ＴＨＥ　ＭＯＵＲＮＩＮＧ　ＧＩＲＬＳ
　
06年：ティームワーク・プロダクションズ／ゼンネット・ワールド・プロダクションズ
監督：ヒル・Ｍ・ポルテス
主演：アスンタ・デ・ロッシ
　　　 グライデル・メルカド
　　　 チンチン・グチェレス
　　　 ジュリアナ・パレルモ
　　　 リッキー・ダヴァオ
　　　 コギー・ドミンゴ
　カネもちの浮気ものが死亡し、妻が三人いたために葬式が大混乱とのコメディーで、これはエマヌエル・Ｈ・ボルラザの『ＭＡＰＡＧＢＩＧＡＹ』に似たストーリー。しかも愛人の一人が映画女優との設定まで同じになる。
　家政婦とセックス中の腹上死を発端に、実は四人目の愛人がいる。正妻は第二夫人の存在に気がついているが、自分の息子が第二夫人の娘に処女をあげたとわかり、まさか兄妹がとびっくり。なんてドタバタ劇において、亡くなった夫の霊が画面にでて語りかけるありがちなアイディアで進み、ヒル・Ｍ・ポルテスにしては凡庸な内容。
　ボンボンで育ったフェルナンド（リッキー・ダヴァオ）は美人コンテストの候補者だったルピタ（グライデル・メルカド）と結婚するも、田舎で手料理を売っていた貧しいカルメン（チンチン・グチェレス）をかこう。カルメンが新興宗教にはしっていて、大げさに神へ祈れば、ルピタもワザとらしく悲しみ、そのようすをカメラマンに雇ったシャウィン（マクミール・デニソン）にヴィデオ撮影させる。ルピタの息子のラフィー（コギー・ドミンゴ）とカルメンの娘のビアンカ（クリスティン・レイエス）が寝ているのをみて二人の母が驚き、ルピタが「まだおばあちゃんになるのはイヤだ」といい、カルメンがフェルナンドの子はビアンカの兄のＪＣ（ケン・プンザラン）で、ビアンカは別の男の娘だと告白したため、ビアンカが悲しみのショックの反面、ラフィーとは兄妹じゃないからよろこびがおきるとの複雑な心境におちいる。女優のダナ（アスンタ・デ・ロッシ）がやってきて参列者へイタリア料理をふるまい、一堂の機嫌をとれば、信仰にうるさいカルメンを「シスター・ステラ・Ｌか」と皮肉る。ダナとフェルナンドがＳＭ関係だったなら、遺品のネクタイをみてルピタとダナがＳＭプレーを思いだす。フェルナンドの女好きは赤ん坊のころから祖母（デクスター・ドリア）の指示で、母（ジャンナ・ヴィクトリア）がチンポの強くなる食事を与えたためらしい。フェルナンドがマザコン、との展開において、葬式が美人コンテストになるイメージや、ダナが仕組んだニセモノの霊媒（ジョイ・ヴィアド）による降霊式、裏でルピタが指図した弁護士（ロイ・アルヴァレス）による不公平な遺言状の発表と、この手の話には定番のエピソードが続く。
　結局、家政婦のフェ（ジュリアナ・パレルモ）も愛人と判明で、フェが使用人のリチャード（パオロ・セラーノ）とできているようなのに、酔ったダナがリチャードを誘惑。双子のごとく兄とそっくりのフェルナンドの弟があらわれ、カルメンに「ときどき兄と入れかわっていた」「愛してる」という。と混乱を増しつつ、四人の女に連帯が生まれるのは、これまた『ＭＡＰＡＧＢＩＧＡＹ』と同じ。オカマのマダムＸ（オスカル・ペラト）が五人目の妻と出現のバカバカしさは意外なほどに笑えず、ヒル・Ｍ・ポルテスのコメディー・センスの貧弱さを感じる。
　マダムＸのボディーガードの五名のうち、サングラスの奥で顔のにやけているものがいるなど、細部の演技指導にも手抜きが目だつ。
　女優のセクシーさではアスンタ・デ・ロッシがオッパイのこぼれそうな赤いドレスでかがむほか、ビキニの撮影シーンで赤いセパレーツ水着を披露し、これまでの主演映画のポスターだと既発表の水着写真のコラージュをみせるも、フェルナンドとロウソクをたらし、ビンタで殴るセックスでボディーにシーツを巻き、ネクタイのＳＭでブラとショート・パンツにしか脱がず、おつきの二人の青いレディー（アン・チャン、チョナ・ゴゾン）とプールへ落ちても衣装がスケないまま。赤パンが魅力的な程度なうえ、演技的にも単純なストレートさが冴えず、これはヒル・Ｍ・ポルテスの演出のせいだろう。
　ジュリアナ・パレルモはフェルナンドが腹上死する騎乗位のセックスで、やはりボディーにシーツを巻き、膣けいれんをおこしたために担架で運ばれる間もシーツの中に隠れる。ベッドで酒を飲むときは短パンがイマイチながら、キャミソールにアイスクリームをたらし、バストの谷間をしたたるのは視線を奪うかな。瓶ごとラッパ飲みする酒がジョニー・ウォーカーの黒ラヴェルなのに、まだフィリピンでのカネもちのジョニ黒好きがうかがえる。
　チンチン・グチェレスはビアンカをつくったセックスの回想で、こちらもボディーにシーツを巻き、グライデル・メルカドはスリップで太めがわかるも、ネクタイのＳＭでガウンを着ている。ジャンナ・ヴィクトリアはフェルナンドを生む冒頭で、まったくそそるかっこうなし。クリスティン・レイエスはラフィーとのセックスが暗示のみの描写、といずれも満足にいたらず。葬式場でルピタのネックレスに反応する軽薄な女のブレンダ役は女優名が不明だが、幽霊のフェルナンドがお尻をさわるミニスカが気になる。
　まあ、色気すら盛りあがらない凡作と指摘したい。