ＭＡＮＡＮＡＢＡＳ
（斬殺）
　
01年：マヴェリック・フィルムズ
監督：セザール・モンタノ
主演：セザール・モンタノ
　　　 ロンメル・モンタノ
　　　 ジョセフィン・カノニサド
　　　 ダニエル・フェルナンド
　　　 スパンキー・マニカン
　セザール・モンタノが共同脚本とライン・プロデューサー、および監督を兼任した作品であり、実際『ＢＵＬＬＥＴ』に比べるとかなり演出力がついている。ハードな男性アクションで、前半はけっこうみせてくれる。
　ジャングルに潜む集団ゲリラの物語になり、セザール演じるのがリーダー。彼らの退治にやってきた軍隊を、ジェフリー・タン演じる同行のカメラマンをのぞき、非情にも皆殺しにする。
　よくシチュエーションを紹介しないままにストーリーを進めるやりかたが不気味感をかきたて、ゾクゾクさせる印象。次第に彼らの正体がわかる構成をとる。反政府組織と戦うために囚人から攻撃隊員を集め、特殊部隊を組織。かなりの戦果をあげたのだが、この違法な作戦にマスコミが勘づいた。それで刑期や前科を帳消しとの約束を反故にし、軍隊が彼らを排除しようとした。
　討伐軍を全滅で生きのびたあと、三年間、奥地にいたゲリラながら、実は彼らにも内部対立の存在が明らかになる。山岳民族が結婚式を行っているとき、花婿が軍人だったせいもあって、ロンメル・モンタノ演じる副リーダーに率いられて襲い、村を焼き討ちにする。そしてミンナ・ベルナレス演じる逃亡した花嫁を追いつめるや、あまりの残虐行為にセザールが彼らをとめる。ロンメルとセザールの決闘になり、ミンナの首が飛んで勝負がおあずけの描写は、けっこうショッキング。
　一方、ジェフリーがゲリラのことをスパンキー・マニカン演じる将軍に報告し、メガネをかけたひ弱いタイプのコメディー・キャラであるジェフリーが「ランボーみたいだ」と騒いでいるのが面白い。ジョー・カノニサド演じるスパンキーの名づけ子が女性ニュース・キャスターで、ジェフリーの案内によってジャングルへと取材に行く。ミス・アジア・パシフィックのフィリピン代表だったジョーは、さすがにキュートで、あとのセクシー・シーンに期待がかかる。
　山岳民族の虐殺現場に驚くヒマもなく、アッという間にロンメルたちの人質になり、ジョーが討伐隊を編成した将軍の名づけ子なうえ、ケヴィン・メーヤー演じる大金持ちの娘とわかり、ロンメルたちが一千万ペソの身代金を要求。
　セザールはかつてこの特殊部隊を発案したボン・ヴィバル演じる将軍のもとを訪ね、そこへスパンキーやケヴィンからのジョー救出依頼がきて、軍へ不信感を抱くセザールは納得のいく承諾理由がみつからずに悩むわけである。
　と前半はゲリラの殺気を含むサスペンスの描写が秀逸。もやの中から一団がヌッとでてきたり、黒を基調におく撮影の重さも手伝って、なかなかの表現。セザール監督、やるじゃないかとかと感心なのだが、後半はさすがに緊張感を維持できなくなる。
　セザールにはニコル・ホフェル演じる妻を亡くしたなどの過去があり、これが枷となって勇気を奪われているという性格づけは、それほど生かされていない。むしろ追いつめられて崖から落ちるとき、妻の回想が入るあたりの時間経過など陳腐。
　スパンキーとケヴィンがカネを持ってロンメルに会うや、ゲリラたちと交戦になり、スパンキーは軍人としての責任をはたすといいきっていたし、ボンも同行していて将軍が二人もいるのに、軍隊があっさりやられるのが説得力を欠く。ボンがカネを紙クズとすり替えていた事実はあとへつながらず、ダニエル・フェルナンド演じるジョーにホレていた大佐が戦死の展開も、中途半端な人物にしか思えない。
　さすがに貧弱な体にニセモノの刺青を入れたジェフリーがロンメルの元へ危なっかしく刀を振りまわしながらやってきて、大爆笑になったロンメルたちがジェフリーにジョーを渡してやり、捕獲ゲームを楽しもうとするあたりは納得できるが、セザールの助太刀でしとめ逃がすあとのクライマックスがイマイチ。いったん簡単にセザールがロンメルを銃で倒すショットがあり、なぜか生きていて剣での対決になるとの、混乱を起こすようなこけおどしの挿入はやめてほしいもの。斬り合いから撃ち合いに変わるタイミングも、ここというツボをはずしている。さらにバンバンと車が爆発でハデさをプラスながら、むなしいばかりで、見せ場というのは物量ではなく、映像の流れをつかんだ呼吸なんだなあ、と再確認の次第。
　残念だけど、盛りあげの頂点をどこへ置けばよいのか、しっかり意識できていないセザールの演出だった。
　なお、楽しみにしていたジョーの濡れ場だが、ロンメルたちにレイプされ、パンツのジッパーをおろされるも、その先の露出がなくアレレ。セザールに助けられたあとにシャワーを浴びるシーンでは、鏡ごしにシャツを脱いで上半身裸が映り、ドキドキなのに、うしろ姿のみ。水が全身から血を洗い流すとき、太腿のアップがあるのはウハウハなものの、最後まで肝心のパーツはみえずじまい。オイオイオイと不満の連続。
　でもスタイルがバツグンのジョーのボディーは、なかなかビンビンに挑発をくれた。