ＯＨ　ＭＹ　ＧＨＯＳＴ！
　
06年：オクトアーツ・フィルムズ／オーリー・イラカド・プロダクション
監督：トニー・Ｙ・レイエス
主演：ルーファ・メエ・キント
　　　 マーヴィン・アグスティン
　　　 パオロ・コンティス
　　　 カルロス・アガシ
　　　 ホセ・マナロ
　　　 ユマ・コーニー
　　　 シュガー・メルカド
　　　 テリ・オノール
　　　 ビアンカ・キング
　　　 ジョン・ラプス
　　　 ジミー・サントス
　ホラーとコメディーの融合と宣伝コピーにあったが、ほとんどコメディーといえる。ルーファ・メエ・キントの得意とする役どころになり、トニー・Ｙ・レイエスとのコンビだけに当然か。
　広告代理店を舞台にとって、冒頭にプレゼンというアングロ・サクソンのルールに準じた、くだらないクライアントとの茶番劇をおこなっているのは、フィリピンも他国と同じとうかがわせる。黄色いタイト・スカートにモンロー・ウォークで現われたトリキシー（ルーファ）がクライアントのスケベおやじにセクハラをうけ、たくみにかわすエピソードで、歯磨きメーカーなのに口臭がするなどのギャグを盛りこむ。トリキシーのバストの谷間がズバッとあいた衣装が挑発的に視線を誘い、あとでもパープルのオッパイがこぼれそうに胸の豊かさを強調のコスチュームを披露が、セクシー系コメディエンヌであるルーファの面目躍如といえる。
　仕事人間のトリキシーは同僚のアルヴィン（マーヴィン・アグスティン）が恋しているのに気がつかず、オフにはジムで汗を流す典型的なビジネス・ウーマン。このジムで不良のデニス（パオロ・コンティス）、ジェフリー（カルロス・アガシ）、ブボイ（ユマ・コーニー）の三人組に目をつけられたのが悲劇の発端になる。デニスが花を贈ってきたり、ジムのサウナへブボイが女装で忍びこみをボコボコにしたりでアタックをかわすも、三人が住居侵入でレイプにおよぼうとしたとき、二階から転落死する。トリキシーの精霊が死体から抜けだし、この世の空間をウロチョロ歩きまわるのは一般的な幽霊ものコメディーと変わらない。裁判で検事（ジャッキー・アキノ）が正論を説いたにもかかわらず、相手方の悪徳弁護士（ディック・イズラエル）の活躍で三人が無罪になる。煉獄にいながら法廷で傍聴していたトリキシーが怒り心頭になり、自ら復讐を決める。まずはバーテンに乗りうつってバーでワザとケンカさせ、三人を留置場送りにして牢名主（ジミー・サントス）からオカマを掘られそうな目にあわせる。デニスの恋人（クーデット・ホナサン）に乗りうつり、顔や声がトリキシーへ変化にあわてて逃げたデニスが交通事故をおこして亡くなる。トリキシーとデニスが煉獄でご対面のおかしさを欠くあたりは、ちょっと作劇に不満を感じさせる。トイレの水の中に顔が映るなどとバケてでて、大騒ぎのうえにブボイが発狂し、大家（ヴァンジー・ラバラン）が精神病院へ送る。ブボイよりも大家のほうがうるさくドタバタ動いて、いつもながらのヴァンジーのおばさんキャラが笑いをうむ。
　アルヴィンのシャワー中にトリキシーの精霊が部屋へやってきて、ミケランジェロの天井画をまねた『Ｅ．Ｔ．』のごとく手をとりあうと光が輝き、以後アルヴィンにだけトリキシーがみえるという設定がロマンスをプラスする。デニスを死へ追いやったのをアルヴィンが「事故じゃない」と責め、神父（ポチョロ・モンテス）に相談で地獄へ落ちて焼かれるイメージをみるのがカトリック国的な表現部分。神父にもトリキシーがみえるようになって、ジェフリーの家にトリキシーがポルターガイスト現象をおこしたのを非難し、アルヴィンと神父の説得によってジェフリーが父（トニー・マベサ）に連れられて自主する。レイプの際にジェフリーだけちゅうちょしていたり、無罪判決に落ちこんでいたり、根っからのワルでないとの伏線を張ってあるので、この流れにつながる。神父の教会で結婚式になり、たまたま祈っていた女性（ビアンカ・キング）にトリキシーが乗りうつり、アルヴィンと夫婦の誓いをかわして昇天とのオチ。
　途中に興味深い要素を含み、トリキシーを火葬にして教会へおさめているのが、一般的に土葬の多いフィリピンにはめずらしく思える。デニスの事故が新聞記事にでて、カネもちの不幸はニュースなのかとあきれるのもフィリピンの特徴か。デニスがジェフリーとブボイの親分格なのに、不良もカネもち順とうかがわせる。ジムで小人がバベールをあげていて、トリキシーへちょっかいをだすほか、大橋巨泉のごとき容貌の同僚（ホセ・マナロ）がオカマっぽい雰囲気をただよわせ、エクササイズのインストラクター（テリ・オノール）や医者（ジョン・ラプス）が完全にオカマで、医者などアクの強い台詞まわしが笑わせるので、小人やオカマがフィリピンのコメディーの主流とわかる。
　セクシー面でのルーファはというと、前述したバストのこぼれそうなドレスのみならず、ジムでのレオタードがそそる。赤いセパレーツで自転車をこぎ、バストに汗が流れる。赤いブラと白いパンツのセパレーツでエクササイズに励み、バストの谷間に汗のつぶが浮かび、ヒップを突きだしてみせる。ボクシングではワンピースにバスト・ラインとヒップ・ラインを食いこませる。レイプのときはスリップにガウンをはおっていて、スリップ姿で亡くなったので、あとの幽霊はずっとこのかっこうだが、さほど色っぽくないのが惜しい。ウェディング・ドレスは背中のガバッとあいているのにビクッとさせる。またクーデット・ホナサンはルーファとバス・タオルを巻いただけのボディーを交互に披露ながら、クーデットにしてはおとなしい露出。トリキシーの会社での助手を演じるシュガーはコメディエンヌぶりのほうが目だち、セクシーさを抑えている。デニスたちがナンパをかけるジムの受付の女性二人や、お尻をアップに座ってエクササイズする女性、ジムの風呂に入っている女性三人のエキストラにちょっとかわいい子がいるのが気にかかる。ビアンカ・キングはさすがに美人で、きわどいシチュエーションがほしかったところ。ほかにレポーター役でクークー・ゴンザレスが出演している。
　なお美術担当にニール・“ブボイ”・タンの名前が読める。