオッパイもあらわに前からとうしろから抱かれ、３Ｐを繰り広げる。このあとリチャードと一緒に、やはりサマンタがカー・セックスの現場に遭遇。全裸でもだえるサマンタが迫力ある画面をつくる。サマンタは男好きのする顔だちのうえ、大人の妖艶さをふりまき、かなりいい感じ。
　リチャードは自分たちも肉体関係を迫るが、イネスはダメと拒否を示す。実際、フィリピーナにはキリスト教的道徳なのだろうか、彼女が演じる人物のように固いタイプが多い。
　ガーリー・エストラダ扮する配達運転手が登場で、物語は第二幕へ進む。イネスに目をつけたガーリーは、執拗に彼女を口説く。ハンサムな二枚目俳優としての役柄が多いガーリーだが、どうみてもスケベ顔にしか思えないので、これはピッタリの役といえる。娘を落とすならまず親からと母に好印象を与え、紳士的な態度でデートを重ねる。
　そしてガーリーがパンツ一つになって夜のプールへ飛びこみ、イネスに入ってくるように誘うシーンが次の見せ場。イネスはひざまであるロングのＴシャツ姿で嫌々ながらプールへと入る。腕をグッと組んで濡れたＴシャツの胸元を隠している恥じらいのしぐさが実にかわいい。ガーリーがパンツを脱いでイネスに近づくと、水中でイネスのパンティーをおろしてキュートなお尻をあらわにむくシーンがドキドキもの。無理やり犯そうと力ずくのガーリーを振りきってプールをあがり、Ｔシャツに乳首をスケさせながら逃げるイネスの姿が興奮をくれる。ついにシャワー・ルームでガーリーにつかまり、強引に処女を奪われる。そのあと彼女を家まで送っていき、明らかにセックスしたと丸わかりなのに、ちゃんと母親に好印象を残すガーリーのくせものぶりがなかなか納得のうまさ。嫌悪の視線を向けるイネスの表情とともに、二人の演技の確かさを感じさせる場面である。
　この映画の最大の見せ場は、店の台所でガーリーがイネスのパンティーをおろし、一方的にセックスのところ。ガーリーの最初の登場シーンからして、すでにちょっと『郵便配達は二度ベルを鳴らす』が下敷きではないかと連想できるが、ここでやっぱりそうだと確信させられる。クライマックスに達したとき、店に客がやってきて、声を聞かれないようにガーリーがイネスの口を手でふさぐ動きがエロスと緊張感の同居をつくる。
　ただ、そのあと彼女が開き直って自らガーリーの部屋へくると、彼が寝転がるベッドの横でパンティーを脱いで全裸になり、なんてかわいいのとお尻のアップに感嘆をくれるまではよいが、ガーリーのパンツを脱がせるときにトランクスの下に小さな白いブリーフをはいているのがみえてしまうのは、もっと撮影に細心の注意を払ってほしいと思う。イネスはガーリーのチンポを握って勃起させ、騎乗位で腰を動かすのだが、ブリーフがみえたことによってイメージがメタ崩れ。ただし正面から撮ったイネスの美乳が絶品で、盛りあがりかたといい、乳首の大きさといい、これほどバランスのよいオッパイには、そうそうめぐり会えるものではないとため息がもれる。
　ダメ押しの見せ場は、ガーリーがイネスをサマンタのところへ連れて行って、強制的に３Ｐのシーン。イネスが美乳をサマンタになめられ、レズの匂いがプンプンと漂ってくる。悪魔的なサマンタの表情が成熟した女の貫禄を感じさせる。三人がベッドの上で全裸のまま眠る光景が圧巻だが、ここはガーリーのチンポの上に片足をかけ、お尻丸みえのサマンタがもっとも魅力的。
　結局ガーリーの異常さに気がついたイネスがリチャードと復縁し、リチャードを殺さんがばかりの勢いで暴力的にケンカのガーリーを金属の棒で殴打のうえ、殺害にいたる。二人は死体を処理すると、初めて肉体的に結ばれる。でも隠しとおせるわけがなく、冒頭のシーンへと戻る。
　ドン監督はとくに意欲的な面がないものの、俳優たちの頑張りもあって、平均的なレヴェルのドラマづくりに達している。とくにイネスに負う面が多く、彼女の魅力が全開。いや、それ以上に、いったい何を望もうかという感じ。