ＮＡＲＩＴＯ　ＡＮＧ　ＰＵＳＯ　ＫＯ
（私の心はここにあった）
　
92年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：チト・Ｓ・ローニョ
主演：ロルナ・トレンティノ
　　　 ガビー・コンセプション
　　　 アーミー・オーストリア
　　　 ナネット・メドヴェド
　　　 マーク・ヒル
　　　 チェリー・パイ・ピカチェ
　　　 ルストム・パディーリア
　子どもを殺された母親の復讐劇で、リカルド・リーの脚本による巧みなストーリー展開が買える。
　ロルナ・トレンティノが母親を演じ、ガビー・コンセプション演じる獣医の恋人と未婚のまま出産し、ガビーはナネット・メドヴェド演じる新しいガール・フレンドをつくって、二人は別離状態にある。子どもがひき逃げされ、容疑者がマーク・ヒル演じる議員の息子だったため、レイ・ヴェントゥラなどが演じる警察がロクに捜査をしない。でもチェリー・パイ・ピカチェ演じる目撃者が現われ、裁判に発展。ジョン・アチャヴァル演じるマークの父がロルナにカネで解決を迫るも、ロルナが応じず、トニー・マベサ演じる判事を丸めこむと、偽の証人を用意して無罪に。マークが市長選に立候補と知ったロルナが、ついにキレて…　との進めかた。
　試練の中でロルナとガビーの愛が復活し、二人が正式に結婚式をあげる。これに怒ったナネットがウソの証言づくりに手を貸し、ガビーと大ゲンカ。ナネットが自ら車の衝突を招いて死ぬサブのエピソードは、ナネットの嫌な女ぶりがあまりに単細胞なキャラクターで、ちょっと感心しない。マークが発端の事故を起こすとき、レス・コルテス演じる裏切った手下ともめていて、あとでレスを殺害する部分が本筋にうまくからまず、ルストム・パディーリア演じるガビーの親友がマークから痛めつけられるあたりも同様で、細部がヘタだなあとマイナス要素を抱かせる。
　でもチェリー・パイがじゃぱゆきだったため、マークたち上流の人間からみくだされる設定に社会的興味がわきあがり、警察が「車のナンバーを覚えている」と断言するロルナに、かえって「間違いだろう」と否定してかかるやる気のなさが、権威に弱いフィリピン体質の問題点を提示する。ロルナがマークの家に「子ども殺し」と落書きをする無念さがヒシヒシと伝わる表現も、まずまずの説得力を秘める。
　とくに注目はアーミー・オーストリア演じるマークの妻を登場させたことで、亡くなったロルナの息子と同じくらいの年齢の男の子を育てている。下校時の迎えにきたアーミーの前にロルナが現われ、映画は先のツメの予想を与えると、母親の気持ちは共通している二人が女同士の対立を繰り広げ、ロルナがアーミーの子を誘拐。なんだ、やっぱりそうくるかとの落胆とともに、ロルナがピストルに弾丸をこめるショットから、結局は血生臭い事件で終わるフィリピン映画のパターンだなとあきれていると、そうならない意外性がみごと。ロルナは密かにアーミーだけ呼びだし、無事に子どもを返す。事件の真っ最中の緊迫が走っているだろうに、マークなど家族や捜査の警察に気づかれず、アーミーが抜けだしてこれるなんて甘いご都合主義ながら、マークの実態を暴く電話を聞かせ、アーミーを解放。子どもを連れてアーミーがでていき、マークの家庭の崩壊により、ロルナが暴力へ訴えずに復讐をはたすとの語り口にうなづく。実際はラストでマークがロルナとガビーを襲ってきて、やっぱり血生臭く終わるも、ロルナの誘拐における決着方法のユニークさを評価したい。
　チト・Ｓ・ローニョにすれば平均程度の印象かもしれないが、とりあえずはいいんじゃないか。
　もっとも女優陣の魅力が、すべてに勝るパワーを放つ。一番好みのチェリー・パイにセクシーなシチュエーションを欠き、太めの下半身を包むジーンズくらいしかそそらないし、ファンのアーミーがマークとのベッドで、マークがパンツ一丁なのにスリップをチラリまでは残念なものの、ロルナとナネットが素晴らしい。ロルナは子どもとビーチで遊ぶ冒頭近くでの大胆なビキニがおいしそう。もうロルナったら、小さな子どもが横にいるというのに、こんな露出の多い水着になっちゃって、とチュッチュ。ナネットはさらにパワーをギンギンに盛りあげ、ガビーの部屋で下着になると、ウルトラ・ハイレグのパンティーがすごい。ほとんど陰毛がハミでそうだし、お尻には食いこんでいるし、ナネット最高。ガビーと殴り合うシーンにおける緑のピタパンもプロポーションくっきりで、完全悩殺を受ける。
　やっぱ映画は、女優だわ。