ＮＡＴＵＴＵＬＯＧ　ＰＡ　ＡＮＧ　ＤＩＹＯＳ
（神はまだ眠っている）
　
88年：セイコ・フィルムズ
監督：リノ・ブロッカ
主演：ロルナ・トレンティノ
　　　 ガーリー・ヴァレンシアノ
　　　 リッキー・ダヴァオ
　　　 ジーナ・パレニョ
　　　 ダンテ・リヴェロ
　　　 リッキー・ベルモンテ
　　　 マリタ・ソベル
　　　 マイケル・ロクシン
　　　 ティナ・ゴディネス
　ロルナ・トレンティノを主演にするリノ・ブロッカの愛憎劇で、コミクスが原作かと思ったが、オルランド・ナドレスとジーナ・マリッサ・タガサのオリジナルのようだ。でも当時人気のコミクスのごときゆがんだ人間関係の構図になっている。
　バーの女パトリア（ジーナ・パレニョ）が客のベルナルド（ダンテ・リヴェロ）と結ばれる。ベルナルドは貧しいながらもカネもちのマイク（リッキー・ベルモンテ）の運転手で、親切なマイクのもとで暮らす日々。マイクの妻ローズ（マリタ・ソベル）とパトリアがほぼ同時に妊娠し、別荘で嵐の夜にローズが産気づき、マイクが不在なのでベルナルドが病院へ送る途中、車がぬかるみにはまったときに出産する。その横で連鎖的にパトリアも産み、ローズが不妊になったと聞いてベルナルドが男の赤ちゃんをローズの子だとわたし、女の赤ちゃんを引きとる。当然、実子を奪われたパトリアは不満で、育児にあまり愛情をそそがず、娘のギリアン（ロルナ）に厳しく接する。妹のラニー（ティナ・ゴディネス）、弟のボーイ（マイケル・ロクシン）とも明らかに差別。一方で男の子のアンドルー（リッキー・ダヴァオ）はわがままに育ち、家政婦（ヴァンジー・ラバラン）に暴力をふるい、ギリアンのシャワーをのぞくなど、どうしょうもない。ギリアンがアンドルーをビンタし、主人家のお坊ちゃんをとベルナルドが怒るも、事情を聞いたマイクがアンドルーを責め、ローズがおわびにギリアンへドレスを贈る。ラニーがまた性悪で、パトリアがあずかった宝石を盗んで質に入れ、何も調べずにパトリアがギリアンを犯人と決めつける。弁償の必要からパトリアが昔いたクラブのママに頼み、もらったドレスを着せてギリアンをホステスに売る。接客できずに嫌がるようすをたまたま良家の若者マーク（ガーリー・ヴァレンシアノ）がみかけ、ギリアンに好意を抱く。マークがギリアンにチョコレートをプレゼントにくると、ちょうど玄関にでたラニーがうけとり、こっそり横どる。ギリアンが知ってラニーを問いつめ、パトリアがラニーに味方したので、姉に同情的だったボーイがギリアンを助ける。ベルナルドがアンドルーに自分の子だと教え、ギリアンと結婚しないと豪邸をおわれるかもと脅すと、アンドルーが服や化粧品を買ってきてラニーやボーイを喜ばせるが、ギリアンだけ無反応。マークの愛の告白に応えるギリアンをみてアンドルーがマークにケンカをふっかけ、ついにはベルナルドが倒れたとウソをついてギリアンを誘いだし、ホテルへ連れこんでピストルをつきつけ、犯そうとする。とっさにギリアンがチンポをけってピストルを奪い、襲いかかるアンドルーを撃つ。
　赤ん坊の交換というシチュエーションがいかにもコミクス的であり、ジーナのいじめやアンドルーの自分勝手さ、ラニーのストレートなキャラづけが現実味を薄め、ドラマティックな設定をつくろうとの意図がわざとらしすぎてイマイチな内容。ベルナルドとアンドルーの足の裏に黒いアザのある親子の証拠もご都合主義が目立つ。マイク宅とベルナルド宅の食事の差で環境の違いを示すなど、工夫も感じるながら、リノにしては次元の低い作品といわざるをえない。アンドルーの手術へ駆けつけたパトリアが「私の息子」と泣き、ローズがすりかえに気がつく展開が安易なら、いくら助かったとはいえ、発砲したギリアンがまったく罪に問われていないのがヘン。これまでのギリアンへの態度にローズがパトリアを平手打ち、マイクとローズの「これからもずっと息子でいていい」にアンドルーが改心。いつの間にかラニーも改心で全員がギリアンとマークの結婚を祝うハッピー・エンドに、バカバカしさがこみあげる。それでも退屈を呼ばない語り口がさすがで、リノのストーリー・テリングのテクニックを確認した次第。
　役者は全員が芸達者だけにそつなく演技がまとまり、よく呼吸が合っている。ロルナとティナにはシャワー・シーンがあるが、ボディーにバス・タオルを巻き、さして挑発的じゃない。むしろバストの谷間を強調や、ミニスカから脚をだすジーナのほうが色っぽかった。