ＰＡＡＮＯ　ＫＩＴＡ　ＩＩＢＩＧＩＮ
（こんなふうに私たちは愛し合った）
　
07年：ＡＢＳ−ＣＢＮフィルム・プロダクションズ／ＶＩＶＡフィルムズ
監督：ジョイス・ベルナル
主演：レジーン・ヴェラスケス
　　　 ピオロ・パスクアル
　　　 ユージン・ドミンゴ
　　　 クィンティン・アリアンサ
　　　 イヤ・ヴィリアーニア
　　　 エリッチ・ゴンザレス
　人気歌手のレジーン・ヴェラケスが妻子あるオギー・アルカシドとの不倫騒動発覚の真っ最中に公開され、オギーの離婚成立を待って再婚かのゴシップが飛びかうかたわら、二枚目のピオロ・パスクアルとの濃厚なラヴ・シーンにオギーが嫉妬した、とかしないとかのウワサが盛りあがり、相当に話題を呼んだ作品。フィリピン映画にありがちなロマンスものであって、監督がジョイス・ベルナルだと、たかがしれてるなと色眼鏡をかけてみるのは失礼ながら、期待を裏切らずにたかがしれている内容なのにガックリ。ただしフィリピンの観客の嗜好がうかがえるのが興味深い。
　まずピオロ演じるランスがカネもちのボンボンで、レジーン演じる子もちのバツイチのマルティーと恋愛へ発展に庶民の願望のような心理がうかがえる。婚約のパーティーのあとに飲酒運転でふざけて事故を起こし、最愛のフィアンセのテサ（イヤ・ヴィリアーニア）を失って以来、ずっと荒れた生活を送っている設定だが、この飲酒運転というのに同情のかけらも感じさせず、どうして人間のクズを主人公にするのかと嫌になる。マルティーのほうはクレジット・カード会社の電話オペレーターで、幼い息子のリアム（クィンティン・アリアンサ）がアレルギー発症におちいったのに治療費がなくて困っている。暴れて警察への罰金支払いの引き落としができずにからむランスの電話をとったレジーンが切れて反論する、二人の顔をみない無意識の出会いをおくも、生活を保障された立場にいて甘えたランスのバカぶりにムカムカと腹が立ち、あとでランスがやさしさをとり戻す変化への伏線以前に、基本がカス野郎と先を放り投げたくなる。友人のローシー（デニス・ホアキン）がカナダへいくことになって、サンヴァレスにあるリゾートに招待された権利をマルティーにゆずり、転地療養のリアムをつれてマルティーが休暇でリゾートを訪れてドラマが始まる。マニラの家で隣人のベリンダ（ロエンス・サントス）がスタッフの従姉妹にあたり、ここがマネージャーを募集しているのを告げられてマルティーが引きうけることを決めるも、オーナーはランスで、適当に売ろうと考えているので日本人などが視察にくるが、酔って適当にあしらう。いつも粗野に荒れるばかりのごう慢なランスをマルティーが嫌うながら、次第に心がふれ合っていくというお決まりのストーリー。格納庫に修理の必要なセスナをもつランスは、たまたま飛行機に関心を示したリアムと会話をかわし、男女の仲人的な役割りに子どもをおくのも定番といえる。滝のある池が増水でマルティーとリアムがおぼれかけたのをランスが助け、一気にマルティーとランスが親しみを感じる。地元の住民たちとカラオケ大会を開催など、イヴェントを企画で二人がリゾート経営にやる気をだしてくる。すっかり立ち直ったかに思えたランスが謝罪をこうために父と会社を共同経営するテサの父（レオ・リアルプ）を訪ねてみれば、娘を殺したと許されず、テサの兄のラフィー（マーク・バウティスタ）に激しくののしられる。これで再び酔っぱらいに逆戻りで乱れまくり、アメリカ人にリゾートを売ろうとするとは単純な構成にもほどがある。もちろんハッピー・エンドなので、新たに高級リゾートへ就職したマルティーのもとへ、六ヵ月後にランスがやってくるラストを用意している。
　それにしても別れた夫のモン（ジェット・パニャン）をうらんでいたマルティーがランスとのほろ苦い経験を通じてモンにリアムを会わせるようになる変化はよくても、モンと話しているマルティーをみてランスがうだうだするあとに主題歌がえんえん流れるなど、いささかうんざりといったつまらなさ。オーソドックスと評するよりも、意外性の乏しいワン・パターンは辟易する。何本もあきずに同様の作品がつくられているのだから、フィリピンの観客は満足ということなのだろう。
　サンヴァレスのリゾートがボロく、リアムが歯磨きできないほどに水が濁っている描写は、さもありなんとうなずきを誘うが、中年女性のリワイワイ（ユージン・ドミンゴ）の家族を中心にしたスタッフのうるさいまでの明るいサーヴィスぶりは、いかにもフィリピンだなあとニコニコ笑いを招く点。リワイワイの夫のジョージ（ヒュブス・アサルコン）と娘のモーリン（パウ・ディアス）に黒人のオカマのトマス（ジャン・テリー）がいる。幼い息子のロレンソ（ラープ・サラザル）はリアムの遊び友だちになる。この雰囲気になじんでか、レオン（メンゲー・コバルビアス）とヒルダ（テッシー・ヴィリアラマ）夫妻のようなリピーター客がくるのも納得がいく。ランスが花の農園のオーナーでもあるようで、みんなが収穫する光景が好奇心をそそる。また冒頭でランスがスポーツ・カーを急回転させるモーター・スポーツを競っているが、マニラの広場でちょくちょくみかけるだけに、最近の人気と察せられる。大型バイクに乗るのは経済的なゆとりのあらわれだろう。
　それでオギーの嫉妬をうんぬんまでのラヴ・シーンはどうかだが、夜の海で泳ぐマルティーに泥酔のランスがテサと勘違いで抱きつくときと、二人がベッドで結ばれるときと二回でてくる。夜の海では水着の上にＴシャツを着たレジーン・ヴェラスケスのボディーが濡れて、ペタペタとＴシャツが貼りつくのが色っぽい。ベッドのほうは暗い中で、さっぱり動きすらみえないまま。それよりも滝の池が増水のシーンがすごく、リアムと泳いでいたマルティーはＴシャツの下に厚めの生地のブラをちゃんとつけているも、パットを入れていないらしく、驚くなかれレジーンの乳輪の形までくっきりと乳首が浮かびあがっている。オッとここまでスケれば、さすがに恋人なら焼もちかもしれない。ビーチで戯れるシーンもセクシーで、ビキニ水着のマルティーを海面からランスが抱きあげるなど、ビキニのパンティーがレジーンのお尻に食いこんでいるのに視線を奪われる。
　ほかに女優ではイヤ・ヴィリアーニアの美貌が圧倒的に輝き、レジーンの比じゃないレヴェル。パウ・ディアスも庶民的にかわいいが、ランスとテサの婚約パーティーにいる友人役のベット・タマヨのキュートさに衰えがなく、相変わらずに素敵。ランスのデートの相手役のセリーナ・ヒソンはまずまずといったところ。ラフィーの秘書役のテス・ゴンザレスはおばさんで、以前に脱いだ映画があったように記憶するが、さてどうだったか。モンの後妻役のマルセル・ディマユガは、ただいるだけになる。演技だとユージン・ドミンゴが達者なのに、脇の欠かせぬ存在価値を放っている。雑誌のグラビアで容貌に注目したエリッチ・ゴンザレスは、ランスの友人の恋人役だと思う。