ＭＡＲＫＡＤＯＮＧ　ＨＵＤＡＳ
（裏切りユダの烙印を押されたもの）
　
94年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：エディー・ロドリゲス
主演：セザール・モンタノ
　　 　ディーナ・ボネヴィー
　　 　ジュン・アリストレナス
　　 　ダニエル・フェルナンド
　　 　テレサ・ロイサガ
　　 　ディック・イズラエル
　　 　ベルティン・ラブラ
　　　 チンチン・ロドリゲス
　いわゆる典型的ないい加減アクションながら、女優の魅力でみせる。
　セザール・モンタノが主人公を演じ、ジュン・アリストレナスがボスを演じるシンジケートの雇われ殺し屋。チンチン・ロドリゲス演じる幼い娘が不治の病で、その治療費をかせぐために仕事を実行している。ディーナ・ボネヴィー演じるジュンの娘が外国から帰り、セザールがディーナのボディー・ガードを命じられる設定。セザールのごう慢な態度をディーナが嫌うも、チンチンへの父親の愛を知ってイメージが変わり、妻を亡くしたセザールとの間にロマンスが生まれるわけである。
　フィリップ・ガンボア演じる裏切り悪徳警官や、ジョニー・ヴィカール演じる対立組織のヘッドを鮮やかに始末で信頼が厚く、ディーナのクビ要請に「彼は必要な男だ」とジュンが説明する人物だったものの、マルコ・ポロ・ガルシアとホセ・モンタノがリーダーを演じるジャマなグループを壊滅のあと、不覚にもマンジョー・デル・ムンド演じる警官につかまる。マンジョーがジュンの配下で、エルニー・サラテ演じる上司もジュンの息がかかっていたため、ことなきをえるが、ディック・イズラエル演じるジュンの右腕にドジを責められ対立。ダニエル・フェルナンド演じる正義の警官と取り引きして情報を与えたため、ジュンがディックにセザールの生けどりを指示する。セザールをかくまったテレサ・ロイサガ演じるダンサーの愛人やベルティン・ラブラ演じるセザールの叔父が殺され、逃走の疲労でチンチンも亡くなり、セザールがディーナの誘拐で逆襲に転じる。
　つかまったセザールの脱出方法が安易なら、ベルティンからジュンがワルだと教えられたディーナの反応が不自然。セザールがダニエルに居場所を連絡し、ダニエルのメモを盗みみたマンジョーがジュンに連絡で、警察のほうがセザールの隠れ場所へ遅れて到着がおマヌケ。
　ホント、いい加減。
　カルロ・Ｊ・カパラスのストーリーにもとづくヘンリー・Ｐ・ナドンとエディー・ロドリゲスの脚本が、ほとんど頭をつかったと思えない。とくにあきれがとまらないのは、ジュンの部下たちが一緒に動くセザールとディーナに射撃する描写にとどめをさし、弾丸が当たらないこと自体からしてご都合主義なうえ、もし当たったらディーナが蜂の巣確実なだけに、一体ジュンは娘を助けにきたのか、殺しにきたのか、どっちなんだ。
　エディーの演出がドッチラケをとおりこす。
　最初の殺しを準備しながらセザールがカンツォーネを歌うキャラクターづけは一回のみで持続性を欠き、単なる思いつき。ウォークマンを耳からはずさず、ディーナにヒンシュクを買うのは共感ながら、やはりあとへつながらない。拷問を受けたセザールの顔に傷がつき、十字を切った形なのがカトリックぽいも、いささかワザとらしい。ダニエルが犯人を射殺する非情さの生かしかたにいたっては、まったくゼロじゃないか。
　また、暗殺のときにセザールがカッコつけまくるのがアホらしいばかりだし、ディックの人物像は狂人寸前。いやはや、アブノーマルなふるまいがスゴみだとでも考えているのか、極端さに落胆が倍々ゲーム状態を招く。
　まあ、日本映画でも東映のヤクザものなど、どれもセリフまわし、表情のつくり、細かい行動の一切合切がワン・パターンで、ヤクザ以外の人物にまで似たような演技をさせるからあきれるのみなのに、そういう内容へ違和感をおぼえない観客どころか、評論家までいる事実を考えれば、ヒーローのくだらない気どりや悪役の精神異常者ぶりに対し、フィリピンの観客は納得していると推測可能かもしれない。ほかにも多くの作品でカッコつけバカ・ヒーローや狂人的犯罪者をうんざりするくらいにみかける指摘もあり、フィリピン人の精神構造にかかわっているのか、とも疑ってしまう。
　いずれにしても低レヴェル。
　もっとも冒頭にふれたように、ディーナとテレサという大好きな二人の女優の魅力がウハウハの要素をくれる。ディーナはビーチでビキニの水着になってヴォリュームたっぷりのボディーを披露。ハッとかたずをのむほどの迫力で視線を奪う。エンド・クレジットのバックにはワンピース水着もでてきて、美人だけにチュッチュしたい。銃撃戦の最中にオシッコが我慢できなくなり、隠れてようをたすときにパンティーをおろした下半身をおがみたかったが、それは無理というもの。テレサはさらに素晴らしく、店のステージで踊り、光沢ビキニの衣装がゾクゾクとそそる。たまたま日本人の客ときていたビーチではち合わせ、ディーナの嫉妬を誘うシーンは大胆なハイレグ紐ビキニ。小さめのオッパイがつくる谷間がキュートでブラをはぎとりたいばかりか、股間のあたりは切れこみの激しさにカッカ興奮を呼ぶ。お尻を半分ほどしかくるんでいないパンティーからは左右の肉がハミでて、歩くたびにキュッキュッとヒップラインが浮きあがる。フィリピーナにしてはめずらしく短足とわかるながら、ただですら色っぽいのに、恐ろしいまでのフェロモン攻撃にヘロヘロ。
　あと、マルコのカジノを襲ったセザールに拳法で蹴りを入れる黒づくめの女が、ワン・ポイントとして精彩を放つ。
　まったく女優さえ輝いていれば満足なわけで、自分の鑑賞姿勢も相当に低レヴェルなようだ。