ＭＩＧＵＥＬＩＴＯ　　ＢＡＴＡＮＧ　ＲＥＢＥＬＤＥ
（ミゲリト　反抗する子ども）
　
(84)年：ド・ワンダー・フィルムズ
監督：リノ・ブロッカ
主演：アガ・ムーラック
　　　 ニダ・ブランカ
　　　 エディー・ガルシア
　　　 グロリア・ロメロ
　　　 ベット・バウティスタ
　　　 ロナルド・ヴァルデス
　　　 ロベルト・アレヴァロ
　　　 マリオ・モンテネグロ
　　　 リク・ロドリゴ
　　　 デリア・ラゾン
　　　 リザ・ロレナ
　　　 パキト・ディアス
　　　 レイ・“ＰＪ”・アベリアーナ
　　　 グレッチェン・バレート
　　　 レニ・サントス
　　　 リト・ピメンテル
　若き日のグレッチェン・バレートが出演していると知ってみたが、リノ・ブロッカの監督作だけに、内容への期待がかかる。
　アガ・ムーラック演じる市長の息子が主人公で、アガの恋人がグレッチェン。エディー・ガルシアが父の市長を演じ、グロリア・ロメロが母。エディーはアガにあとをつがせたいと考えていて、マリオ・モンテネグロ演じるグレッチェンの父である判事、ロナルド・ヴァルデス演じる医者、リク・ロドリゴ演じるバランガイの顔役、パキト・ディアス演じる警察のチーフなどが仲間になり、利権を共有している。エディーはベット・バウティスタ演じる愛人をつくっていて、レイ・“ＰＪ”・アベリアーナ演じるベットの弟がアガのボディー・ガードをつとめている。との人間関係において、ニダ・ブランカ演じるアガの本当の母が刑務所から出所し、ドラマが起きる。ニダは自分を有罪にしたマリオや、子どもをとりあげたロナルドを訪ねたあと、らちがあかないため、リザ・ロレナ演じる隣人に相談。リザが市場でヴァンジー・ラバランとアイダ・カルモナ演じる売り子仲間のおばさんにスキャンダルを話し、アガが市長の子でないとのウワサが一気に広まり、グレッチェンからアガ本人の耳に入る。アガがグロリアに問いただすと、アガを溺愛するグロリアが耐えきれずに「ホステスの子だ」と教える。レイがこっそりとアガにニダをみせ、アガが自らの意志でニダを訪ねる。一方でニダがロベルト・アレヴァロ演じる反エディーの弁護士と会い、エディーがパキトに命じてニダを強引に逮捕とのストーリー。
　ようするに市長の一人息子が妾腹だったというだけのことで、あまりにも底が浅い構成にびっくり。リト・ピメンテル演じるエディーの手下がリザを殺し、アガの気持ちを思いやったレイがニダと一緒にアガを逃がす。それでエディーが突然、ベットを殴って銃をつきつけ、レイを脅すクライマックスなど、こんなにストレートでいいわけ、とあきれが盛りあがる。
　リノは政治家の横暴を暴く題材がやたら好きだが、エディーの単細胞ぶりはバカバカしいのひと言。わかりやすすぎる悪の設定が、ちょっとどうしようもない。
　ホント、全体的にチンタラした進めかたもあって、リノの作品とは考えにくいほど。ホセ・Ｙ・ダリサイの脚本がイマイチだったせいもあるのだろう。
　ただし、エディーが市民の結婚式にでたり、闘鶏場を仕切っていたり、ロータリー・クラブで講演したり、表向き善人づらの仮面は、さり気なく表現している。アガが「ミゲリト」との名前を呼ばれて「マイク」といいなおし、上流階級のアメリカ志向がうかがえる。ニダがホステスだったことへ軽蔑の言葉が飛びかうのは、水商売に対するさげすみの現われ。レイが外国で働きたがっているなど、フィリピン社会を反映した要素を含むあたりは興味深い。プール、ディスコ、ビリヤードといった、若者の人気の遊びかたも探れる。
　本来なら憎み合うべき立場にあるニダとグロリアが温和に会うシーンや、アガが家出で逃げてきたときのダリア・ラソン演じるグレッチェンの母の対応ぶりがまあまあよかったかな。
　それでグレッチェンはどうかだが、まだ清純なイメージが強いせいもあって、思わずキスしたいかわいらしさ。セクシーなのはベットで、エディーをマッサージしたり、銃をつきつけられる際の赤いスリップや、胸元のそそるスリップがウハウハをくれる。ホット・パンツやロング・Ｔシャツの衣装も色っぽい。ディスコにいるアガの女友だち役のレニ・サントスはボーイッシュな感じがよく、もっと出番がほしかった。

※　この作品は『ミゲリート：反逆の子』の題名で“東南アジア映画祭1992”にて上映された。