ＭＥＳＳＡＧＥ　ＳＥＮＴ
　
02(03)年：レガシー・フィルムズ
監督：ホヴェン・Ｍ・タン
主演：オネミグ・ボンドク
　　　 アレッサンドラ・デ・ロッシ
　　　 ケンペー・デ・レオン
　　　 ニーナ・ロペス
　　　 グラディス・レイエス
　　　 ジェーク・ロハス
　　　 レスター・リランサン
　　　 カルミ・マルティン
　フィリピン人のメール好きは、ひょっとすると日本人以上かもしれない。通話料が高いので、メールのやりとりを優先しているとも考えられる。中流の連中になると「いちいちメールなんか送るな。直接、電話をよこせ」なんて怒鳴っているものがいたりする。それにしても、とくにメトロ・マニラなど、猫も杓子もメールに夢中状態。まだ日本のように歩きながら打ち、ちゃんと前をみてないから平気でぶつかってくるアホがいないだけましか、なんて感じるも、実は大差ないようだ。
　メール・ブームを風刺したコメディーである。ここではメールに気をとられてチキンを真っ黒焦げに焼いてしまうチア・プシット演じるメイド、カルミ・マルティン演じる母から注意されても勉強そっちのけでメールをやめないレスター・リランサンとカレン・デロス・サントス演じるロー・ティーンの兄妹をはじめ、ジプニーの乗客たち、町の掃除夫、ゴミ収集人、交通整理の警官、もの売り、バスの車掌、などなどなど、あらゆるところで仕事を放りだし半分にしてメールを打っている人たちの点描が随所に挿入される。携帯電話を狙ったひったくりも登場。ホントあきれるくらいで、あまり誇張とは思えない。
　もちろん冒頭で、グラディス・レイエス演じる女性がジェーク・ロハス演じる男性と会っているのをケンペー・デ・レオン演じるグラディスの恋人の友人が盗み撮りするエピソードから始まり、携帯電話にディジタル・カメラの機能をプラスしてみれば、たいていが犯罪まがいの行為にしか利用しない実態もでてくる。文明の利器というのは、こうも人間のモラルを低下させるのかとの証明を現代の我々は目の当たりにしているわけで、他人の迷惑をかえりみないものがいかに多いかは、日本もフィリピンも同じだといえる。
　なんて話はさておき、意図的に誤ったメール送信が引き起こすドタバタ劇ながら、あまりおかしさを伴わないから、映画自体のできはイマイチじゃないか。アレッサンドラ・デ・ロッシとニーナ・ロペス演じるルーム・メイトの女学生が主人公で、ニーナはケンペーのことが好き。アレッサンドラはジェークにあこがれ、オネミグ・ボンドク演じるレスターとカレンの兄はグラディスとつき合っているとの設定で、グラディスのいるバギオへ四人で出発。一方、グロリア・セヴィーリア演じるオネミグの祖母もルイス・ゴンザレス演じる老人の恋人を訪ねるためにバギオへ。これを追ってカルミ、レスター、カレン、チアたちもロイ・アルヴァレス演じる父とともに家を空け、ロード・ムーヴィーを展開する。グロリアがバスを乗り間違え、マニラへ戻るバスが夜中にエンコし、ロイたちの車はだんだんと故障。ついには動かなくなって、ブタの運搬車をヒッチ・ハイクするなどの流れは、とくに注目すべき点がうかがえない。
　物語の核はアレッサンドラとオネミグの間に愛が芽ばえていくロマンス要素だが、まったく型どおりというか、予定調和のハッピー・エンドまで安易な青春ものの枠にとどまっている。
　まあ、ホヴェン・Ｍ・タン監督などスタッフにすれば、メール・ブームを扱いたかっただけで、それほど深く考えていない証しだろう。いかにもお子さまランチっぽいから、軽く流しみして、ハイ、それまでよ、といった感じ。
　ところで露出控え目なタイプながら、アレッサンドラの水着姿がポスターだったので、じゃっかん色っぽい要素を期待したものの、ラストのプールにおけるシーンで、一応、ブラがタンク・トップ型になった青いセパレーツの水着を披露してくれるのが嬉しい。でも挑発的な要素を含むわけじゃなし、ニーナははみごとなオッパイを堂々丸だしにしている女優だけに、こちらへ過激なポーズをと願ったところ、二タイプのビキニがまぶしい。夢のイメージ内での赤もいいが、ラストのオレンジはけっこう胸に貼りついた三角ブラにドキドキ。ただしブラをはずすシチュエーションがないのは、やはりお子さまランチだから?!　乳首をみせないなら、ニーナをキャスティングした意味がないぞ、との気がしないでもないが…
　しょせん、ハイ、それまでよ。
　余談ながら、早くフィリピンの携帯電話と家庭回線の通話に互換性を持たせ、携帯電話と日本のパソコンの間でメールの送受信を可能にしてくれ。