（裸の夜 朝はまだ遠い）
01年：ＦＬＴフィルムズ・インターナショナル
監督：ホヴェン・Ｍ・タン
主演：アヤ・メデル
ジェラルド・マドリッド
シーラ・イズラエル
ピンキー・アマドール
ロイ・アルヴァレス
アニータ・リンダ
アレン・ディゾン
ステラ・Ｌ
パメラ・オルティス
シャルラ・トレンティノ
リチャード・クアン
モン・コンフィアド
アテ・ガイ
トロというライヴのセックス・ショーを題材にする作品は、２００１年３月に公開された『ＬＩＶＥ ＳＨＯＷ』が公衆道徳を乱すとして上映中止にされたばかりだというのに、同じ年の10月公開のこの作品でまたも扱われ、フィリピン映画界というのは、意外と気骨があるなあ、なんて見当違い（？）な印象を抱くじゃないか。それだけ下層から這いあがろうとする人物の生きざまを描くのにしっくりくる設定であり、ヌード・シーンも盛りこめるから、社会派との大義名分のつくエロティック映画にできるということだろう。
トロの女性パフォーマーにあたるトレラをアヤ・メデルが演じるとあっては、かなりの期待作に間違いない。
ピンキー・アマドール演じる女性脚本家のところへシャルラ・トレンティノ演じる友人がきて、内容を読んでいく構成になっている。最初にピンキーが「低予算で、ロケーションも少なく、セックス・シーンの多い映画なの」と紹介すると、シャルラが「アルマ・モレノの主演作のように」と聞いて、ピンキーが「アヤ・メデルが主演よ」と答えるあたりから、面白そうな構成だなあ、と感じる。
シーラ・イズラエルがママに扮するトロのディスコ・パブで、ステラ・Ｌ扮するトレラとアレン・ディゾン扮するトレロがセックスしていて、ステラのお尻がキュート。ずっとあとにステラはショーを拒否するようになるも、しかたなくアレンと演じたあとに気持ち悪いと体を洗うシーンがあり、バケツを前において全裸でゴシゴシに、乳房が石鹸でこすられてプラプラ揺れ、バケツを持ちあげるとオマンコがみえる寸前で、アヤに負けないくらいセクシー。シーラが脱いでないだけに、嬉しいサーヴィスと評価したい。
ちなみにこの“ネーキッド・パラダイス・ディスコ”という店は、看板がアップになるカットで住所が読めるから、本当にあるのか今度行ってみようと思う。
ステラたちのショーをみていたジェラルド・マドリッド扮する青年が、トレロ志望でやってくるや、ステラがいきなりチンポをチェックとパンツをおろして「うーん、大きい」と騒ぐところがまたおかしい。ジェラルドは貧困から抜けだすべく田舎からでてきたあと、ゲイのステージに立ったり、チンポを吸われたりで、何でもするぞ、という人物に設定されている。
トレラの募集で採用となったのがアヤの役。いきなりアレンとセックスしていると、ジェラルドがからんできて３Ｐで体をいじられ、怒り心頭に達する。映画はアヤが次第にそんなことなど平気ですれていく過程を描き、いつの間にかジェラルドと本気で愛し合うのが核をなす部分。自分の生きていく意味のわからないアヤが、セックスから愛へと目覚めるわけで、納得のいく展開ではある。
途中で「ボールドなの」と聞くシャルラに「ノラ・オーノールじゃないんだから」みたいに答えるピンキーの挿入などを置き、アヤとジェラルドのデートのシーンに主題歌が流れて、ヤング・スターのような清純イメージを期待するシャルラに「アヤとジェラルドよ」と返す台詞に、つい笑ってしまう。
コメディーじゃないんだが…
でもカネでパメラ・オルティス扮するサウジ・アラビアへ夫が出稼ぎに行っている女のセックス相手にアレンがなっていて、これがジェラルドに変わり、人間関係が急激にギクシャクしてくるあたりから、物語の発展方法にありきたりなパターンを読みとる。ジェラルドに抱かれるシーンでのパメラはオッパイが丸だしのうえ、紐パンティーをほどかれるところがそそるし、全裸で枕を抱いて座るポーズが挑発的なのだが、容貌的にイマイチなので、アヤの前でかすむのが残念。
