ＮＡＫＡＧＡＰＯＳ　ＮＡ　ＰＵＳＯ
（欠けているのは心）
　
86年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：レロイ・サルヴァドル
主演：シャーロン・コネータ
　　　 ロルナ・トレンティノ
　　　 エドゥ・マンザノ
　　　 トントン・グチェレス
　　　 サンディー・アンドロング
　　　 ロニー・リケッツ
　　　 ロサ・ロサル
　姉妹の愛憎劇で、よくある構成といえばそれまで。優秀な成績で大学を卒業した姉が恋を捨ててビジネスに専念し、妹を家来のように強制指導する。姉の聡明さが自慢だった妹は家事を助けるなど、ずっと服従していたのだが、自分のプライヴェートにまで口をはさまれるようになってだんだんと反発。ついにはキレて逆襲に転じると、姉は妹を家から追いだす。との物語で最後は姉のほうが自己中心的な性格を反省し、相互理解で復縁するのだから、予定調和の構成といっていいだろう。まあレロイ・サルヴァドルの可もなく不可もない演出で、無難にまとめた感じか。
　人気絶頂期のシャーロン・コネータが妹を演じ、アイドル映画の範ちゅうと分類される。しかもロルナ・トレンティノが姉を演じ、当時にすれば二代青春スター女優の共演になっている。
　若い二人を支えて、姉妹の確執に悩むアマド・コルテス演じる父とロサ・ロサル演じる母、ロルナを勉学に走らせる原因となるベリア・フロレス演じる祖母など、脇が手堅い演技をみせるほか、シャーロンにほれて強引に口説き、しばらく幸福な交際をするも、無理矢理ロルナによって引き裂かれるエドゥ・マンザノ演じるボーイフレンド。ロルナの反対を押し切ってシャーロンと結婚するも、心臓の持病で亡くなるトントン・グチェレス演じる夫など、イキイキとしたイメージが好印象。アメリカ留学からエドゥが帰国し、ロルナを紹介されておつき合いを申しこむ流れで、ロルナはどこかで会った記憶を持っているのに対し、エドゥがまったく気がついていないかどうかの曖昧さがうまい。トントンはおんぼろテレヴィを修理するところで「直った」とハシャぐあたりに、物質的な満足感ばかりが決して心を豊かにするわけではない、とのテーマを暗示してくる。ロルナが偶然に別れた恋人とはち合わせし、家族のためを考えてロマンスを捨て、ビジネスを選んだとの理由を紹介するエピソードは、恋人を演じるロニー・リケッツが顔みせ程度の登場かな。
　まあ、トントンの子を妊娠したシャーロンが一人で育てる意志を固め、エドゥがロルナとも結ばれない厳しさが、しばしば現実への甘さが目だつフィリピン映画にあって、意外なラストともとれる。
　平均点の仕上がりじゃないか。
　とにかくシャーロンとロルナだけでなく、シャーロンの同級生を演じるドーン・スレータ、ロルナの親友を演じるサンディー・アンドロングなど、フレッシュな女優の魅力が素晴らしいに尽きる。どちらかというと主役の二人より、エキゾティックな要素を秘めるキュートな容貌のドーンと、ストレートな美人のサンディーのほうが個人的に好み。とくにサンディーはヤケ酒を飲むシーンでＹシャツ一枚だったり、黒タイツのレオタードでエキササイズするシーンがあるからぞくぞくを呼ぶ。もちろん全員の水着姿披露が歓喜にたえないところ。シャーロンとドーンは黒いワンピースでビーチを走り、ボディー・ラインがくっきり。やや太めのシャーロン、スリムなドーン、ともにおしいそうながら、大胆にパックリと背中のあいたドーンはちょっとセクシーすぎる。ロルナとサンディーはプールで泳ぎ、花柄ワンピースのサンディーが水からあがり、濡れたプロポーションで誘惑しながら前かがみなって胸元がのぞくショットに視線を奪われるも、ロルナの黒いワンピースだって負けていない。お尻を突きだすポーズで浮きでたヒップラインに、思わず生つばゴクリ。もーう、四人とも抱きしめてチュッチュッしたい。
　水着のキュートさだけで十分にみた価値があったといえそう。
　また、シャーロンが家庭教師となる生徒で、トントンの姪役としてヴィーナ・モラレスが出演。おそらくデビュー作であり、まだ十歳程度の少女。シャーロンと一緒にピアノを弾きながら歌う設定を用意し、ファン・サーヴィスであるとともに、スター性を十分にうかがわせる。
　子ども時代のシャーロンとロルナをローズ・アン・ゴンザレスとグラディス・レイエスが演じていて、グラディスは意地悪っぽい表情のつくりかたが成長した今に通じるも、よく人気を得たものよ、との驚きを隠せない。
　なお、シャーロンのファッション・アイテムの一つに唐草模様のワンピースがでてきて、日本だと風呂敷だから笑ってしまった。