ＰＡＡＮＯ　ＮＡ　ＫＡＹＡ
（それでこんなふうに）
　
10年：ＡＢＳ−ＣＢＮフィルム・プロダクションズ／スター・シネマ・プロダクション
監督：ルエル・Ｓ・バヤニ
主演：キム・チウ
　　 　ジェラルド・アンダーソン
　　 　リッキー・ダヴァオ
　　　 リオ・ロクシン
　　　 メリッサ・リックス
　　　 ロビ・ドミンゴ
　　　 シャシャ・パディーリア
　　　 リカ・ペラレホ
　　　 ベルナルド・バランカ
　『ＦＩＲＳＴ　ＤＡＹ　ＨＩＧＨ』『Ｉ’ＶＥ　ＦＡＬＬＥＮ　ＦＯＲ　ＹＯＵ』に続くキム・チウとジェラルド・アンダーソンのコンビによるロマンスもので、前作にも増して現実をなめた内容のくだらなさ。
　メエ（キム）とボグス（ジェラルド）は親友同士で恋人のように仲がよいが、ボグスには恋人のアンナ（メリッサ・リックス）がいる。そのアンナが会社の上司のジュリウス（ベルナルド・パランカ）とつき合うといい、破綻を申しでる。荒れるボグスをなぐさめながら、メエがこれまで隠してきた好きとの気持ちを告白。突然のことにボクスが驚くも、実は自分もメエが好きだったと気がつく。メエの幼なじみのＪＣ（ロビ・ドミンゴ）が香港から帰り、メエと親しくするのにボグスが嫉妬で、それをメエが嬉しく感じる。お互いに結婚も考えたとき、ジュリウスとうまくいかなかったとアンナがボグスの元へ戻ってくる。
　なにがしょうもないといって、主人公のふたりが生活と闘っていない。メエの父（リッキー・ダヴァオ）がメエを理解せず、姉のマアン（リカ・ペラレホ）をえこひいきで悩むとかあるも、甘っちょろい。ヘンリー・キング・キタイン、クリス・Ｇ・ガスメン、ラルフ・ハシント・キブラット、カミール・アンドレア・マンガンパットの脚本が、あえて観客に夢を与えるアイドル映画の形をとるため、厳しさを避ける設定をおいたのだろうが、困難に立ち向かう本気度の少ない人物像が共感を遠ざける。
　メエがふたりの店員（アリアンヌ・ヴィア・アントニオ、カミール・アンドレア・マンガンパット）をやとってブティックを営み、中華系のティー夫妻（ニール・セセ、ダイアナ・マラハイ）に千五百枚のＴシャツの注文をうけるも、ボグスのことに時間をとられ、納品が間に合わない。ボグスが技師のアンドイ（ヤヌス・デル・プラド）たちとクラシック・カーを修復のガレージをビジネスにしようと努力はよいが、プレゼンで融資の決定が安易。しかも格好のタイミングでガレージを売りにだすカスティーリオ氏（ソリマン・クリース）が現われれば、失恋で仕事が適当になる。
　食うに困らないやつらのほれた、ふられたでビジネスがおざなりとは、バカにもほどがある。
　あげくは酔ってボグスがディスコでカップル（ホセ・サラソラ、サヴァンナー・ラムセン）にからむ。
　アンナにボグスが女々しければ、ジュリウスがアンナに暴力的で、もはやノータリン。
　マアンが恋人のシャーウィン（ラム・サガッド）とアメリカ合衆国暮らしを決めて父の激怒を買い、父が友人のアルヴィン（ロイド・サマルティノ）の後押しでマアンにまかせるはずだったチャイナタウンの中華レストランをアルヴィンの息子のＪＣと開くようにとメエに押しつけ、メエが店の仕切りもうまくできないのに、ごう慢な父がラストでいい人にひょう変が、またご都合主義といえる。
　まあ、子どもへの夫の自分勝手さを困惑でながめるメエの母（リオ・ロクシン）や、若いボーイフレンドのルイーズ（グジ・ロレサナ）をつくったうえ、失言で場の空気を乱したりの、やや軽率なボグスの母のミナ（シャシャ・パディーリア）に、メエへの思慕を秘めるＪＣなどは、一応、納得かもしれない。
　とにかく愚の骨頂はメイの仲間である太った女性のジュビス（カイ・コルテス）やオカマのジーノ（アルウィン・ウイティンコ）と、その同性愛のボーイフレンドのアントン（ジョン・アヴィラ）たちが民間の消防員になり、メエも加わって消防署の中がでてくるあたりは興味深いも、火事が発生で出動のとき、ボグスが愛の打ち明けにきて、今そこで消火活動中なのにメエが消防車の上にボーッと立ち、うだうだとボグスが謝罪を述べるところ。いやはや、こりゃまじめなシーンなのに、コメディーかよとあきれるのみ。
　真剣さゼロ。
　後半へ進むほどに退屈であくびをもよおし、ルエル・Ｓ・バヤニの演出がアホな展開のフォローにぜんぜん足りない。
　わりとファッションに凝ってロマンティックさをあおる意図のようだが、個人的に関心の対象外なうえ、壁に描く絵や年代もののマスタングも表面的な要素にとどまる。ボグスがカー・レースで荒れるのはまだしも、いきなりボクシングのサンドバッグを叩くなどの盛りこみが、単純なファン・サーヴィスで脈絡をはずれる。メエの奥でボグスがシャワーを浴び、メイド（セシル・パズ）がのぞきそうでメエがさえぎったあと、メエのバスタオルを巻いたのでボグスが小言をくらい、バスタオルをほどいてチンポをみせるかで、ちゃんとパンツをはいている肩すかしは、いっそのことハダカになっちまえって感じ。
　女優の趣味の観点では、キム・チウのための企画なのに、さほどキム・チウがタイプじゃないとの指摘は、だったらみるなってしかられるかな。プールに服のまま飛びこむとき、ちょっと濡れたスケスケでブラが浮かんでドキドキながら、ジーンズでベッドに倒れたり、ボグスとデートで紫のドレスやゴルフでピンクのミニスカにチャーミングさをおぼえずじまい。
　むしろメリッサ・リックスに欲望がそそられ、銀の光沢のミニスカや黄色いワンピースがおいしそう。
　リカ・ペラレホにセクシーさを奪うのが残念で、ショート・カットのヘアーがキュートな熟女のシャシャ・パディーリアのジーンズに視線を奪われる。
　あと、ボグスとメエがロトの売り場でふれ合うところでバックにクジを買うカップルがいて、女性のほうを演じるのがグウェネット・デラ・クルース（別名：グウェン・セリドウェン）。セクシーなグラビアで注目のモデルだが、こんなセリフのない立っているだけのチョイ役にもったいない。それはサヴァンナー・ラムセンにもいえる。ほかにカカイ・バウティスタが出演も、よくわからなかった。