（垣根を越えて 映画版）
94年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：アリエル・ウレータ
主演：ジャンノ・ギブス
アンジョー・イリアーナ
ジェリー・デ・ベレン
ドニータ・ローズ
レオ・マルティネス
ドンナ・クルース
アンジェルー・デ・レオン
デール・ヴィリアール
マルー・デ・グスマン
ダニー・パンサリン
エディー・グチェレス
ミシェル・アルダナ
チャリーナ・スコット
ヨヨイ・ヴィリアーメ
アンジャネット・アバヤリ
クリス・デ・ヴェネシア
そろいもそろったキャストで、これでもかというナンセンス・コメディーを繰り広げるから、フィリピン映画のくだらなさパワーがそのままでているといえる。
このバカっぷりが、個人的には大好きなわけだ。
訳もわからず結婚式から始まり、まったく関連性なくジャンノ・ギブスが刑事アクションのヒーローになり、フェルナンド・ポー・ジュニア主演の映画の看板の前で同じポーズをとってカッコつける。『続・夕陽のガンマン 地獄の決斗』の音楽が流れたかと思えば、アンジョー・イリアーナが西部劇っぽく撃ち合いを演じる。ジャンノが鞭をだすと“インディアナ・ジョーンズ”のテーマが聞こえてくる、といった具合に、ほとんど無茶苦茶。これが主人公を演じるジャンノとジェリー・デ・ベレンのカップルがデートできていた映画館で上映中の作品だったというのが冒頭。
レオ・マルティネス演じるガミガミ親父の娘がジェリーで、となりに住むマルー・デ・グスマン演じる猛烈オバタリアンの息子がジャンノ。レオとマルーは犬猿の仲で、さしずめ二人はロミオとジュリエットかと思うも、マルーのウチに同居のアンジェルー・デ・レオン演じる姪がジャンノの交際を知ってズキーッ、とショックを受けているから三角関係の予感。
あとでわかるのだが、ドニータ・ローズ演じるジェリーの妹はアンジョー演じるジャンノの弟が好きで、デール・ヴィリアール演じるジェリーの弟はドンナ・クルース演じるアンジェルーの姉が好き。レオとマルーの間にも嫌い合いながらも気になる感情があって、ようはみんなロマンス関係なわけだ。
こんなヤツらの近くにいられるか、とレオが家族を連れて飛行機で地方へ行こうとするも、事故に遭遇でパラシュート降下し、ある島へ漂着。マルーも家族と一緒に船でよそへ移ろうとすると、沈没で同じ島へ流される。ほかの乗客たちがどうなったかは関係なく、なぜかレオの一家とマルーの一家だけが助かる、あり得ないシチュエーションといい、徹底的なご都合主義がなかなかよろしい。
島にはヨヨイ・ヴィリアーメが酋長を演じるかつての差別用語でいうところの土人の一族が暮らし、チャリーナ・ スコット演じる一族の幼い子どもを岩石の落下から助けたアンジョーはヒーローだと歓迎される。ミシェル・アルダナ演じる一族の娘がアンジョーにほれ、こちらも三角関係に発展か。
しばらくして二つの家族は一族と親しく交流し、ほんわか雰囲気だったものの、エディー・グチェレスがボスを演じる悪党団がやってきて、村は大混乱に。全員が一致団結でエディーたちをやっつけるわけで、ストーリー的に後半はとくに定石の範囲内に収まるといえる。
この間に飛行機や船に乗っているシーンからしてギャグ満載だったが、二つの家族のサヴァイヴァル生活など、いい加減きわまりない内容が炸裂。本来なら甘いムードとなるはずのジャンノとジェリーのラヴ・シーンまで笑いをとろうとするし、エディーたちを原始的な方法で粉砕のクライマックスなど、ドタバタの連鎖にただただあきれるばかり。確かにジョーズが現われたりといったはずすギャグが多いのは短所だが、たとえ受けなくてもあきらめずに演じ続ける三流芸人のエネルギーにも似たパワーが伝わってくる。
二つの三角関係を含む恋愛の描きかたがおざなりなままなどの不満はいくらでもあげられるが、落第点には惜しい作品。とにかく観客を楽しませたいというアリエル・ウレータ監督など、スタッフのサーヴィス精神を買う。
途中、一族のプリンセスとセックスの相手を決めるため、アーチェリーとダーツとバスケット・ボールの対戦があり、それぞれの勝者のうちプリンセスがレオを選ぶエピソードが挿入されていて、ゲスト出演のアンジャネット・アバヤリがプリンセスを演じるのが嬉しい。豹柄の衣装の女性たちが舞うのをバックに白い衣装のＡＪが登場し、セクシー・ダンスをたっぷりと披露する。
一族の女たちはほとんどビキニに近い格好なのだが、ミシェルは好みのタイプなので、いつもブラからバストの谷間で誘惑にウハウハ。
ジェリーとドニータは破れができたボロいジーンズがキュートなものの、海で魚とりのシーンで衣装が身体に貼りついていないのが残念。でもジェリーはジャンノと愛をはぐくむ設定のとき、ガバッと水からあがってくるポーズがドキドキものだし、なぜかプールに場所が変わって、ジャンノが別の水着の女性に目移りを連れ戻すシーンでワンピース水着をおがませて素敵とときめきをくれる。
ドンナとアンジェルーには、とくに見せ場がない。アンジェルーはまだ少女っぽく、垢抜けていない印象。
というわけで美人のドニータがイマイチだったのは置いといて、ＡＪ、ミシェル、ジェリーの魅力で、お色気部分もそれなりに満足。
まあ、いいんじゃないか。
なお、主題歌をアンドルー・Ｅが歌っている。
