ＭＵＮＴＩＫ　ＮＡ　ＫＩＴＡＮＧ　ＭＩＮＡＨＡＬ
（ほとんど愛し合っていたはず）
　
94年：セイコ・フィルムズ
監督：メル・チョングロ
主演：クローディン・バレート
　　　 イスコ・モレノ
　　　 ピンキー・デ・レオン
　　　 ロナルド・ヴァルデス
　　　 リザ・ロレナ
　　　 ラミル・ロドリゲス
　　　 エリカ・フィフェ
　　　 ジオ・アルヴァレス
　ザ・カンパニーの大ヒット・ソングにモティーフを得た青春映画。まだ十代半ばの男女の初恋による家出模様を描く。
　まずタイ航空の着陸ショットから始まり、タイ王国へいってきたのかと思いきや、ピンキー・デ・レオン演じる母がアメリカ合衆国から帰国。ロナルド・ヴァルデス演じる婚約者と一緒だったので、クローディン・バレート演じる娘を驚かせる。
　ジオ・アルヴァレス演じるロナルドの息子が「この空港は最低だ」と泥棒体質を怒っていて、コメディー的なあつかいになっているが、実際にマニラ空港の泥棒体質は今も変わらない。もっと真剣に告発したいものだ。
　チェリー・パイ・ピカチェ演じる叔母、エリカ・フィフェ演じる従姉妹たちとともにクローディンがビーチへでかけ、そこでキャンプをはるイスコ・モレノなどが演じる騒がしい若者グループと出会う。イスコのイメージが悪くてクローディンが嫌うのが、あとでカップルになるものによるドラマのパターン。
　クローディンはまだ子どもの延長みたいな年齢だし、垢抜けない容貌でさっぱり魅力薄ながら、水着になるのが嬉しい要素をくれる。でもボトムがスカート状のワンピース、ボトムにパレオを巻いたニタイプのワンピースで、腰をくびらせて座るポーズがあるのに、イマイチそそらないのが残念。むしろジオが「オレの女だ」とイスコたちにいったため、エリカがムッとするときのプロポーションやヒップラインが浮かんだワンピースのほうがセクシーでゾクッとくる。チェリー・パイは水着の上にシャツを着ていて、さっぱりラインがみえずじまい。またカミール・プラッツ演じるクローディンの幼い妹がワンピースやスパッツ型水着で戯れるのは、ロリ趣味のある人においしいかも。
　ビーチを去るとき、確かにいさかいがあったものの、イスコはすっかりクローディンにイカれ、クローディンもイスコを意識している。マニラへ戻って本格的にクローディンへアプローチしたイスコにクローディンもときめきを感じ、相思相愛の仲へ。イスコの家ではラミル・ロドリゲスとリザ・ロレナ演じる両親にとってできのよい長男が自慢のタネで、二男のイスコはコンプレックスを抱いている。クローディン宅ではピンキーとロナルドが結婚式をあげ、クローディンをアメリカへ連れていくと決めたため、クローディンと一緒にイスコがバギオへ向かうバスに乗り、駆け落ちになる。
　カロル・ラウデン演じる姉の子も入れ、まだ年少の弟たちでうるさいイスコの家庭環境が、いかにもフィリピン。学校の前までベンツで運転手が迎えにくるのが、クローディン一家のカネもちぶりを表わす。ディスコでデートしてイスコがケンカを起こし、補導されるのはどこの国も同じ。
　バギオでレスト・ハウスを営むベヴァリー・サルヴィエホ演じるアメリカに夫がいるとのおばさんをおだて、うまく泊めてもらうあたりは、ベヴァリーのコメディー・タイプをほどほどに活用している。あとでオペラのアリアを口ずさんだり、アクの強いキャラながら、ショックをうけたクローディンを母のように包んであげるやさしさを示すなど、けっこうベヴァリーは印象に残るもうけ役といえる。バギオの観光要素をはさんで、ベヴァリーに滞在費の支払いができないとわかったあと、二人はいちご園で働かせてもらい、泥まみれの日々に。ケンカがちにもなるが、眠っているクローディンにイスコがキスをしようとしたため、クローディンが傷つく。イスコはベッドの下で別々に寝かされていたものの、十六歳との設定だけに、セックスしたい気持ちはよくわかる。映画はキレイごとにすませているが、実際はチンポが勃起しっぱなしじゃないか。
　ベヴァリーから「人生には第二のチャンスがある。お母さんの人生はお母さんのものなのよ」といわれたクローディンが帰宅を決心するシーンが全体の核。ジョーイ（ホセ）・ハヴィエール・レイエスとラクエル・ヴィリアヴィセンシオの男女共同による脚本が、男の子と女の子の心理をお互いに話し合って書かれたのではないか、との推測が成り立つ。
　ラストでロサンジェルスへ出発することになったクローディンにエリカが「ケヴィン・コストゥナーやハリスン・フォードのような夫をみつけてね」と話していて、アメリカ人は自己中心的だぞ、とのアドヴァイスを与えたくなる。フィリピンへ残るジオのバカさ加減にエリカが蹴りを入れ、ジオの自分勝手ぶりはまさにアメリカ育ちなだけに、けっこう作者たちはわかってるじゃん、なんて納得したり。
　空港へ送りにきたイスコにクローディンが軽く挨拶をかわし、とりあえずはさわやかに終わる無難なでき。メル・チョングロにしてはもの足りないのが正直な感想とはいえ、こんなものかもしれない。
　ハイ・ティーン向けの青春映画だからね。
　エンド・クレジットのバックに再びクローディンとエリカの水着ショットが挿入されるも、パレオを巻いているのがつくづく惜しい。イスコが無事に帰ったのを祝うパーティーがプール・サイドなのに、水着の女性がいないのもさみしかった。