ＮＡＧＳＩＭＵＬＡ　ＳＡ　ＰＵＳＯ
（心の始まり）
　
90年：ヴィジョン・フィルムズ
監督：メル・チョングロ
主演：ヒルダ・コロネル
　　 　リチャード・ゴメス
　　　 ジェー・イラガン
　　　 チェリー・ヒル
　　　 アルミダ・シギオン・レイナ
　　　 クリスティン・ガルシア
　　　 ジェニーヴ・アラゴン
　ヒルダ・コロネル演じる中年前の女教師が、リチャード・ゴメス演じるカレッジの教え子とできている。さしずめ日本なら、立場をわきまえない教師側がほぼ間違いなく断罪されるケース。聖職（!?）なんていわれてるからね。でもアルミダ・シギオン・レイナ演じるヒルダの母が娘を案じて訴訟を起こさせ、リチャードが強姦で有罪に。
　さんざん男の肉体をもてあそんだくせに、前途ある若者の将来を奪う、なんたる卑劣な女。こんな教師はす巻きにしてパシグ川にでも放りこめばいい、との怒りがわきあがる。まず、きっかけのヒルダのバカぶりに、先をみる意欲がうせるほど腹が立つ。
　何年か経って、ジェー・イラガン演じるビジネス・マンと結婚し、ジェニーヴ・アラゴン演じる男の子をもうけているヒルダのところへ、今度は出所したリチャードがヒルダにストーカーの如くいやがらせを始める。映画はほぼ全編、リチャードのあの手この手の陰湿な意地悪を描くばかり。ローレンス・ピネダ演じるカレッジ時代の友人が経営する会社へ就職し、そこで出会ったクリスティン・ガルシア演じるかわいい娘から愛の告白を受けたというのに、まったくいつまでたっても太ったオバンのヒルダを追いかけていて、お前はアホか、と声をかけたくなる。
　またジェーのところへリチャードが強引にやってくると、ジェーは警備員に命じてリチャードをボコボコにしていて、どいつもこいつもしょーもないヤツ。
　結局、リチャードがヒルダを犯し、再び裁判となって今度はヒルダが合意のうえだと証言したから、ジェーとの夫婦間に亀裂が生じる。ジェーはかねてから浮気相手だったチェリー・ヒル演じる秘書のところへ走るも、あっさりフラれてヒルダのいる家庭へと帰り、いわゆるありきたりな“元の鞘”劇かよ。
　なんて思っていたら、まだあきらめないリチャードが銃を持って現われ…
　えー加減にせー！
　リチャードの女々しさはもう不愉快を通り越し、こんな映画をみた後悔が全身にムラムラと沸騰する。
　最低、最低、最低、最低、最低…
　メル・チョングロ監督、リカルド・リー脚本のコンビには、かなりイイ仕事が多いと高評価なのだが、中にはウルトラ駄作もあるということだろう。
　とにかく致命的なのはヒルダに熟女の色気が欠如している点で、スリップになるベッド・シーンなど、まったくときめく要素がゼロ状態。若者を魅了する大人の女を演じるには、かなり無理が目だちすぎる。むしろチェリーがそそるタイプで、これはお願いしてみたいなあ、と容貌やプロポーションをみているだけで下半身が元気になる。もちろん若いクリスティナもチュッチュしたい誘惑を放ち、リチャードとのセックスでもう少し際どいシチュエーションを含んだり、ビーチのシーンで水着を披露してくれれば、せめて一ヶ所くらい映画に見どころができたかもしれない。