ＭＡＮＣＨＩＣＨＩＲＩＴＣＨＩＴ
　
93年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：ベン・フェレオ
主演：マリセル・ソリアノ
　　 　アンドルー・Ｅ
　　 　アンジャネット・アバヤリ
　　 　スモーキー・マナロト
　　　 デール・ヴィリアール
　　 　ルビー・ロドリゲス
　　　 ドンナ・クルース
　　 　ジゼル・サンチェス
　　　 ジョニー・ウィルソン
　　　 ハイメ・ファブレガス
　ぬるいコメディーとでも表現しようか。
　題名になっている意味なし言葉によるラップの主題歌に乗って、サウジ・アラビアへ出稼ぎに行くためのエージェントに会うべくマニラへとやってきたアンドルー・Ｅ演じる田舎っぺが、マリセル・ソリアノ演じるケチな詐欺女とからむまでが前半。『天才バカボン』に登場する本官さんのように空へ向けて発砲する警官がスーパーマンを撃ち落してしまうといったナンセンス・ギャグが散りばめられているが、イマイチ爆笑できない。
　またスモーキー・マナロトとデール・ヴィリアール演じる子分を従えたマリセルのアクの強さが、笑いというよりは、むしろうんざり感を誘うありさまで、出だしからイヤになる。
　アンドルーがマリセルらの仲間に加わって、一緒に詐欺をするようになったときに、たまたまジョニー・ウィルソン演じるシンジケートのボスを、ハイメ・ファブレガス演じる別のシンジケートのボスたち一味が狙撃しようとしたのを偶然の行為の積み重ねで救うあたりから本筋に入る。ジョニーに感謝されて御殿のような屋敷へ招かれ、食事のマナーがわからずにずっこけるギャグなど、またつまらない展開が続くが、そこにもハイメのさしがねがきて、再び偶然の行為の積み重ねでやっつけるあたりはコメディーの定番的な構成ながらも、そこそこおかしい。
　ジョニーが撃たれて亡くなり、アンジャネット・アバヤリとドンナ・クルース演じる二人の孫が、マリセルらと同行して逃げる設定が続くと、それぞれがスモーキーとデールの恋人になるんだな、と簡単に予想がつく。
　映画は美人のＡＪまでコメディー・リリーフとして扱っているのはよいのだが、空腹で動けなくなってマリセルらがダダをこね、アンドルーがスーパーへ食料品を盗みに行くエピソードで、感電したのを警備員が宇宙人と勘違いするギャグはまずまずなものの、この人たちは努力とか我慢という意味を知らないのか、とムカムカするだけの印象を与える。またフィリピン社会とは、そういう厳しさのある要素の必要性を主張しないのか、とあきれるばかり。いくら安易なコメディーとはいえ、寛容の許容範囲を超えていると感じる。
　まったく甘えた悪党たちだ、とうんざり。
　この直後にアンドルーがマリセルに対してアダムとイヴの幻想を抱くミュージカルっぽいシーンが置かれるも、ムカムカ感を引きずったままなのでさっぱり楽しめない。
　映画はハイメ一味から逃げてマリセルたちが孤児院へ入ると、今度は尼僧たちから子どもの世話を頼まれ、アンドルーが小さな女の子を相手にしていて、その子が「将来はアナ・ローセスのようにセクシーになりたい」というところで、さすがにちょっと笑いが起きる。子役の力は大きいようだ。
　ＡＪが祖父から渡されたペンダントの中からお宝のありかを示す地図を発見し、それを探しだした先でハイメたちに襲われるシーンがきてクライマックスへと入る。車でのチェイスとなり、ボンネットにマリセルとアンドルーが乗ったままの爆走は、けっこうスタントが頑張っているじゃないかと感心。ルビー・ロドリゲス演じる尼僧が運転する光景がおかしいこともあって、ここはベン・フェレオ監督の力量を評価したい。確かに欲をいえばピーター・ボグダノヴィッチの『おかしなおかしな大追跡』などにほど遠いのは事実だが、そんなに高望みはするまい。
　結局、お宝を孤児院に寄付するという、自己中心的でしかなかったマリセルらが善を行うラストとなり、うーん、何かぬるいなー、という感想しか残らなくないところ。
　かなりのパンチ力不足。
　おそらくマリセルの魅力がうまく発揮されていないことが原因の一つだろうが、歌手でもあるドンナ・クルースにもパッとした見せ場がなく、もっと考えてくれよと不満タラタラ。ただＡＪはさすがで、最初の登場シーンからして、豪邸のプールで泳いでいて、みごとなハイレグ・ビキニ。あの絶品のくびれをお約束でおがませてくれる。しかもプールからあがるときの俯瞰のアップや、バス・タオルで体をふくときにわざと前かがみになって、胸の谷間をこれでもかと強調するので、もーう、たまりません。ＡＪに熱ーーいキッスを…
　それと尼僧役でジゼル・サンチェスとアラ・ミナが出演していて、ジゼルなど出番が少なくて残念。アラは端役時代だから、とにかく顔をみられるだけで素敵。
　まあ元々のきっかけはといえば、大ファンであるアラが本当にでているのかを確かめたくてみただけの作品なのだが、エンド・クレジットにはアラ・ミナ・レイエスと表記されている。アラの本名はヘーゼル・レイエスだから、なるほどとヘンに納得。もっとも最近に資料によるとアラの生年月日は１９７９年５月９日と書かれているから、だとこの映画のときは14歳か15歳ということになるではないか、との疑惑が巻き起こってくる。まさか、そんなわけがないので、年齢をごまかしてるのかなあ…
　アラって本当はいくつなんだろう、と考えると夜も眠れなくなりそうだ。