アヤがアレンとのショーでマグロに変貌して観客から罵声を浴び、一旦いなくなったりする流れは、心理の掘りさげがストレートすぎてもの足りない。実はステラもジェラルドのことが好きで、シーラはステラにレズ的な愛情を抱いていたという関係も、もっとうまく活用しないことには、表面的な事実の提示で終わってしまう。
ついにはケンカからアレンがジェラルドを刺し殺すのに、ジェラルドの野望が挫かれるという内容ではなく、これじゃ単なる内輪もめだぞとの印象を与えるだけなのは、どんなものか。ジェラルドがパメラの妹とセックスで、責めるパメラを殴り、巨根だからカネをもらって当然みたいなうぬぼれからくる野心があっただけに、そのあたりでドラマを広げてほしかったのだが…
これにアニータ・リンダ扮する物売りのおばあちゃんと、リリア・クンタパイ扮するいまだにセックスで商売しようとするおばあちゃんの友情がでてきて、売春婦の末路のような哀愁を表現し、けっこういい感じになっているものの、サブ・キャラクターの枠をでるものではない。
比較しちゃ悪いが『ＬＩＶＥ ＳＨＯＷ』よりもリアリズムが数段弱く、社会ドラマとして成立しきっていないと感じる。
意欲に負けた作品だ。
ただし『ＬＩＶＥ ＳＨＯＷ』がまったく救いがなくてド暗いのに対し、あきりたりながらも、田舎へと帰っていくアヤに希望のような明るさがあり、落ちこまずにすむ結末はまずまず。
また、ただの狂言まわしかと思っていたシャルラの存在だが、夫がやってきて「こんなところで怠けているんじゃない」と殴り、ピンキーと口論するのに、登場キャラの一人だったんだと意外な印象を与え、ドメスティック・ヴァイオレンスの問題にふれているあたりも、そこそこ成功している。
主演のアヤについていえば、役が役だけに出演シーンの半分近くが全裸か半裸か下着姿のようで、文句なしのみごとさなのは指摘するまでもない。何度かあるライヴ・セックスにおける悶えかたが悪魔的な魅力なうえ、マグロになったカットでの乳首のドアップが迫力もの。
とはいえショーのシーンは赤っぽい照明が当てられているため、肌が生っぽくみえるのは事実。アレンやジェラルドのお尻がジャマすることもあって、楽屋に全裸でかけてきて、オッパイをプラプラさせながら下着をつけるシーンのほうが好み。個人的な趣味でいえば、セックスはするものであって、みるものじゃなく、みるのは美人のハダカのほうがいい、ということなのだ。
ジェラルドとのプライヴェートのセックス・シーンでは、照明が普通だから自然な肌の色艶がでて、アヤの全裸が光っている。クライマックスはたっぷりと撮られたジェラルドと一緒にシャワーを浴びるシーンで、コントラストの強い画面の中、カメラは縦移動でアヤのボディーをなめるようにとらえ、アヤはうしろを向いたり、前を向いたりと動き、うしろでは絶品のお尻が誘惑してきて、前ではウルトラ巨＆美乳がドバーッと全開になると、ジェラルドにモミモミされる。やや黒っぽい乳首にジェラルドの指がふれるや、その感触まで伝わってきて興奮のるつぼへと叩きこまれ、カメラがティルト・ダウンに陰影でみえにくくなっているものの、陰毛のあたりにもアップで迫り、ウワーッ、もも、もはやたまりませぬ。
アヤ・ファンにすれば、最高の一本といえるだろう。
それにしても『ＣＵＲＡＣＨＡ ＡＮＧ ＢＡＢＡＥＮＧ ＷＡＬＡＮＧ ＰＡＨＩＮＧＡ』のアラ・ミナ、『ＬＩＶＥ ＳＨＯＷ』のクラウジャ・コロネル、ここでのアヤ・メデルで、トロを扱った作品にはどれも個人的にだーーーーーーいファンの超美人女優が出演しているが、現実のトロには、まさかこんな人生を棒にふってでも寝てみたいと思わせるようなトレラがいるわけがなく、やっぱり映画ね、ということか。
