ＭＧＡ　ＰＵＳＡＮＧ　ＧＡＬＡ
（野良猫ども）
　
05年：エラスト・プロダクションズ
監督：エレン・オンケコ・マルフィリ
主演：リッキー・ダヴァオ
　　 　イルマ・アドラワン
　　　 レジー・カーリー
　　　 ローレン・ノヴェロ
　　 　アルクリス・ガルーラ
　初老のホモと中年のおばさんの、それそれのカップルを対比させながら描く奇妙なセックス・コメディー。パランカ賞を受賞したジュン・ラナの演劇台本をもとにジュン・ラナ自身とロディー・ヴェラが脚色し、エレン・オンケコ・マルフィリが監督。名前から察するに、女流演出家なのだろう。だからな、と納得できそうな表現を含むディジタル作品に仕上がっている。
　主人公のボエット（リッキー・ダヴァオ）はロマンス小説の作家で、自宅のとなりの部屋を広告代理店につとめるマルタ（イルマ・アドラワン）に貸す大家でもある。マルタは実家の母（カルメ・サンチェス）の心配をよそに、独身のままのキャリア・ウーマン。若いツバメのスティーヴ（レジー・カーリー）との情事を楽しみにし、マルタとスティーヴをボエットが自作のネタに使う。上司のマクスウェル（ココイ・パルマ）からいやらしい視線を送られ、マルタは自分が仕事の能力ではなく、マスコット的に使われているのではないかと悩む。ビールのＣＭを担当し、バーで男女が出会うシチュエーションのアイディアをスティーヴと自分におきかえてイメージする。ボエットのほうには息子のジョジョ（アルクリス・ガルーラ）がいるも、本当の親子じゃなく、引ったくりの不良だったのを引きとったらしい。印刷工場で働くドム（ローレン・ノヴェロ）と同性愛のカップル。
　物語は二組のケンカと仲直りを平行して進め、二分割画面などの手法を使う。マルタの室内に能面のデザインふうの飾りものを掛けてあったりにインテリ・タイプをうかがわせ、ボエットがネコを異常にかわいがる。そのネコがパソコンの電源を切ったため、原稿が消えたと大あわて。人気作家のクラリタ（ルビー・ルイズ）の作風へあこがれを抱くボエットに対し、出版社の社長（ジョヴェン・ヴェラスコ）が「新しい読者層を狙っているんだ」と追従を非難したり、中流階級が登場人物なのを「ターゲットじゃない。変更しろ」と打ち合わせる。マルタの企画のＣＭが完成で、ディレクター（プリンセス・オンケコ）が女性なら、スポンサーの代表（マノレット・ガルシア）も女性ながらも「女性が購買対象の商品じゃない」と却下される、などの興味深いディテールがでてくる。ちなみにＣＭの中でモデルを演じるミカエラ・アブララが、いまひとつブスっぽい。ボエットの家でドムがバロットを食っているのや、ジョジョがボエットに「パパのいうことを聞きなさい」に「ママでしょ」と返しているのがクスクス笑えるし、車の中からマルタが貧民街をながめ、妻（シグリッド・アンドレア・ベルナルド）をぶつ夫（オスカル・イェマ）がみえるのを心象風景にいかす挿入がうまい。ボエットとマルタがタバコをスパスパ吸いまくるあたりはゲーッと気持ち悪くなる。
　ついにスティーヴから別れをつきつけられ、マルタが自殺未遂をおこせば、そもそもカネ目的のドムがボエットの貯金箱を奪おうともめて、事故でジョジョが亡くなる。とのクライマックスのうえ、マルタとボエットが、それぞれスティーヴとドムを殺す幻想を語る。酔っぱらって気がつかないうちに全裸で一緒に寝る。
　ようはお互いをセックスの対象にみなかったため、精神的に結びつき、自覚のないうちに愛し合った男女というか、オカマと女の物語。確かにたくみな構成力であきずに楽しめるし、最後はボエットとジョジョの絆にホロッと感傷的なムードを含んでいる。
　マルタの部屋にバス・タブをすえるのがポイントになり、ここへ花びらをまき、入浴剤を入れて、マルタがしょっちゅう風呂につかる。いきなり冒頭からバス・タイムでガウンを脱ぐと、たくみに入浴剤のボトルでお尻が隠れるが、バストの谷間に花びらをつける。イルマ・アドラワンという年増で、さほど美人でもない女優を配しているも、なぜかヌードがおがめるかどうかに興奮が高まり、ずっと半だち状態を招く。タンク・トップやシャツで胸元をだし、ボエットにミニスカをまくられ、スリップで電話器をとれば、フロの横のトイレにしゃがんでショーツをおろす。スティーヴとセックス後にスティーヴは全裸でバンツをはくが、シーツを巻いていたり、正常位のセックスを真上からとらえてスティーヴのお尻が迫るも、ボディーが隠れている。自殺未遂で服のままバス・タブにつかれば、スティーヴを殺す幻想の設定が人魚なので、下半身をおおう衣装に幻滅と肝心のパーツがギリギリでみえないが、薬を飲んでの夢の中のシーンと、真っ裸でボエットと寝ていたのに驚くシーンは、相当にやばい。前者はスリップにパンティーをチラつかせたあと、すっぽんぽんでスティーヴと抱き合っているモロクロームのショットでお尻の割れ目がのぞく寸前。後者はくるまったシーツの中のショットがあって、太腿が迫力なうえ、シーツを奪い合ってボエットを放りだすとき、よくもまあ乳首のポロリがないものよと全視神経を集中させる。
　イルマのだし惜しみに比較して男優陣のリッキー・ダヴァオにレジー・カーリー、ローレン・ノヴェロにジプニーで知り合ってボエットに買われるコール・ボーイ役のジュスティン・デ・レオンがお尻をみせまくり、このあたりが女性監督ならではかもしれない。