（月が怒っている長い夜）
83年：エセックス・フィルムズ
監督：ダニー・Ｌ・シアルシタ
主演：ディンド・フェルナンド
グロリア・ディアス
ローリス・ギリエン
ジャニス・デ・ベレン
エディー・ガルシア
トミー・アブエル
リザ・ロレナ
スザンヌ・ゴンザレス
スーザン・ヴァルデス
マイケル・デ・メサ
オデット・カーン
ジョニー・ヴィカール
オリヴィア・オハラ
三十代前半にあたるグロリア・ディアスの熟れた魅力が堪能できるメロ・ドラマ。内容的にはバカバカしいながらも、グロリアのかぐわしい芳香が画面に注視を迫る。また今や名監督になったローリス・ギリエンが女優時代に色っぽいところをみせるとともに、まだ半分少女だったジャニス・デ・ベレンがういういしさを示す。
基本は上流階級のイチャイチャ劇。外国人などを招いたパーティー会場で主人のディミトリー（エディー・ガルシア）が、サウジ・アラビアへ出かせぎにいく費用のほしい男（ジョニー・ヴィカール）に浮気のネタでゆすられる。ディミトリーはホモで、愛人のジョニー（マイケル・デ・メサ）はガール・フレンド（オリヴィア・オハラ）をつくってでていき、しかも妻のステラ（グロリア）に同性愛がバレて家をおいだされる。一方で妻のデルサ（ローリス）、年ごろの娘ジェニー（ジャニス）、幼い息子ジョゼフ（アルヴィン・エンリケス）と四人家族で、メイド（ジョシー・シューメーカー）を雇い、よき夫、よき父のミゲル（ディンド・フェルナンド）がいる。自分と同じ苗字のアントニオ（トニー・アルヴァラド）と知り合ったジェニーは、年ごろ同士の好奇心から交際を始める。友人のディアナ（オデット・カーン）を相談相手にするも、失意のステラが海岸を歩いていたときにミゲルが声をかけ、たちまち二人は恋愛関係に陥る。ミゲルが既婚者とわかってステラが責め、たくみにデルサと話をつけたミゲルがステラの別荘へ公然と泊まるようになる。急病でミゲルが倒れて、病院でデルサとステラがはち合わせ、デルサが劣等感をおぼえる。女医（リザ・ロレナ）からデルサは鎮静剤をもらう。三角関係が泥沼化の中、紳士のはずの医者（トミー・アブエル）がデルサを無理やり犯そうとする。父は仕事で留守と聞いていたジェニーが医者とデルサの会話で本当のことを知って家出。アントニオの部屋や、デルサの友人であるエヴァ（スザンヌ・ゴンザレス）の家に泊まる。ディミトリーが現われてミゲルを呼びだし、デルサが妊娠でもめてピストルをつきつける騒ぎになり、ジェニーがステラを訪ね、ステラがミゲルに別れを告げる。アントニオの苗字が同じなのにデルサが気がつく。いっさいを清算して外国へいこうと決めたとき、ディミトリーがミゲルを撃つ。葬式にアントニオの母のメルセデス（スーザン・ヴァルデス）もきて、アントニオとジェニーが兄妹とわかる。
どことなく『湖愁』を連想したが、あんな厳しい葛藤劇ではない。嫉妬でステラに暴行を加えたり、病院で絶交をいわれて看護婦がとめるのを振りきってステラをおいかけるのはコメディー要素でも、病室でデルサにセックスを強要といった、ミゲルの行動が共感をはばむあたりに最大の短所を感じとる。脚本を兼ねたダニー・Ｌ・シアルシタの人物表現が弱い。『ある日どこかで』の音楽使用もマイナスを助長する。
細かい点では興味をそそる要素があり、アントニオが野球の選手をめざし、メルセデスが「ベーブ・ルースのつもりなの」とほかのスポーツをすすめるのがフィリピンの野球不人気なら、アントニオの背番号の３は日本の影響かと疑いたくなる。デルサがスイカをナイフとフォークで食べていて、カネもちスタイルの表出だろうが、ちょっとおかしい。エヴァがアンティーク店を経営しているのは、上流の物語で何度となくみる設定。
とにかくグロリアのセクシーさがすべてにまさる。乗馬服、短パン、テニス・ルック、白いピタパンなどの着衣がよく、短パンでのお尻のドアップと白いピタパンでの階段をあがるお尻のショットがそそり、テニス・ルックでは風でスカートがまくれてスコートがのぞく。二度のセックス・シーンは中途半端だが、黒と茶のワンピース水着をニタイプ披露し、茶のほうでは浅瀬で抱き合って濡れた生地が貼りつき、ボディー・ラインをくっきりと浮きあがらせていて実においしそう。ローリスは赤いシー・スルーのネグリジェがムズムズもので、ハイレグのパンティーがスケている。スリップから胸元がみえたり、病室での強姦もどきでブラとパンティーがあらわになり、太腿まで挑発的にむかれる。医者とのレイプ未遂ではブラをはずすも、手でオッパイを隠す。ジャニスはプールでラベンダーのワンピース水着が視線を引きつけ、少しお尻に食いこんでいる。あとオリヴィアがけっこう美人。
いずれにしてもグロリアに悩殺だった。
