ＭＹ　ＫＵＹＡ’Ｓ　ＷＥＤＤＩＮＧ
（兄の結婚）
　
07年：リーガル・エンターテインメント／リーガル・マルティメディア
監督：トペル・リー
主演：マッハ・サルヴァドル
　　 　ライアン・アゴンシーリオ
　　 　ポーリン・ルナ
　　 　ジェーソン・アバロス
　多少、近親相姦的な愛情を抱く妹を描く青春ロマンス。
　幼いキットカット（チェスカ・ビリオネス）は近所のイヴェット（ミカ・デラ・クルース）が兄のジェフリー（ポール・ケラス）を誘うのに対し、水をかけて追いはらう。十年後、同じようにイヴェット（セイ・アロンソ）に水をかけると、傘をさして防御などで、相変わらず兄のジェフ（ライアン・アゴンシーリオ）へのカット（マッハ・サルヴァドル）の溺愛を示しつつ、病気の母（ラクエル・ヴィリアヴィセンシオ）がジェフに薬代をもらうのに、密かに貯金で薬を飲まなかったために病死。ホテルのポーターでジェフが生活費をかせぎ、カットにハイスクールを卒業させる。ジェフが台湾に仕事をえて海外就労で、さみしい日々を送りながらも、カットは仕送りでカレッジを卒業。オカマのヴィクトリーノ（ＩＣ・メンドーサ）とオフィスに就職をはたす。四年間の滞在を終えてジェフが帰国になり、心待ちのうえに空港へ迎えにいけば、ジェフが婚約者のハイディ（ポーリン・ルナ）をともなってきたのでびっくり。結婚式のためにハイディの故郷のレガスピへ同行し、そこでハイディを思う幼なじみのルディー（フランク・ガルシア）の存在を知ると、ニセの手紙を書いてルディーに恋心を再燃や、ヴィーにイヴェットへ連絡を頼むなどで妨害を試みる。
　アラン・ティハモとロセル・モンテヴェルデ・テオのストーリーにもとづくアラン・ティハモの脚本は無難にまとめた印象で、とくにどうのと評するレヴェルにない。カットとジェフがひいきにする近所のジョパイ（キットカット）とペパイ（チェーナ）がつくるハロハロや、ビコール特産のココナッツの繊維で編んだ人形、ジェフがカットに贈ったぬいぐるみ、母の貯金、ジェフとカットが密談に使い、周囲が理解できず、画面に字幕を入れるヴィサヤ語の台詞などの小道具を的確に配し、よく構成を練っている。カットがＴＶにでているアリス（ジェーソン・アバロス）にあきれるシーンを前におき、ハイディにコリン（ヤヌス・デル・プラド）とファレル（ライアン・イリアーナ）のいかれた兄がいるほか、アリスも弟なのに驚くと、アリスがカットに引かれ、偶然に出会ったイヴェットとルディーにも暗示のロマンスの挿入が、ほどよいまとまりをつくる。
　トペル・リーの演出はマニラの若者の風俗にディスコをみせるのみだが、ビコールのシンボルのマヨン火山を撮り、ハイディの父（ディック・イズラエル）が庭の手入れに余念がなく、母（エテル・ブーバ）が家でダンス・スクールを開き、それで式の前に全員がダンスの練習や、わざとカットが寸法を違えてメモったので、小さくて破れるバロン・タガログのオーダー・メイド、コリンとファレルがジェフと飲むときに「カンパイ」という日本語の浸透などの生活風習をまぜるほか、結婚式をお膳立てのハイディ一家の友人であるディノ（ドミニク・オチョア）がオカマなのがフィリピンっぽい。コリンとファレルがレスリングにたわむれ、相撲のシコを踏むバカさ加減に、ベッドでコリンとファレルに囲まれて寝る窮屈さにジェフがぬけだしを試み、コリンとファレルが半ケツをみせてかがんでジェフをはがいじめのほか、水浴びでアリスがカットにハダカで遭遇に慌てるなどのコメディー・タッチを織りこむも、ジェフ宅のお手伝いさんのテレだけ、せっかくコメディエンヌのデブラリスが演じているのに、マジな設定のみが肩すかし。祝福でマッハ・サルヴァドルにギターを弾いて歌うシーンをおくのは、ファン・サーヴィスだろう。とにかく森谷司郎の『兄貴の恋人』のような実存主義的な人間観の要素を含むわけじゃなく、薄っぺらい内容なんだし、娯楽映画と考えれば許せる水準。こだわるジャンルのホラーよりも、こっちのほうがうまいのではとも感じるが、カットの作戦が功を奏して本当にハイディが失望のあたり、かなりモタついてつまらなさを増し、単細胞なドラマの限界をうかがわせる。
　マッハ・サルヴァドルとポーリン・ルナのかわいこちゃんの共演では、マッハが黄色いドレス、化粧をしての青い衣装、川原でアリスが地元の女の子たちにサインを求められるのにやきもちでのオレンジのワンピース、赤いシャツにジーンズがキュートになり、キリスト像にフルーツをそなえ、結婚式での雨天を祈れば、その場で雨が降ってきて風邪をひくときの濡れるシャツと薄めの生地のジーンズにときめきをくれる。ポーリンは川原での黄色いワンピースとウェディング・ドレスの試着で美人が歴然なら、ジェフが忍んでくる水浴びでタオルを巻いたボディーと、紫の光沢のパジャマがセクシーなうえ、シャツとジーンズでムッチリのプロポーションが迫る。また、つい数年前にはほぼ全裸のグラビアを披露したエテル・ブーバが母親役とは意外ながら、バストの谷間が大胆なワンピースを着て、オッパイをプラプラと揺らせる。カットのハイスクールの卒業式には、ジゼル・サンチェスがカメオで顔をだしている。