ＭＡＮＡＹ　ＰＯ！
（オカマ言葉の母への尊敬）
　
06年：リーガル・エンターテインメント
監督：ジョエル・Ｃ・ラマンガン
主演：チェリー・パイ・ピカチェ
　　　 ジョン・プラッツ
　　　 ポロ・ラヴァレス
　　　 ジロ・マニオ
　　　 クリスチャン・ヴァスケス
　　　 ルイス・アランディー
　　　 マイク・タン
　　　 ＬＪ・レイエス
　　　 グライサ・デ・カストロ
　オカマを主題にとったコメディーであり、オカマの監督のジョエル・Ｃ・ラマンガンらしく、アクが強い中にも手堅い構成でまとめる。
　ゲリラと国軍が戦う田舎で、避難する村人の中に身重のルス（チェリー・パイ・ピカチェ）がいて、ゲリラに「妊娠してるから、助けて」と訴えるも「オカマだろう」といわれたため、とっさにキレて国軍兵のジョナタン（アラン・パウレ）の銃を奪い、乱射でゲリラを全滅させるのが冒頭。長男のオスカーを生み、二人目の父のはずのジョナタンが花嫁（マルー・クリソロゴ）をめとったので失恋の直後、結婚式場にいたマルコ（ベアウィン・メイリー＝カメオ）と突然に意気投合し、三人目を妊娠なのに、マルコが殺される。マニラへでて、たまたま屋敷をクビになったマリテス（ジゼル・サンチェス）と出会って家政婦にやとい、自分はインド商人相手にビジネスで成功までのプロローグが快調に語られる。メインは息子の成長後で、長男のオスカー（ポロ・ラヴァレス）は念願どおりにエンジニアなうえ、大学の同級生だった恋人のポーリン（グライサ・デ・カストロ）と婚約を前提に交際。二男のオルソン（ジョン・プラッツ）は完全にオカマなのを隠さず、大学にホモの恋人のマーキー（マイク・タン）がいる。それで三男のオルウェル（ジロ・マニオ）がオカマにならないかとルスが心配し、オスカーのように「女性のパートナーをつくりなさい」といい、オルウェルは学校でオカマとからかった同級生のロビン（テオ・ベルナドス）と殴り合いのケンカをする。実は家で男らしくふるまうも、オスカーが陰でホモの恋人のアドリアン（ルイス・アランディー）とできているのを誰も知らない。ルスは映画のロケ現場をやじうまでみたとき、やられ役の三文役者のジェリー（クリスチャン・ヴァスケス）と目が合い、またも意気投合で一緒に住むようになる。との家族の構図において、宝石商のアナベル（エンカル・ベネディクト）から七百万ペソの宝石をみせてもらい、すべって下へ落としたりにずっこけていたルスだが、ジェリーがボディー・ガードでかせいだカネを頭金にそこそこの値段のを買い、リッチな気分でルンルンに歩いていた夜道、強盗（ジョン・ロマノ）に宝石を奪われ、ニ百万ペソの借金をしょいこむ。車のディーラーの友人であるアルフレッド（モン・コンフィアド）にジェリーが援助を頼んでもうまくいかず、このピンチをルスが隠しつつ、息子たちはオルソンが仲間のチェル（チャールズ・クリステャン）やフリーダ（ＩＣ・メンドーサ）とともにミス・ゲイ・ユニヴァーシティーのコンテストへの出場をきめるも、マーキーが女性のガールフレンドのジーナ（ＬＪ・レイエス）をつくったのでもめる。ロビンの両親（ボン・メンドーサ、マエッタ・ジェネラル）まででてきたケンカのあと、オルウェルがロビンと親友になり、いつしか手をつなぐ関係に。ポーリンとの結婚話が具体化でアドリアンが冷たい対応にかわり、友人のゲイ・カップルのロウェット（ジム・ペバンコ）とロウィン（ジュスティン・デ・レオン）が結婚式をあげたのをきっかけに、オスカーがアドリアンへプロポーズ。それがバレてポーリンがオスカーをののしる。と全員がホモ恋愛の発展に悩む。オルソンがすね毛をそるのをオルウェルがながめ、まねごとにカミソリをもったのをみてルスが驚く。ジェリーがパンツ一丁で家にいたため、息子の三人ともがハッと息をのむ。オスカーに殴られて目のまわりがはれ、「キレイな顔が」とショックのオルソンが「家庭内暴力よ」という。ロビンと一緒に売春宿へ入ったオルウェルがおばさんばかりの、さながら化けもの屋敷なのに怖くなり、マネージャー（イダ・プマレホス）に声をかけられておびえ、警察の手入れがきたらオシッコをもらす。ロウェットとロウィンの結婚パーティーで、ウェディング・ケーキを模した箱からダンサーがでてくる、フィリピンでちょくちょくみる余興での海パン一丁のダンサーがジェリーだったため、オルカーとはち合わせにアレレ。とのシチュエーションで笑わせる。アナベルのメイド（セシル・マグカミット）が宝石をつけまくっていたり、強盗が銃をだしたのでジェリーが口に泡をふいて倒れ、まったく頼りにならないなどの細部のギャグや、三人の息子たちが女装で歌って踊るミュージカル的なシーンが盛りこまれる。ルスの家がコロニアル様式なインテリアのほか、オルウェルとロビンのケンカがフィリピンでは人気のないサッカーの練習中といった興味をそそる要素もうかがえる。オルソンがオスカーに「チャロ・サントス・コンチョなの」と名前をだすあたりは、リーガルの総帥の“マザー・リリー”こと、リリー・Ｙ・モンテヴェルデ自身が脚本のディンノ・エレセとともにストーリーに参加のリーガル作品にあって、スター・シネマのエグゼクティヴ・プロデューサーを皮肉る余裕なのか、楽屋落ちなのか。
　結局は副業で貯めた結婚資金のニ百万ペソをオスカーがルスにあげて経済的なピンチを切りぬけ、オスカーがアドリアンと質素な同性結婚。ロウェットが司会のマザー・オブ・ザ・イヤ−のイベントにルスが選ばれ、マーキーと仲直りのオルソンがミス・ゲイ・ユニバーシティーに優勝とのこじんまりおさまった印象。オルウェルとロビンが、こっそり男性ヌード雑誌をながめるオチがつき、ポーリン以外はハッピー・エンドで、カップル同士がダンスし、相手のいないマリテスだけがひとり両腕で抱っこのマネで踊る。ジョエル・Ｃ・ラマンガンにしては、肩の力をぬいた軽いのりでつくったお遊び作に思える。それなりに愉快だから、さすがのテクニックと評価できる。
　チェリー・パイ・ピカチェの演技は、いまさら称賛の必要もないだろうが、太った体型を青パンでくるみ、下半身の誘惑がまだ女を感じさせる。シーツにくるまってジェリーとのセックスもでてくる。中年になっても色っぽいコメディエンヌのジゼル・サンチェスは、メイド服のシャツからバストの谷間をのぞかせ、ルスが倒れたのに「また妊娠なの」とあわてるときのローライズの衣装が視線を奪う。ビーチのシーンでビキニの女性が歩くも、キュートなグライサ・デ・カストロがタンクトップに短パンなのは、せめて水着のブラぐらいみせてほしかったところ。オルソンの美術の授業でうしろを向いたヌード・モデルがいるが、演じるのがルーイー・アンダーソンらしく、同年の『ＳＵＫＯＢ』で顔がわかり、なかなかかわいいだけに、正面をうつさなくて残念だった。