ＭＵＬＩＮＧ　ＢＵＫＳＡＮ　ＡＮＧ　ＰＵＳＯ
（心をもう一度開いて）
　
(85)年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：レロイ・サルヴァドル
主演：ヴィルマ・サントス
　　　 ディンド・フェルナンド
　　　 コニー・レイエス
　　　 ロルナ・トレンティノ
　　　 サンディー・アンドロング
　　　 ロウェル・サンチャゴ
　　　 ジミー・メレンデス
　ストレートな愛憎劇で、人間のシンプルな描きかたが薄っぺら。でも、そこがレロイ・サルヴァドルらしいといえる。ネリッサ・カブラルのフィリピノ・コミクスによる原作をオルランド・ナドレスが脚色し、毎度こんな感じだから、いかにも大衆消費作品じゃないか。
　ディンド・フェルナンド演じる優秀な医者にはコニー・レイエス演じる妻がいて、深く愛しているものの、心臓の病気をもつコニーの身体が弱くてセックスができない。たまたまサンディー・アンドロング演じる助手からヴィルマ・サントス演じる新しい看護婦の推薦をうけ、アグレッシヴな性格のヴィルマがディンドへアタックしたため、欲求不満ぎみだったディンドが誘惑に負けてヴィルマを抱く。妊娠のヴィルマを郊外の住宅に囲い、正直にコニーへ告白。ヴィルマは女の子を生むのだが、コニーもがんばってセックスにチャレンジ。なんとか妊娠をはたす。ディンドはヴィルマへ生活費を払うだけの関係になりがちで、それが不満だったヴィルマは娘の一歳の誕生パーティーでヴァンジー・ラバラン演じるディンドの家政婦からコニーが倒れて「緊急事態だ」との連絡がきたのをディンドへとりつがなかったため、ディンドが治療できず、女の赤ちゃんを産んで亡くなる。家へ押しかけて強引に同居を始めたヴィルマをディンドがかたくなに拒絶。ついにはアウグスト・ヴィクタ演じる弁護士を通じてヴィルマから娘をとりあげ、二人の赤ちゃんを連れてアメリカへと旅だっていく。
　ロウェル・サンチャゴ演じる恋人と結婚したサンディーが子どもを出産後、ジミー・メレンデス演じるロウェルの友人をヴィルマへ紹介。しばらくつき合ってみても、ヴィルマはディンドのことが忘れられない。ときが流れてディンドがロルナ・トレンティノ演じる婚約者とともに帰国。グラディス・レイエス演じる小学生くらいに成長したヴィルマの娘はロルナになつき、イヴリン・ヴァルガス演じる家政婦のはからいで会う機会をえるも、グラディスはヴィルマを嫌う。屋敷への立ち入りを禁止するディンドに対してヴィルマが強引につめより、ディンドがタクシーで逃げた拍子に交通事故を起こす。頭を強く打って一時的な記憶喪失に。
　毎日、ヴィルマが懸命な看病におよび、過労を起こしてロルナも心配するほど。ふとしたタイミングですべてを思いだすと、ヒステリックにディンドが再びヴィルマをしめだす。ヴィルマへの共感に転じたロルナがヴィルマの献身さをディンドに話し、自らはディンドを愛しながらも、アメリカへ帰っていくストーリー。
　前半はヴィルマのイヤな性格が目だち、浮気を後悔するディンドに対して同情の念を抱くながら、後半は母の気持ちを理解しないディンドの心のせまさにヴィルマへ感情移入の対象がかわり、いかにも狙った構成をうかがわせる。でもヴィルマ、ディンドともに内面描写が直線的すぎて、人物像に深みがない。
　ほんと、単細胞。
　ヴィルマと寝たあとにディンドがコニーへ花を買ってくるあたり、罪悪感のたくみな暗示で納得の反面、酒に走ったディンドの荒れかたがさわり程度なら、ヴィルマがピストルを持ちだしてくるのが余計で、マイナス要素が多い。強引なセックス要求でヴィルマにふられるジミーにも、後日談がほしかった印象。
　まあ、ロルナのあっさりした感情表現がまあまあだったかな。
　いずれにしても、とくに注目点はみあたらない。
　また、ヴィルマはディンドにのぞかせる青いワンピースとビーチでジミーとたわむれる黒いワンピースのニタイプの水着を披露のうえ、ディンドにパンティーを脱がされるかっこうでの太腿や、ディンドに迫るときの黒いブラの下着がウハウハながら、イマイチ大胆さを欠くために興奮しきれないのが残念。むしろコニーのほうがそそり、室内ライトや太陽光を浴びて薄手のスカートから脚やパンティーがスケるショットで、ディンドならずとも下半身が元気になってくる。シャワー終わりやベッドでのバス・タオルやシーツを巻いたボディーがハダカでないとわかっていても、美人だけにゾクゾク。セックスを決意でガウンの紐をほどくポーズには、もう全身をモミモミしたい欲望を抑えきれない。
　ロルナにまったく色っぽいシチュエーションを欠くのは本気に不満だし、サンディーにも水着くらいほしかったところ。
　どうやらコニーという女優の魅力を知った作品といえそうだ。