（いかに話すか？）
09(10) 年：シネマ・ワン・オリジナルズ／ディジタル・チーズ／レッドルーム・プロダクション
監督：リチャード・ソリアノ・レガスピ
主演：エリッチ・ゴンザレス
エンチョン・ディー
ジョハン・アルカンタラ
サラー・ジョイ・アガリン
ジェラルディン・タン
イアン・ヴィクトル
ミカイル・ヒラン
セルナン・マタヤ
ろうあ者との勘違いから、そのまましゃべれないフリを続けたカップルのロマンスをエリッチ・ゴンザレスとエンチョン・ディーのコンビで描く、インディペンデントのディジタル作。いわゆる良心的な内容の部類だろう。
放送作家のエリール（エリッチ・ゴンザレス）はジプニーでハンサムなマイク（エンチョン・ディー）と遭遇にときめく。次にＬＲＴの中でろうあ学校の教師のマイクが手話で生徒の親子と会話をみかけ、マイクをろうあ者だと思う。口のきけない弟のウィルヘルム（ジョハン・アルカンタラ）をもつエリールは手話ができるため、いつも通勤で顔をあわせるＬＲＴで席をゆずられた際に手でやりとりをかわす。マイクもエリールをろうあ者と感じ、双方が障害をかかえると偽って交際をはじめ、デートと手紙の交換でしだいに愛情が深まるも、実は言葉を話せると告白のタイミングを逸する。
仕事仲間とエリールがストーリーの構成をねり、多少ともアイディアのネタでろうあ者とのおつきあいをアレンジながら、マイクの外見と中身に本気で引かれる。ちなみにエリールの共同執筆者がシングル・マザーのピクシー（イアン・ヴィクトル）とオカマなのがフィリピンっぽい。マイクは生徒のキャスリーン（アルリッチ・マカリンタル）が三重苦になりそうだと心配で悩む純粋さをもつ。
エリールの母のリディア（ジェラルディン・タン）がエリールの父と別れ、ウィルヘルムの父とは愛人と設定のもと、ウィルヘルムのバースディー・パーティーのおカネなどの援助をうける。ウィルヘルムが近所の女の子（サラー・ジョイ・アガリン）にフラれたため、自殺未遂をおこすサブのエピソードをおく。
とりあえずはエリールとマイクの初デートのシーンがほほえましいムードをつくり、レストランでお互いの境遇を手話で語りあうようすがさわやかな心地よさをかもす。
ろうあ者への差別はエリールの近所の若者たちがリディアの娘が弟と同じ障害者を恋人にしたとウワサし、マイクがキレてケンカなどであらわす。
また、エリールが片方の靴が脱げたままにＬＲＴが発車で茫然のとき、マイクが拾っていた親切さに感謝で恋愛へ発展のきっかけや、デートで雨が降ってきて靴が濡れるのにマイクがビニールを買ってエリールの足元を巻く気づかいから、靴にこだわるフィリピン人のファッション感覚がうかがえるといった細部に興味がわく。手づくりのカゴを売るリディアがバッグを編んだり、なによりフィリピンふうの手話が視覚的におもしろい。
もっともハッピー・エンドに進む予定調和はお約束だし、ウィルヘルムも筆談と絵でガールフレンドと意思疎通に、小じんまりと枠内へおさまった印象がぬぐえず、これが良心作の限界にも感じる。リチャード・ソリアノ・レガスピの演出はタクシー運転手の余計なお世話に乗客のエリールとマイクが閉口のシーンなどにうまさがあるも、カラオケで歌うエリールがマイクの出現で急に歌マネに変えるユーモラスさが不自然で、ぎごちないイメージを残す。マイクがＬＲＴの車内へ愛の告白を放送も現実味をさげる。
エリッチ・ゴンザレスにセクシーな衣装を欠く点が個人的に不満になり、口にガムテープを貼ってろうあ者を疑似体験の鏡台の前でバス・ローブや、ウィルヘルムが眠る横でガウンをはおって座るときにお尻のアップがみられる程度。ただし黒い短パンやジーンズにドキドキが美人のゆえん。
ジェラルディン・タンはシャツのすき間にバストの谷間を強調のほか、かなりのミニスカを披露も、太めで熟女の魅力にたりない。サラー・ジョイ・アガリンはちょっとかわいいレヴェルにとどまる。
