ＭＡＮＡＮＡＹＡＷ
（プロのダンサー）
　
97年：フォー・エイセス・フィルムズ
監督：セルソ・ＡＤ・カスティーリオ
主演：リタ・マグダレナ
　　　 エディー・グチェレス
　　　 エミリオ・ガルシア
　　　 ロイ・ロドリゴ
　　　 クリセルダ・ヴォルクス
　　　 アンジー・フェロ
　　　 ロミー・ディアス
　　　 トニー・カレオン
　　　 ローランド・ティニオ
　　　 ルー・ヴェロソ
　始まると同時、タイトル・バックにセクシーな黒いＴバック水着で妖艶に踊るリタ・マグダレナが登場。そうか、これはリタをみるための映画なんだと納得させられる。リタの役柄はディスコ・パブのダンサーで、かつ不良青年の情婦。自らもちょっと不良っぽい顔だちに、豊満な乳房とみごとにくびれたボディーの持ち主だから、まさにぴったりの役どころといえる。
　物語はエミリオ・ガルシア扮する不良青年がギャングのシンジケートから逃れるため、エディー・グチェレス扮する金持ちの兄の家にリタを連れて転がりこむことから動きだす。兄は下半身不髄で車椅子生活をおくっていて、その身のまわりの世話のためにクリセルダ・ヴォルクス扮する若い女性が雇われている。映画はリタの独壇場になるかと思いきや、彼女とクリセルダのセクシー合戦で展開してゆく。決して飛びきりの美人とはいえないが、あか抜けていて大人の色気を振りまくリタに対し、まだ子どもぽい印象で洗練されていないものの、妙に男を引きつける要素を持ち、幼い顔だちとはアンバランスな迫力のある乳房のクリセルダ。この二人の好対照ぶりがドラマを盛りあげる。
　映画はほとんどがエディーの屋敷の中で繰り広げられ、三角関係、四角関係になりそうな様相をていしながら、異様な愛欲ドラマが展開。全裸で寝ているリタを建設作業員たちがのぞこうとするコメディー的なシーンがあるが、大体は重い雰囲気に覆われている。
　車椅子のエディーは保守的な人物で、クリセルダが男とイチャつくところをみかけると大激怒。エミリオがリタを連れて帰ってくるや、二人がベッドでもだえる声が聞こえてくれば、神に｢悪霊を払いたまえ｣ と祈りをささげる。そのくせ実際は欲求不満なので、クリセルダの胸元に谷間がのぞくのに、ついつい視線をやってしまう。
　女性の悪魔性のようなものを映画は描こうと狙っているごとく、全編に何度もセクシーな下着で動きまわり、エディーの前でブラをはずして彼の手を乳房に押しつけると｢遠慮せずにさわったらどうなの」と大声でまくしたてるリタは、だれがみても決して上品ではない。反対に口数少ないながらも、車椅子の主人を表情一つ変えずに裸にし、入浴させるクリセルダのほうに悪魔的要素を感じとる。ついに我慢できなくなった主人に強要され、フェラチオでエディーが快感の吐息をもらすシーンなど、クリセルダが幼顔であるだけに妙な怖さが漂ってくる。
　物語はエミリオに愛想が尽きたリタが屋敷をでて再びダンサーに戻り、そこへエミリオが追いかけてきたため、リタがギャングたちから脅されてエミリオの居所を教えてしまう。エディーの屋敷へギャング団が押しかけてくるとハデな銃撃戦が繰り広げられ、エディーは死亡、今度はエミリオが下半身不髄になるという皮肉な結幕をむかえる。クリセルダは屋敷を去り、リタはエミリオの元へ返ってくる。
　ラスト近く、外の街頭を歩くシーンで、主人を失って自由になったという喜びのような表情をみせるクリセルダは、確かに女性の悪魔性のいったんをうかがわせる。それほど魅力の乏しいクリセルダ・ヴォルクスという女優が、天下のリタ・マグダレナと競演でより強い印象を残したのだから、考えてみればたいしたもの。これはリタとクリセルダの個性を使い分けたセルソ・ＡＤ・カスティーリオ監督の手腕でもあるだろう。
　もっともセルソ監督は全編を無難にまとめてはいるけど、語り口が凡庸であり、映像感覚的にもシャープな要素を感じさせない。リタは存在感でクリセルダに負けているとはいえ、エミリオにジーンズを脱がされてＴバック下着が露出し、それも脱がされて全裸になるベッド・シーンで、セクシー・スターらしい貫禄をみせる。まさに面目躍如だろう。