ＭＵＮＴＩＫ　ＮＡＮＧ　ＭＡＡＢＯＴ　ＡＮＧ　ＬＡＮＧＩＴ
（ほとんど空までとどくくらいに）
　
95年：オクトアーツ・フィルムズ
監督：マヌエル・“フイク”・シンコ
主演：ジェニファー・メンドーサ
　　　 トントン・グチェレス
　　　 パトリック・グスマン
　　　 シャーリー・フエンテス
　　　 チャリト・ソリス
　　　 ジーン・サブリッツ
　　　 ブランド・レガスピ
　　　 マーロン・マンス
　　　 トゥルー・フェイス
　トゥルー・フェイスが歌う切ないラヴ・ソングに乗って繰り広げられる、オーソドックスな恋愛劇。手堅くまとめた印象から、可もなく不可もなしの仕上がりといえないこともないが、フィリピンっぽい部分に興味を感じる。
　ジェニファー・メンドーサ演じる女学生が主人公で、孤児だったのだが、チャリト・ソリス演じる厳格な祖母のもと、箱入りに育てられている。トゥーシー・ゲヴァラ、ウェーロウィー・タレンス（ゲヴァラ）、マイマイ・ダヴァオ、ジャッキー・バヴェルマン演じる同級生が開放的な性格で、かえってジェニファーはあこがれがつのる。夜中に抜けだし、プール・パーティーに参加。これがチャリトにバレて、髪を切る制裁を受ける。
　ジェニファーに対するチャリトの対応が愛情からの厳しさではなく、憎しみすらにじませるのは、どうしてこんな演技にしたか、かなり疑問。
　パーティーでパトリック・グスマン演じる男に酔わされ、ジェニファーは処女を捨てるが、朝帰りで二階へはしごをのぼるなど、初めてチンポが入ったあとは、マンコがヒリヒリするというから、そんなの、歩きかたからしておかしいよと思わせ、いかにもフィクション。あやうくチャリトをごまかすのも、未経験の酒を飲んでいるだけに、実際はアルコール臭がプンプンするはず。頭だってガンガンでしょ、と指摘したくなる。
　トントン・グチェレス演じる使用人がジェニファーの運転手をつとめていて、子どもの頃からジェニファーが好きだった設定。シャーリー・フエンテス演じる恋人がいたものの、身分の違いから引き裂かれた過去を持っている。自由を奪われたジェニファーの気持ちを察し、パーティーへ行くのを手伝ったため、チャリトからクビ。
　とにかく出だしはぎごちない表現が多いながら、ジェニファーを連れてトントンがマニラへ逃げ、メインのドラマへ。貧民街でいきなり野郎どもに目をつけられるも、ジェニファーが男性用シャツのみで、スカートをはいていないかっこうだから、そりゃ、挑発的よ。部屋を借りると、ジーン・サブリッツ演じる大家が、しばらく家賃を待つなど、すごくイイ人。ジェニファーが風邪で熱をだしたとき、看病のようすから二人が夫婦じゃないと知っても、事情を察して許すあたりに、駆け落ちの多い事情がうかがえるよう。先に遭遇の近所に住む野郎どもがジェニファーを襲うと、ジーンはホウキで蹴散らしていて、このおばさんパワーは女性社会のフィリピンそのものと思わせる。バランガイのパーティーでは、トントンとジェニファーをあたたかく見守っていて、ジーンのキャラクターは人間の善意をジーンと伝えてくる。
　トントンが仕事を探す過程で、ロミー・ロムロ演じるホモや、カルメラ演じる色気女性に迫られるのは、コメディー要素を導入の誇張だろうが、どことなく“らしい”なあ。結局、みつけた仕事がバーのウェイターで、水商売しかない選択肢のせまさも“らしい”。
　ついに結ばれてジェニファーが処女でないとわび、トントンが許して、しばらく続くほのぼのとした生活は、幸福ってこんなものだろう、とうかがわせるだけのもの。
　中盤にマヌエル・“フイク”・シンコ監督がうまさを発揮する。
　後半は、またぎごちなさが目立つかな。
