ＮＧＡＹＯＮＧ　ＮＡＮＤＩＴＯ　ＫＡ
（今あなたはここにいる）
　
03年：スター・シネマ・プロダクションズ
監督：ジェリー・ロペス・シネネン
主演：ジェリコ・ロサレス
　　　 クリスティン・ヘルモサ
　　　 オネミグ・ボンドク
　　　 カルロ・ムーニョス
　　　 サンディー・アンドロング
　　　 ジミー・ファブレガス
　　　 ピンキー・マルケス
　　　 トビー・アレハル
　　　 シンディー・クレート
　　　 チンゴイ・アロンソ
　　　 レジーン・トレンティノ
　日本ロケしたロマンスもの。すれ違いが生む別れと動揺のドラマで、結局はくっつくか、くっつかないかの内容にすぎないから、あー、くだらねー。
　バギオを舞台に、ジェリコ・ロサレスとクリスティン・ヘルモサ演じるカップルがデートする中、山岳民族とのふれあいなど、観光要素を盛りこむのはまずまず。カルロ・ムーニョス演じるジェリコの兄の結婚式を冒頭におき、人間関係の構図を説明する手法もありがちながら、うまい展開。ハイメ（ジミー）・ファブレガス演じるジェリコの父が元地主だったものの、落ちぶれ、シンディー・クレート演じる議員の娘とジェリコの結婚を望んでいる。でもジェリコはクリスティンたちとバンドを組み、日本就労のヴィザを得る。いざ出発のとき、ハイメが急病で倒れ、ジェリコが一人、フィリピンに残る。六ヶ月の日本滞在による別離の間にカルロとシンディーが結婚を決め、式の当日、酔ったジェリコがぶち壊しにする。失意のクリスティンは帰国後、オネミグ・ボンドク演じる実業家と出会い、婚約を決める。たまたま家具製造で第二の人生を始めたジェリコが、その家具の販売でパートナーを組んだのがオネミグ。思わぬ再会にクリスティンは皮肉な対応をとるも、ジェリコがまだ独身と知って…　とのストーリー。
　とにかく後半のテンポがのろく、退屈以外の何ものでもないのが致命的といえる。ジェリー・ロペス・シネネンの丁寧な描写によるムードづくりがロマンティックとの発想が、誤解以上に、どうしようもない。
　まったくクリスティンがジェリコにうだうだ、ジェリコがクリスティンにうだうだ、クリスティンがオネミグにうだうだ、ジェリコがハイメにうだうだ、オネミグがクリスティンにうだうだで、えー加減にせー！　深みのない表層的レヴェルで悩まれても、ただ長いだけでうんざり。ＴＶのトレンディー・ドラマじゃないぞ、と怒鳴りたくなる。
　しかも、主人公たちが暮らす家屋に生活臭が皆無で、カッコつけにもほどがある。クリスティンが部屋で泣くショットにおける真上から撮った構図の不自然なシーツの純白さだけでも、バカバカしいまでのリアリティ欠如を実感する。ホント、インテリア・コーディネーターがなんかが、よく見た目のみ重視から、かえって住みにくい環境をデザインし、それがセンスだと勘違いしているようなもの。
　こりゃ、日本のトレンディー・ドラマがそうだったように、一部のノータリン女くらいにしか共感を呼ばないのではないか。
　バンド演奏のシーンでジェリコとクリスティンが口パクなのがばればれな手抜きもシラけ、はっきりいって駄作。
　もっとも、興味深い要素は、全編にいくつかうかがえる。カルロの結婚でダンスにヨハン・シュトラウスが流れるのが、おそらく上流嗜好。ジェリコとクリスティンたちのバンドが会場でロックを演奏し始めると、親たちがけげんな顔を示すも、ついリズムに乗るのがフィリピン人らしい。オネミグとクリスティンが、チンゴイ・アロンソ演じるオネミグの父とゴルフをしていて、ここでも上流趣味を漂わせる。日本ロケはおそらくクリスティンのみで、新宿と富士湖畔の風景が登場。位置関係はヘンだが、雪化粧した道など、フィリピン人なりの視線がでている。クリスティンが休む畳部屋の民宿や、そこのおばさん（クレジットに、トヨコ・オグラと表記されている）のおじぎといった、日本人のとらえかたも同様。ラストのタイトル・バックにあるスナップやＮＧ集には、クリスティンがおばさんに何かあげていたり、スタッフがみんなで挨拶している姿があって、どこか微笑ましい。公衆電話からクリスティンがジェリコに連絡で、ボックスに風俗チラシがベタベタは、まさに東京。街中の公衆電話で今は国際通話できないぞ、なんて思ったり。クリスティンたちがつとめる設定のクラブはフィリピンで撮ったに違いなく、相変わらず内装が無茶苦茶。生ビールと書いた貼り紙など、文字が反対で、誰かアドヴァイスしてあげる日本人くらいいないのか。日本のエピソードが終了直後に入るマニラの空撮が現代都市っぽく、東京よりモダンな印象を与えるのが、また苦笑い。
　作劇的には、アンジェリ・ゴンザレス演じるまだ幼いジェリコの妹がクリスティンになついていて、再会のときに思わず駆けより、大人たちがワザとらしくジェリコとクリスティンの過去を避けようとするのに、子どもの純真さをたくみに使うあたり、ちょっと納得だった。
　なお、クリスティンにセクシーなシチュエーションを含まないのは非常に残念なものの、白いピタパンで下半身をキュッとフィットさせているファッションがキュート。ダイアン・デラ・フエンテ、カルリン・バヨット演じるバンドの女性メンバーもレザーパンなどがそそり、とくにカルリンの紫のピタパンと、ダイアンのお尻に食いこんだ黒パンによだれタラタラ。個人的に、こういうプロポーションが浮きでるかっこうが大好きなんだなあ。
　脇の女優陣は豪華といえ、ピンキー・マルケス演じるジェリコの母、サンディー・アンドロング演じるクリスティンの母といった中年女性のほか、カルロの新婦でジャヌアリー・イサアク（サンドラ・ゴメスの改名）が顔をみせ、クリスティン妹でジェニー・ミレルも出演。チョイ役なのが、もったいないくらい。クリスティンの友人としてゲストのレジーン・トレンティノや、クリスティンよりずっと美人のシンディーは、何回もビキニなどのグラビアでお世話になっているから、多少ともお色気がほしかった。