ＭＩＳＴＥＲ　ＭＯ，ＬＯＶＥＲ　ＫＯ
（あなたの主人、私の愛人）
　
99年：クラウン・セヴン・ヴェンチャーズ
監督：ジョエル・Ｃ・ラマンガン
主演：グライデル・メルカド
　　　 エリザベト・オロペサ
　　　 エディー・グチェレス
　　　 ガーリー・エストラダ
　　　 サマンタ・ロペス
　　　 ダニー・ラモス
　お色気コメディーは映画の伝統的なジャンルの一つだが、60年代のアメリカ映画など検閲の問題もあって、シチュエーションや台詞でスケベ心をくすぐり、露出はギリギリのところで抑えていたものだ。この作品など、内容的には往年のバカバカしいお色気コメディーを踏襲しているながら、露出の大胆さに驚かされる。時代の違いといえば、それまでだが…
　主演のグライデル・メルカドという女優は、確かにかわいいものの、どちらかといえばファニー・フェイスで個性のほうが際立ち、コメディエンヌ向きである。開巻と同時に黒いランジェリー姿を披露し、おいしいボディーの持ち主でなのも明らかになる。
　彼女の役柄は社長秘書で、エディー・グチェレス演じるボスの社長とできている。社長の娘の婚約披露パーティーの席上にて、奥の部屋へ隠れると、さっそくセックスを始め、迫力あるオッパイが何も隠そうとせずに迫るのに圧倒される。このとき葉巻をオマンコに入れて遊び、周知のとおりクリントン・プレーで、アメリカ大統領のスキャンダルをギャグに使うあたりがフィリピンっぽい。
　物語はグライデルの秘書と社長の関係、彼女のことを密かに愛しているガーリー・エストラダ演じる親友との関係、性的欲求不満に悩むエリザベト・オロペサ演じる社長夫人のエピソードが平行で描かれていく。社長夫人を取りまく有閑マダムたちがセックスのことばかり話題にするのは、日本映画でも同じようなシチュエーションをみかけるので興味深い。
　セックス・シーンはコメディー・タッチに繰り広げられるものと、ムードたっぷりに描かれるものの二つに分かれる。グライデルの自宅における社長とのセックスは、タオルでオッパイを隠したりみせたりしながらダンスで登場し、おかしさとセクサーの両立を狙っている。乳房パワー全開だが、下にパンティーをはいているのが残念。でもクルーザーで航海しながら、備えつけのジェット・バスに入るシーンでは、バス・タブからあがるときにうっとりするような全裸をみせてくれる。
　グライデルのガーリーとのセックス・シーンは、たっぷりムードで展開し、濃厚なディープ・キスと愛撫が刺激的なうえ、全裸で横たわるグライデルの身体のラインに悩殺される。
　ガーリーにはグライデルとうまくいかないから、途中でサマンタ・ロペス演じる女性と結ばれるエピソードがある。海岸で水着を披露のあと、大人のムードたっぷりのセックス・シーンで、サマンタは息をのむような肢体をみせまくる。ガーリーの上に乗って腰をくねらせたポーズでの、お尻のカーヴがみごと。打って変わって二度目のセックス・シーンでは、オッパイを激しくプラプラ揺らせながら頭を窓にぶつけるユーモラスな描きかたに変わるが、やはりセックスが終わったあとにまったく隠そうという恥じらいもなく、ヴォリュームあふれる乳房を大胆に露出。ただ片方の乳房の上に刺青を入れていて、不良っぽいキャラクターをだすための小道具だろうが、個人的に刺青があると興奮をそがれてしまうので、セクシーさ半減なのが残念。刺青好きにはいいだろうが…
　社長夫人役のエリザベト・オロペサは、お尻のたるみを気にするところでスカートをまくってパンティーをみせるも、まさか年齢的にヌードにはなるまいと思っていた。それが運転手のチンポを目撃がきっかけで、運転手とコミカルなセックス・シーンを展開する。熟女のオッパイもあらわに全裸になって、やめてくれー、と思わせないところが、中年女性としてさすが。
　偶然チンポをみるシーンでは、エリザベトが勃起していると指摘すると、運転手が両手で隠して逃げていく。フィリピンではかなり爆笑を呼ぶシーンだろうが、意外と男性器への露出の寛容さもうかがえるようだ。
　もっとも映画は他にもグライデルが男性用ブリーフをはいているといったギャグがあるが、ほとんど台詞のおかしさで笑わせようとの構成で、これはタガログ語をネーティヴに話さない観客には不利。ストーリーはすったもんだの末に、ちゃんと全員が収まるべきところへ収まるという予想のつく展開だし、もう少し視覚的にみせたり、意外性がほしかったと思う。
　それでも笑いに対してどん欲なフィリピン人たちは大爆笑に違いないから、かえってフィリピン映画に高級なギャグのコメディーが生まれない原因にも思える。
　まあ、素直に楽しめば、それでいいのかもしれない。