ＮＯＴＯＲＹＵＳ
（周知のワル）
　
98年：スター・シネマ・プロダクションズ
監督：トト・ナティヴィダッド
主演：ヴィクトル・ネリ
　 　　ジョン・レガラ
　　 　ガルド・ヴェルソザ
　　 　レーチェル・アレハンドロ
　　 　アヤ・メデル
　　 　キエール・レガスピ
　　　 ジョージ・エストレガン・ジュニア
　　　 ブランド・レガスピ
　刑務所の暴動から始まり、ヴィクトル・ネリ演じる主人公が、自分と同じ間違いを繰り返さないでほしい、とこれまでの経緯を回想する。オレがグレたのも周囲の環境が悪かったせいなんだ風の不良ものかと思うと、イヤーな予感が走る。
　ヴィクトルは刑務所をでたり入ったりしているワルだが、確かに取り巻く人間関係はひどい。警察も偏見丸だしで、これじゃ更正できないだろうとは感じさせる。でもジョン・レガラ演じるシンジケートのボスから誘われるも、自分のやりかたがあるからと断るのだが、ならどうしてマジメに生きようとしないのか、と疑問が生じてしまうことに。ジョン・エリック・ポウカルピオ演じる子どもに対してはやさしくふるまうのに、大人の男にはギラギラ敵意ばかりで、みていて同情できない。
　とにかく、ものすごくつまならないストーリー展開になっている。
　自らワルながらも、貧乏仲間には迷惑をかけず、より以上のワルをやっつける素朴な正義感があり、スラムのヒーローになるあたりは、いかにも映画的な展開。ついにはシンジケートに乗りこんでジョンらを全滅させるも、宿敵であるガルド・ヴェルソザ演じる悪徳警官と二人だけ生き残って、また刑務所に入れられる設定は、あまりにもご都合主義である。
　もちろん女性にはやさしい人物になっていて、レーチェル・アレハンドロ演じるフィリピン大学の犯罪心理学の学生がヒロインで、最初に刑務所へインタヴューにやってきたときは笑って追いかえしてしまうのだが、出所してたまたま助けたジョン・エリックの姉がレーチェルだったので親しくなり、次第に心を通わせていくあたりはけっこう描けている。ただ人気歌手でもあるレーチェルはそれほど美人といえないし、セクシーでもないし、ラヴ・シーンでも肌を露出してくれないので、これは個人的好みの問題だが、ワクワク感がないのが残念。
　もう一人アヤ・メデルは大好きな女優で、ヘソだしのジーンズで登場していつもながらのフェロモン・ムンムンだが、乳房に刺青をしていて、オイオイやめてくれよ。不良っぽさを表現したかったのだろうが、これじゃ美人が台なしじゃないか。セックス・シーンも下を向いてプラプラゆれる乳房がみれるものの、どヘタな撮りかたで少しもうっとりとさせてくれない。
　ヒデー！
　そのあとアヤがまったく登場しなくなって、これで出演シーンは終わりかよと落胆するも、かなり経ってから再びでてくるシーンがあって、よかったあと拍手。アヤはみているだけで初恋の相手のようにときめきが盛りあがってくるから、ホント癒し系だなあと感じていると、すぐに殺されてしまうではないか。えー、そりゃないでしょ。
　ヒデー！
　女優の魅力すら欠落した映画である。
　刑務所の中でもガルドの陰謀でヴィクトルは看守から暴行を受けたりするのだが、ついに食事のときにガルドを殺し、刑務所内は暴動になって、冒頭のシーンへとダブるわけである。なりゆきから礼拝にきていたスーザン・アフリカ演じる尼僧をヴィクトルが人質にとるも、スーザンまでもがスワットに射殺されるラストまで、問題提起をしているようでいて、まったく共感できる部分がない。アクションも冴えず、ただ退屈さのみが迫ってくるだけ。
　イヤーな予感は当たってしまった。
　トト・ナティヴィダッド監督はときにハッとさせてくれる作品も多いのだが、今回はいいとこなしのパッパラパー。無理にでも一つ長所をあげるとすれば、上映時間が90分ほどしかないことだろう。