ＭＡＳＡＭＡＮＧ　ＵＧＡＴ
（悪の根源）
　
03年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：ウィルフレド・ミラン
主演：エディー・ガルシア
　　 　エース・ヴェルヘル
　　 　ヴィクトル・ネリ
　　　 マイキー・アロヨ
　　　 マウイ・テーラー
　　　 アル・タンタイ
　　　 グウェン・ガルシ
　　　 ヴァンナ・ガルシア
　マウイ・テーラーがバーのダンサー役にチャレンジした作品。ほとんどのセクシー・スターが一度は演じるキャラだけに、どの程度の挑発ぶりかに期待がかかる。
　物語の内容はちょっとひねりのきいた、まずまずのもの。エディー・ガルシア演じるワルの父親が、スーザン・アフリカ演じる妻に暴行を働き、まだ幼い二人の息子を捨てて家出するのが冒頭。スーザンが亡くなり、孤児となった兄弟は生活のため、弟をある警官の車に忍びこませて別れ別れに。兄はエディー憎しで成長し、いつしかプロの殺し屋。弟は義理の父の元で麻薬シンジケートの撲滅に燃える、正義感の強い刑事との設定。そうなれば兄弟と気がつかずに対決する悲劇を迎えるんだなと容易に想像がつくも、そうなりそうでいて、ならないあたりがうまい。
　わりと早くにエース・ヴェルヘル演じる兄は弟の存在に気がつき、自分の職業の事情から名のらず、マイキー・マカパガル・アロヨ演じる弟は知らないまま。エースがアル・タンタイ演じるシンジケートのボスに雇われると、アルの取り引きの情報をこっそりマイキーにたれこむとの展開が、なるほどユニーク。アルの依頼でエースが目撃者の議員を襲撃したとき、護衛についていたマイキーの父を殺してしまうエピソードは、センティメンタルな要素を持ちこむくらいで、それほど尾を引かないあたりがイマイチかな。アルが目ざわりな警察だからとマイキー殺しをエースに頼み、その席上へアルのビジネス仲間であるエディーがやってきて、エースがエディーを父だと認識することからクライマックスへの対決を予感させる。
　それにしても映画はサブに盛りだくさんの人間関係を描いていて、よく整理しきれたものだと驚くくらい（脚本はマウイの『ＳＥＸ　ＤＲＩＶＥ』を手がけたクァーク・ヘナレスとロベルト・ケブラル）。前半はマイキーがバーを手入れした際に、ダンサーだったマウイにほれ、気の強いマウイを口説く話がメインになる。ほとんどマイキーが主人公かと思えるくらいの比重。マウイが日本人相手に睡眠薬強盗を働いたり、日本人の恋人ができて求婚されたりの部分は興味深いものの、日本人の「どうだった」「あのね」といった日本語がちょっとヘンなのは相変わらず。マウイの父がエディーの人質にとられていたとのからませかたは、さすがに無理がある。
　後半はエースが主人公の印象で、マウイを強盗から助けるときに撃たれたマイキーのため、手術の輸血を提供するなど、うまく兄弟愛を強調。エースにカー・レーサーの趣味を描いたのは、流れ的に必要がないとも思えるが、中盤にふくらみを与えている。エースにはヴァンナ・ガルシア演じるヴァイオリンを弾く盲目の娘がいて、宝物のように溺愛。ヴィクトル・ネリ演じる不良のリーダーがヴァンナにほれ、エースと一触即発に。ヴィクトルがエディーの息子だったとは、また強引なこじつけだが、こちらは不自然さよりも意外性が勝っている。ヴィクトルがヴァンナを誘拐すると、グエン・ガルシ演じるヴィクトルの恋人がエースとくっつき、一緒に殴りこむとの持っていきかたも、冷静に考えれば無茶苦茶とはいえ、まあいいんじゃないか。
　エディーがカルト教団を開いているのは、エディーの怪しさを押しだした演技もあって苦笑いを誘うイメージ。ちょうどその本部へアルが訪ねてきたときエースとグエンが襲撃に参上し、マウイの父を救出するため、マイキーも駆けつける。巧みに偶然を重ねたものよといささかあきれるうえ、マイキーのカッコつけた一人撃ちがバカっぽく、ガン・ファイトの描写はホント、ありきたりだなあとイヤになる。でもエディーとエースが向かい合って、エースがエディーを問いつめるやりとりを斜め下のアングルから手持ちカメラでパンしながらとらえたショットはサスペンスがみなぎって、ウィルフレド・ミラン監督が才気を発揮したようだ。
　エースとマイキーがどうなるかのオチもハッとうなるだけの意外性を演出し、けっこう買える。エディーのアジトを逃げだしたアルを逮捕するエピローグが全体のリズムとして浮いているのが残念なのものの、アクションよりもストーリー・テリングの面白さとして評価したい。
　それで個人的に肝心なマウイのダンサーぶりはどうかだが、カティー・モリ演じる仲間とステージに立つとき、赤い光沢ビキニだからウハウハ。お尻をフリフリするポーズにカチンカチン状態を招くも、ブラはずしをバックからしか撮っていないのが不満。カティーのピンク・ビキニがそそるとはいえ、左右にいるおそらく本物のダンサーのほうが、右側に光沢の食いこみパンティー、左側に紐一本のＴバックという大胆な水着なので、かえって視線を奪うくらいで、マウイの魅力を生かしきっていないのが惜しい。二回目のステージはさらに衣装の露出がイマイチだし、睡眠薬強盗のシーンでは白いブラのみで、ボトムがミニスカのまま。マイキーと恋仲になったあとの海岸デートで、黄色いビキニがキュートなものの、オッパイの丸みえはなく、興奮しきれないままに終わっている。
　マウイのはずれ分を補ってくれたのが、マウイとともにＶＩＶＡホット・ベーブスのメンバーであるグエン。ヴィクトルとのベッドでは黒い下着までだが、エースを誘惑するシーンがみごと。全裸で横乳を披露したあと、騎乗位のセックスになってオッパイをドバッと迫ってくる。下半身にフィットしたジーンズのヘソだしルックでショット・ガンをぶっ放す姿もカッコよく、やや容貌が平坦とはいえ、グエンに投げキスを送りたい。
　ほかにエディーが薬草を塗って治療する信者の女性がオッパイをモロみせ状態で、かなりの美乳にうっとり。ヴァンナが色っぽいシチュエーション皆無とはいえ、清楚なかわいさぶりでドキドキさせる。眼科の女医を演じたカレン・オハラも、美人の部類に入るかな。エディーの後妻役のアリシア・レーンは、太ったオバサンになったものよとあきれるのみ。
　なおヴィクトルと対立する不良グループのリーダーをエミリオ・ガルシアが演じているが、クレジットに表記がなく、特別出演のようだ。