ＭＡＴＩＭＢＡＮＧ　ＰＡ　ＳＡ　ＤＵＧＯ
（血の重さ）
　
95年：スター・シネマ・プロダクションズ／レフレクション・フィルムズ
監督：ホセ・Ｎ・カレオン
主演：ルディー・フェルナンデス
　　 　マーク・フェルナンデス
　　 　シャーメイン・アルナイス
　　 　アナ・ローセス
　　 　ロベルト・アレヴァロ
　　 　ベンボル・ロコ
　　 　デニス・ロルダン
　 　　ボブ・ソレル
　 　　ディック・イズラエル
　　 　レンズ・フェルナンデス
　ごくごく普通のＢ級アクションと片づけていいかもしれない。
　ルディー・フェルナンデス演じるのは、いつものように悪のあるヒーロー。レス・コルテス演じるライヴァル・グループのリーダーと犬猿の仲なのだが、レスが襲ってきたときに殺してしまう。それをレンズ・フェルナンデス演じる少年が目撃していた。レンズはデニス・ロルダン演じる警察の息子で、ルディーが「犯人だ」と証言したから刑務所送りに。レンズの役をマーク・アントニー・フェルナンデスが演じるようになって時が流れたことを示すと、ルディーが出所してくる。マークに脅しの台詞を入れるルディーは、まったくどうしょうもないヤツ。シャーメイン・アルナイス演じる美容師の恋人がいるのだが、今はクラブのママに変わっていて、シャーメインがベンボル・ロコ演じる悪徳警官の女になったことを知ると暴れまくるのだから、同情のかけらもないクズだと感じる。
　どうしてこんなにムカムカさせる人物を主人公にするのか。
　でもベンボルらの不法な拘束に抵抗してケンカしたとき、マークがベンボルの上司である父のロルダンを呼んできて、ルディーは釈放され、素直にマークに礼をいっているあたりから、ちょっと印象が変わってくる。シンタロ・ヴァルデスなどが演じる学校の不良たちにマークがボコボコにされているところをルディーが助け、実はいいヤツかもと思わせてくる。
　この印象を転換させるあたりのたくみさが、なかなかホセ・Ｎ・カレオン監督はうまいといえる。
　教会でルディーがシャーメインに接近するのをマークが手伝うなど、二人に仲間意識が芽ばえてくる展開になる。
　マークにはアナ・ローセス演じる恋人がいるのだが、カネの必要からアナはシャーメインの店のホステスに。そこへやってきたボブ・ソレル演じる顔役がアナをみそめたから、悲劇が始まる。無理やりアナをものにしようとしたボブからマークが救おうとするも、手下にはばまれる。そこへルディーが助太刀にきて、ボブを汚い水たまりに突き落とす。あの野郎どもとボブが頭にきて、実力者を怒らせてまずいぞということになり、デニスがルディーをかくまう。そしてボブにマークは自分の息子だから「手をだすな」と伝えると、ボブはデニスを殺す。
　「もう許せん」とルディーたちが立ちあがるだけだから、実に単純なストーリー。ルディーたちにはロベルト・アレヴァロ演じるリーダーがいて、みんな慕っているのに、陰でボブと通じていたとの裏事情がついている。マークがその事実に気づいてルディーに知らせると、ルディーは「バカなこというな」とマークを怒るものの、自分たちの襲撃の手の内を読まれていた不信から疑問に思ってロベルトを問いつめるや、ロベルトが「すまん」と謝る人間関係が面白い。半端もの同士の心のふれ合いというか、そんなものを感じさせる。
　ついにボブとベンボルをやっつけるクライマックスは、とどめの一撃にいたる状況設定がイマイチでパッとしないながら、シメが浪花節になる。パトカーのサイレンが響いてきて「早くずらかろう」というマークに、傷ついた「ロベルトを放っておけない」とルディーが連れていこうとする。自分はもうダメだから「お前たちはオレの分も新しい人生をおくってくれ」とルディーとマークを逃がし、ロベルトは駆けつけた警官隊の前で最後の力をふりしぼってボブの死体に何発も拳銃を発射し、すべて自分がやったことだと罪を背負う。
　こういう暗黒街の絆というか、人情ってどこの国も共通なんだなあ、との印象がもたげてきて興味深い。
　仁義とは少し違うようだが…
　まあ、可もなく不可もない犯罪ドラマといったところ。
　美人のシャーメインはルディーとのベッド・シーンが二度あり、いずれも露出不足で挑発的じゃないのが残念。バーのママの雰囲気にも、もう一つ色っぽさに欠ける。
　アナがホステスになったあと、ダンサーじゃないのがもっと不満。ステージではビキニのダンサーたちがいて、そちらに視線をとられるばかりだから、アナのビキニがみたかったなあ。
　というわけで、期待したシャーメインとアナの魅力爆弾については、まったく炸裂しないままだった。