10年：ＡＢＳ−ＣＢＮフィルム・プロダクションズ／スター・シネマ・プロダクション
監督：カティー・ガルシア・モリナ
主演：ジョン・ロイド・クルース
トニ・ゴンサガ
アトイ・コー
ジョン・ロイド・クルースとトニ・ゴンサガの共演によるスター企画の商業作で、いかにも大衆うけを狙ったくだらない内容になる。
優秀な販売アドヴァイザーのアポロ（ジョン・ロイド・クルース）がカメラマンのアイリーン（トニ・ゴンサガ）にひと目ぼれし、しばらく幸福に交際も、理想の愛を求めるアイリーンが結婚式を逃げだす。それでもアイリーンを思い続けたアポロが偶然にスーパー・マーケットで再会のはたすや、困ったアイリーンがとっさに交通事故で健忘症にかかり、アポロのことを覚えていないとかわす。さっぱりアポロを誰なのととぼけるアイリーンにアポロがストーカーのごとくつきまとい、無理やりに仕事を手伝う。しだいにアイリーンに前よりも深い愛が生まれるも、健忘症がウソだとの告白に悩む。
ジェード・カストロのストーリーにもとづくカルミ・レームンド、ミゲル・セヴィーリア、ジェード・カストロの脚本が予測の範囲内にとどまり、創作的な意欲を欠くが、そこにワザとレヴェルをさげる観客志向がみえる。カティー・ガルシア・モリナの演出はお人好しのアポロのキャラクターと、やや男まさりのアイリーンのキャラクターをジョン・ロイドとトニの個性にあわせ、ファンの期待を意識におく。だから後半へ進むにつれ、だんだんと退屈なつまらなさをまねく。
ただし、バルカダと呼ぶ仲間の交流で描くあたりが、実にフィリピンっぽい。
アポロの友人たちは、独身でふたりの子もちのチブ（ケチャップ・ユーセビオ）が、同じく子もちでデブの嫁（カイ・コルテス）をもらい、結婚式でアポロが介添え人をつとめる。ジャン（ジョロス・ガンボア）は恋人のジェン（ダイアン・メディナ）と途中から結婚している。ケン（カルロス・アガシ）とエリック（ＪＭ・デ・グスマン）は独身で、なにかと四人がアポロとアイリーンの復活に世話をやく。アポロは母を亡くし、父のジェーゴ（アトイ・コー）はサリサリ店をいとなむ。強いなまりのタガログ語に中国系とわかる。アイリーンはすでに両親を失い、仕事を共同経営のピーチー（ベアトリス・ソー）と一緒に暮らす。海外就労の友人とインターネットのＴＶ電話でアイリーンとピーチーが会話にフィリピンの出稼ぎ体質がにじむ。
また、初めてアポロがアイリーンと出会うのが婚活の紹介パーティーにアイリーンがカメラマンできたときで、フィリピンにもこんなイヴェントがあるのねとうなづく。アイリーンの設定がカメラマンはプラスの要素をつくり、カレンダーの撮影で水着の女性たちとともに水着の男性たちがモデルに、つきまとうアポロを「ひとり足らない」と脱がせるや、クライアント（ウィニー・マテ）がとめるシーンから、フィリピンは女性のみならず、男性の水着需要が高いとうかがえる。ファミリーの撮影依頼が祖父母の金婚式で、高齢の祖父（マニー・リバリオス）と祖母（メリー・ソリアノ）の仲むつまじい夫婦ぶりにアイリーンが結婚願望を思いだして涙を流し、大家族主義のフィリピンのイメージがうつる。教会でアイリーンが「ハンバーガーとポテト・フライをください」と祈り、水着撮影の際にこき使われるアポロがついでにハンバーガーとポテト・フライを買ってくるも、アイリーンが「いらない」という脇の余談にフィリピンの宗教気質とジャンク・フード嗜好がのぞく。
なにより全員がよく笑い、その笑顔が老若男女ともに素敵なことが、かなり気持ちよい好感度をあげる。ある程度の教育をうけた層なので、誰もタバコを吸わない点も納得がいく。
でも、アイリーンの誕生日を祝うパーティーを開催や、アイリーンの記憶を戻すためにアポロが婚活パーティーを再現と、平気でカネを浪費できる連中のロマンス。しょせんは現実に目を向けず、確信犯的に浮いた夢物語を提供の娯楽作にとどまる。
しかも、アポロが運転中に携帯電話で通話だし、交通事故をおこして健忘症のオチがバカっぽさに拍車をかける。もはや、うんざりのひどさ。
トニ・ゴンサガがブスとはいわないもタイプをはずれ、個人的にヒロインとして弱いことがイライラをつのる。アポロとセックスで抱きあうも、持病で中止のベッドで黒いブラのバストをみせ、翌朝は白いシャツに赤いパンティーがスケるながら、横顔の平板さにがっくり。肩紐なしのウェディング・ドレスで雨の中に道路を走るシチュエーションにハラハラ感のゼロが、ときめきに遠い。まあ、ジーンズくらいが、少し視線を引きつけるかな。
ベアトリス・ソーはメガネをとるショットで中国系らしき容貌があきらかで、やはりタイプじゃないも、ジーンズの短パンがまずまず。ダイアン・メディナがキュートになる。
トニ・ゴンサガは『ＤＩＶＡ』や『ＨＡＲＤ』を歌うときのＴＶ出演やコンサート・ツアーの映像で下半身にピッタリの黒いパンツはき、さすがにお尻の形がバッチリでお世話にあずかったし、ベアトリス・ソーは紐ビキニの披露を経験済みのうえ、ダイアン・メディナはプライヴェートで公開の写真の中にパンティーがお尻に貼りつく水着のがあり、全員でビーチかプールで遊ぶシーンがほしい不満が残る。
ケンのガールフレンド役のナオミ・タマヨとエリックのガールフレンド役のミッチ・ダンテスはエキストラ程度のあつかいで、ナオミは黒人とのハーフみたい。アポロの販売実演で対象のふたりの女性のうち、メーシー・シルヴェストレのほうがかわいい。隣人役のジャネット・ダンカランと客役のカイリー・デユイトは、よくわからずに終わる。アイリーンが撮影のビキニのモデルはクリスティン・ボニファシオ、フェイツ・アルカタン、ミシェル・ガバルフィン、カミール・ブストス、ジョイ・ブストスの五名になり、ひとりがお尻にくいこんだパンティーをなおすアップを含む。
あと、アポロの過去につきあった女性たちに、幼稚園の教師役でケイ・アバド、ミス・パーフェクトと呼ぶモデル役でデニス・ラウレル、フライト・アテンダント役でジョディー・サンタマリア、格闘技のファイター役でエンジェル・ロクシンがゲスト出演のサーヴィスぶり。ジョディーが魅力的だなあ。