　トントンがバーでシャーリーと、ジェニファーが勤務した花屋でパトリックと再会の二つの偶然は、さすがに無理があって、フミルデ・“ミーク”・ロハスの脚本がイマイチ。シャーリーに対して暴力的なボーイフレンドを殴って、トントンが失職。ジェニファーはオフィスの事務員に変わるも、上司からのセクハラを受けるのは、どこかの国と同じようだ。
　パトリックがジェニファーにストーカーのごとくつきまとい、ジェニファーがカフェへ逃げるや、美人ひとりの来店に男たちがカラんでくるのは、まさか、あまりにも現実から遠い描きかた。フィリピン映画には、よくこの安直なシチュエーションがでてきて、いつもあきれさせる。いったんパトリックに救われるも、そのパトリックにレイプを受け、トントンが復讐。
　トゥルー・フェイスが演奏の店でトントンがビールを飲みながら、盛りあがってくる殺意を抑えきれなくなるシーンで、なるほど人間が本気で誰かを殺したいと感じるのは、きっとこんなときじゃないか、とひしひし痛感させるムードづくりがうまい。チャリトがだした誘拐告発に応じて捜査していた警察たちがジェニファーへたどり着き、ジェニファーから「誘拐じゃない」との説明を受けて納得のとき、ちょうどトントンが帰宅。パトリックの殺害容疑と勘違いで逃げるのは、偶然をたくみに生かした作劇例。
　以上のウマヘタ半分半分のような内容から、どことなくフィリピン人のメンタルが反映している要素をかぎとれるあたりが、個人的には最大の関心点といえる。
　十年後にトントンの行方不明を待ちきれず、結婚して一児の母になっているジェニファーの前へトントンが現れ、十年間の刑に服していたことを初めてジェニファーが知るエピローグは、通俗メロ・ドラマとして十分なでき。お互いに引かれ合いながらも別れなければならない感情を、広角レンズによるジェニファーの乗る車の走り去りと、立って見送るトントンが交差のカット割りで鮮やかに表現。あえてハッピー・エンドを避けた哀愁も手伝い、逆説的な面から愛の賛歌で胸をつき刺す。
　さすがに運命の概念にふれるまではいたらなかったものの、水準レヴェルには達したと評価したい。
　ところでジェニファーのセクシーさは、そこそこの発揮で、一応、嬉しいところ。学校から帰って着がえるとき、奥にシャワー室がみえていて脱ぐぞと期待するも、スリップどまりでじらしてくれる。二階からはしごをおりるポーズで、黒いパンツ・ルックからお尻が大きいとうかがわせ、プールでワンピース水着になると、けっこう安産体型とわかるとはいえ、好みのプロポーション。パトリックにヴァージンを捧げるシーンでは、シャワーを浴びながら水着をまくられ、ハッと興奮したが、太腿までの露出。チャリトが雇ったガードマンたちがただのスケベで、ジェニファーのシャワーをのぞくや、上半身ハダカのジェニファーはうしろ姿のみ。トントンとのセックスはボディーにシーツを巻いていて、さっぱりビンビンを呼ばないものの、パトリックからのレイプでオオーッと。スカートがまくれあがって、完全にパンティーがベロッとモロだし。白いパンティーはお尻に食いこんでいて、うーん、さわってみたい。
　やっぱり美人は下着でもカッカ燃えさせるなあ。
　シャーリーはトントンとのベッドで、オッパイをずっと隠したままが惜しい。
　トゥーシー、ウェーロウィー、マイマイもワンピース水着を披露し、オマケの提供をくれる。とくにトゥーシーは現在、歌手として人気を博すだけに、若いころの貴重な映像かもしれない。余談だが、トゥーシーのジーンズをズラし、お尻の割れ目をほんの少しのぞかせて座ったり、貼りつきホット・パンツにスケ・シャツのファッションといったきわどいスティル写真には、パーフェクトに悩殺をうけた経験がある。
　なお、シャーリーの母親役でルシタ・ソリアノのクレジットが読めるも、まったくみあたらず、編集の際に出演シーンがカットになったのだろう。