ＮＧＡＹＯＮ　ＡＴ　ＫＡＩＬＡＮＭＡＮ
（今、そしていつでも）
　
92年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：ジョエル・Ｃ・ラマンガン
主演：シャーロン・コネータ
　　 　リチャード・ゴメス
　　 　チェリー・ヒル
　　 　マーク・ヒル
　　 　リザ・ロレナ
　　 　カリダッド・サンチェス
　　 　ルストム・パディーリア
　　　 ルーベン・ルスティア
　　　 ムチャ・クリソストモ
　ややミステリー趣味を盛りこんだ愛憎劇。ネリッサ・カブラルのタガログ・クラシクス・コミクスのストーリーをもとにオルランド・Ｒ・ナドレスとＲＪ・ヌエヴァスの脚色がフィクション過多のシチュエーションをつくる。ジョエル・Ｃ・ラマンガンにすれば初期の監督作品で、いかに語るかだが…
　シャーロン・コネータ演じる主人公が父の死を聞き、香港から帰国するのが冒頭。マーク・ヒル演じる兄が迎え、シャーロンと父の間に深い確執の溝があったことを示す。シャーロンとマークがジェス・ラモス演じる弁護士から遺言で遺産がリチャード・ゴメス演じる後妻の連れ子にゆずられると説明され、葬式にきたリチャードを感情的に追いだす。シャーロンとリチャードは幼なじみで、リチャードがシャーロンにあこがれていた設定。リチャードにはチェリー・ヒル演じる馬好きがこうじて牧場に暮らす恋人がいる。
　リチャードがシャーロンへ接近するも、シャーロンがリチャードを嫌う。でも遺産のために渋々結婚を承知。チェリーがヒステリックに荒れる。アート・ディレクターのシャーロンが就職先の広告代理店でトニー・マベサ演じる上司に賞賛を得たのに、チェリーが会社のオーナーだったため、会議でデザインを踏みつけられてクビに。
　ご都合主義的な偶然の人間関係がワザとらしい。チェリーに「ダメな仕事でしょ」と同意を求められて重役たちがイエスマンばかりなのは、日本の一部の企業を連想させる。シャーロンとリチャードが会う日本料理店でシャーロンが靴を脱いで和室にあがるぎごちなさや、リチャードの「寿司がおいしい」の言葉に「刺身が好物」と答えているのが興味を引く。シャーロンとの結婚をチェリーに対してリチャードが「ウタン・ナ・ロオブがある」と言い訳しているのがフィリピン社会を風刺する。
　シャーロンとリチャードが領地へ帰って領民たちから大歓迎をうけ、主題歌をバックに愛がめばえ、シャーロンがリチャードへ気持ちを開いていく様子をミュージック・ヴィデオふうに無台詞で描くあたりは、ジョエルの才気をうかがわせるところ。チェリーがシャーロンの結婚式に棺を送り、シャーロンがチェリーのバースディー・パーティーに霊柩車を差し向ける女の執念がこわい。
　マークに裏のある性格を暗示し、精神的にショックな出来事から口がきけないうえ、車椅子生活のルーベン・ルスティア演じるリチャードの父が懸命に何かを教えたがる。「遺産をだせ」と迫ってシャーロンとマークがもめ、チェリーがマークをさげすむも、共同作戦で手を結ぶといった流れで、シャーロンが崖から足をふみはずしそうになり、ムチャ・クリソストモ演じる友人が「気をつけて。あなたのお父さんも落ちた」というあたり、父の死の謎をさらに強調する。
　マークが日本人とのビジネス交渉を喜んでいる態度や、トランプ博打でアラブ人を相手にしているのがおもしろい。
　ただしマークがピストルを持ちだし、駆けつけたチェリーがマークを撃ち、シャーロンへ向けた銃口がリチャードにあたるツメはどんなものか。ルーベンが言葉を発して遺産の書類の隠し場所を明かすと、助かったリチャードがシャーロンへわたし、シャーロンがリチャードを追いかけるハッピー・エンド。
　実に物足りないドラマといわざるをえない。
　シャーロンのスター企画ゆえ、こんなレヴェルにとどまっているうえ、ジョエルの演出は全体的にシナリオを映像化するのに淡々といった印象。クライマックスの緊迫感ももうひとつなのだが、素材へのストレートなとり組みが才能の片りんにつながったようだ。
　個人的に嬉しいのは、猛烈なファンであるチェリーのセクシーさに尽きる。リチャードとのセックスで肩までの露出なものの、馬をとばしてリチャードとマークの対決現場へやってくるとき、赤い衣装が風ではだけて赤いブラがみえているのがウハウハ。馬小屋で逮捕されるのも同じかっこうのままで、丸出しのブラから小さめなバストの胸元がそそる。もう、まったく、ホントに一度でいいから、乳首がバッチリとなったチェリーのオッパイをおがんでみたいじゃないか。
　ハンサムな二枚目のリチャードがプールで泳ぐのをシャーロンがのぞくシーンでリチャードがチンポのこぼれそうな極小海パンをはき、みたくもないふんどしのごときＴバックだけに、女性観客へのサーヴィスを忘れない。正直いえばチェリーの水着がほしかった。
　チェリーの友人を演じるグレース・フィゲス、セシル・ガルヴェス、ベルナデト・ヘロニモでは、ちょっとグレースのかわいさが気になる存在。
　リチャードの友人役でルストム・パディーリア、チェリーの叔母役でリザ・ロレナ、シャーロンの家政婦役でカリダッド・サンチェスが出演するながら、あまり活躍の場が少ないのはもったいない。ただ一人、コメディー・リリーフのイヴリン・ヴァルガスがうまく笑いをとれず、これはユーモア・センスがまだ磨かれていないジョエルの責任だろう。