ＭＡＳＩＫＩＰ　ＭＡＳＡＫＩＴ　ＭＡＨＡＰＤＩ
（人ごみ、痛み、突き刺すようなうずき）
　
98年：グッド・ハーヴェスト・プロダクションズ
監督：ベーン・セルヴァンテス
主演：リタ・アヴィラ
　　　 トフィー・カルマ
　　　 フリオ・ディアス
　　　 ヘーゼル・エスピノサ
　　　 ダニエル・フェルナンド
　　　 ジャクリン・ホセ
　　　 リタ・マグダレナ
　　　 アラン・パウレ
　　　 ジョエル・トーレ
　　　 ディオナベル・タマラ
　スラムの人間像を描く作品である。
　ビル建設現場から渋滞する道路などの風景のあと、貧民街へカメラが入り、シンナーを吸う子どもたちの姿などを拾っていく冒頭がうまい。
　物語は三つのグループ像を同時進行でとらえていて、まずジャクリン・ホセ演じる洗濯女の一家のエピソード。フリオ・ディアス演じる夫がリンゴを一個、黙って持ち帰ろうとしたために勤め先のマーケットをクビになる。フリオはジョエル・トーレ演じる仲間とかつて強盗した過去があり、そのときジョエルが警備員を殺したことをトラウマのように引きずっている。ディオナベル・タマラ演じる娘のため、なんとかカネを稼ごうとするもうまくいかない。ジョエルが再びやってきて、犯罪の誘いに乗ってしまうが…
　二つめはダニエル・フェルナンドとアラン・パウレ演じる墓場荒らしの話。貴金属類を副葬していると目をつけた金持ちの棺を夜中に掘り起こしたとき、激しい雨になって、ダニエルが肺炎にかかる。リタ・アヴィラ演じる妻はアランと妙な三角関係の危なさを秘めている。借金で医者を呼べず、リタの看病むなしくダニエルは悪化の一途をたどり…
　最後はリタ・マグダレナとヘーゼル・エスピノサ演じる娼婦の姉妹の対比劇。リタはストリートで脚をみせて客を拾い、その客がいちゃもんをつけてカネを払わず、ピストルを撃ってきてもひるまないほど強い女。ヘーゼルはロマンス小説を読みあさり、自分をシンデレラのようなヒロインに夢想して、いつか王子さまが現われるとの理想を抱いている。トフィー・カルマ演じる男をナンパすると、一緒に「ミンダナオへ行って両親に会わせる」というも、あっさり捨てられ…
　いずれも希望のない人たちである。
　フリオはまた盗みを決行し、ジョエルが忍びこんだ先の母親、メイドのみならず、幼い娘まで撃ち殺したから唖然。良心の呵責から逃げ遅れて警察の銃口を浴びる。
　ダニエルはうなされたすえに亡くなり、妻のリタが埋葬すると、そこには別の墓場荒らしたちの存在がみえる。
　ヘーゼルはあやしい儀式を演じたあとに自殺。娼婦のリタは悲しみを抑えながらも、相変わらずストリートに立つ。
　リアリズム・タッチで描いているため、暗さがドッと迫ってくるうえ、すべて死を迎える結末で救いがなく、けっこうしんどい内容だ。同じスラムの住人だから三つの登場人物が微妙にからんでいて、それぞれの進行における配置のバランスがよく、ジャクリンがディナベルに口ずさんだあとに挿入される主題歌の使いかたも巧みなのだが、クライマックス的な盛りあげを欠くから退屈するのも事実。
　決して貧困が人間性をゆがめる問題提起まで訴えられたとはいえず、平均点ほどのでき。惜しいなあと感じるが、ベーン・セルヴァンテス監督の無理に娯楽っぽくしなかった製作姿勢は評価したい。
　なお、リタ・マグダレナとヘーゼル・エスピノサが出演しているから、セクシーな要素に期待がかかるのはいうまでもない。リタはヘーゼルの自殺に気がつくときスリップ姿。前かがみになったかっこうでオッパイがこぼれでそうながら、いつになく大胆な露出のないままなのがアレレ。
　ヘーゼルはしっかり本領を発揮していて、最初の客とのセックスでいきなりオッパイをモロだし。上を向いているのにポコッとふくれあがった乳房がキュートなこと。トフィーを連れこんでのセックスでは騎乗位がそそり、終わって寝ているトフィーの横でロマンス小説を読む全裸のポーズが、腰のあたりのカーヴなど、あまりにもみごとなボディー・ライン。『星に願いを』を歌いながら水あびするシーンでは、横チチやお尻がドンと迫ってくる斜めうしろからとらえた素っ裸が挑発的すぎる。
　さすが、ヘーゼル。
　リタ・アヴィラはアランと抱き合うイメージや、瀕死のダニエルが描く幻影の中で半裸だが、バストの上あたりで切れていて、結局、乳首がみえずじまいなのが残念。
　余談だが、ヘーゼルが全裸で起きあがるとガウンのようにはおるのがＪＡＬのハッピで、一体どこで仕入れたの、といらぬ好奇心を刺激させられた。