ＰＡＤＲＥ　ＫＡＬＩＢＲＥ
（器量のある神父）
　
(97)年：リーガル・エンターテインメント
監督：ヴァル・イグレシアス
主演：エディー・ガルシア
　　　 モンソール・デル・ロサリオ
　　　 アヤ・メデル
　　　 エディー・グチェレス
　　　 ダン・フェルナンデス
　　　 オレステス・オヘダ
　　　 ヴァル・イグレシアス
　単純明快なアクション映画というと、よい方向へもダメな方向へも解釈できるが、これはよい方向の例に入るんじゃないか。とにかく悪の設定が明確である。エディー・グチェレス扮する議員が私腹をこやすためのプロジェクトを強行しようとしていて、アーチー・ヴェントサ扮する市長も、オレステス・オヘダ扮する警察署長もいいなり状態になっている。フィリピン映画というのは、しょっちゅう議員を悪の代名詞のように使うから、そんなに政治は腐敗のイメージしかないのか、と興味半分、あきれ半分を招く。
　議員に対抗しているのがエディー・ガルシア扮する神父で、反対運動などに意思の強さをうかがわせるも、さすがエディーが演じているからユーモアたっぷりな要素も加味され、なかなかユニークな人物像をつくっているあたりがよい。
　それで議員が殺し屋を差し向けるのだが、シュンドレー・ヒメネス扮する女性のヒット・マンは、エディーの部屋で罠に引っかかってしまい、あえなく失敗。このときロープで吊るされたシュンドレーのスカートが全部めくれ、白いパンティーが丸だし状態なのが色っぽい。
　今度はもっと確かなヤツということになって、やとわれたのがモンソール・デル・ロサリオ扮するタフ・ガイ。得意のキックでカッコよく登場するも、今回は悪役なんだと意外性を感じさせる。
　教会のざんげ室から連れ去る荒ワザでエディーの拉致に成功するや、あとで議員が自分も始末するつもりだと知って、エディーを助ける側に転じる。やっぱりモンソールはヒーローじゃないとしっくりこない、ということだろう。
　でもいつものようにストレートにさっそうとしているわけじゃなく、過去をひきずる女々しい人物にもなっている。それで逃走過程でエディーの人間性に引かれていき、メソメソ告白をするあたりによくドラマをふくらませている。最後にエディーとともにモンソールが正義感となって議員らの演説会場へかけつけるのだが、突然変わったわけじゃなく、ちゃんと説得力のある変貌を経ている点を評価する。彼らの信念に動かされて、ついに警察署長も義務を遂行しようと目覚めるラストに納得がいくわけである。
　エディーの味のある演技が、このドラマを可能にしたといえるかもしれない。
　彼ら役者の魅力に対して、ヴァル・イグレシアス監督がけっこううまいじゃないかと思わせるのは、後半の対決描写。カー・アクションのあとに銃撃戦、カー・アクションのあとに銃撃戦を繰り返したあと、野原に火を放つシーンがあって、またカー・アクションのあとに銃撃戦と単細胞な構成ながらも、適度に緩急をつけているからあきさせない。Ｂ級演出の基本を踏まえていると感心。
　モンソールの夢オチで、エディーが実は…　と驚かせるエピソードも、決してジャマにはなっていない。
　もっともこの映画をみた最大の理由はアヤ・メデルが出演していることで、モンソールと出会ったあとに、意外とすぐにしっとりの関係になるあたりは、裏があるぞとバレバレで、もう少し工夫がほしかった。でもベッド・シーンでは画面の手前にクッションを置いて隠し、もだえるアヤの表情ばかりでボディーがみえないぞ、とイライラさせたあと、興奮したアヤが身体を持ちあげたときにクッション奥から乳房が現れて、「ワーッ、乳首だ」と歓喜させる表現はみごとというほかない。議員へ連絡するためにこっそりベッドから置きあがるポーズは、ノー・ブラに乳首のポッチを浮かびあがらせたシャツにパンティーという姿。パンティーはお尻にキュッとフィットし、モンソールを撃とうとして逆に殺されるとき、そのお尻のクロース・アップまである。
　ほんの小さなアクセント的役ながらも、アヤがいなかったら映画の価値は80％減確実で、あらためてセクシーな美女だなあ、と実感。
　普通なら中盤にヒロイン（つまりアヤ）がストーリーから消えてしまうと、あとは惰性でみるだけなのだが、この作品の場合は意外と面白かったわけで、やっぱりアクションもそこそこだったといえよう。