ＭＡＬＩＫＭＡＴＡ
（変容）
　
03年：カナリー・フィルムズ
監督：ホセ・ハヴィエール・レイエス
主演：リカ・ペラレホ
　　　 マーヴィン・アグスティン
　　　 ディンドン・ダンテス
　　　 リッキー・ダヴァオ
　　 　アナ・カプリ
　　 　バルバラ・ペレス
　　 　ニッキ・ヴァルデス
　　　 ウォーウィー・デ・グスマン
　　　 ユージン・ドミンゴ
　　　 シンタロ・ヴァルデス
　　　 マデリン・ニコラス
　予知能力を持つ女性のサスペンス劇。ホラーかと予想したのだが、犯人探しの犯罪ドラマだった。
　少女時代に父親の死を察知する冒頭や、家のお手伝いさんがケガするのを感じとる能力から、未来がどうなるかではなく、ちょっと先の出来事に対する声や映像を受けているとわかる。リカ・ペラレホが主人公を演じ、両親が亡くなったあとにマデリン・ニコラス演じる叔母と同居。バルバラ・ペレス演じる女主人が殺された現場をマデリンが発見したため、リカが事件に巻きこまれていく。
　同時に犠牲となったアナ・カプリ演じる家政婦の亡霊がリカの前にでて、周囲の通行人がアナのボディーをすり抜けていき、どこかホラーっぽいのだが…
　バルバラの葬式にリッキー・ダヴァオ演じるごう慢な雰囲気の甥と、ジャッキー・カスティレホ演じるどん欲そうなその妻、マーヴィン・アグスティン演じる誠実ふうの孫と、裏のある性格をうかがわせるシンタロ・ヴァルデス演じる弁護士、バルバラの財産を把握しているルイ・マナンサラ演じる女計理士などのあやしい人物がからみ、まずウォーウィー・デ・グスマン演じるアナの恋人が逮捕される。との展開でコンピューター・ショップに勤務のリカがディンドン・ダンテス演じる同僚と一緒にマーヴィンと会い、真犯人をつきとめるストーリー。
　リカたちがアナを呼びだす降霊祭の儀式もでてきて、ホント、ホラーっぽいのだが…
　まったく怖くない。
　題名のＭＡＬＩＫＭＡＴＡは容貌の変化を意味するほか、キリストの変容を表わす用語であり、実際に山上のキリストが変貌したとされる祭日（８月６日）の儀式も登場で、かなり宗教色が濃いともいえる。
　一応、ホセ・ハヴィエール・レイエスの語り口がうまく、ミステリー趣味はある程度まで満たされるのだが、超自然的な要素が巧みに生かされたかどうかというと…　筒井康隆の『家族八景』のおける七瀬じゃないが、特殊なパワーを有した人間というのは、勝手に自分だけが知りえる情報が舞い込んでくるというその特殊性ゆえに本人が悩み、傷つき、つぶれそうになるもの。予見の幻想でリカが鼻血をだしたり、倒れたりのシチュエーションは描かれるも、自分自身の内面と葛藤のエピソードを欠くのが減点ポイント。
　イマイチ、薄っぺらと指摘せざるをえない。
　パソコン・ショップという現代テクノロジーを暗示の職種と、一般的に非科学のイメージがつきまとう第六感との対比も形だけに終わっている。
　まあ、警察がディンドンを拷問で自白を強要の部分に、フィリピンの捜査における前近代ぶりをにおわせて興味深いかな。
　ところで、リカがセクシーからサスペンスへ転じた…　が本作のセールス・ポイントになっていたので、セクシーじゃなきゃ、リカの魅力は八割減。そんなのダメよ、と感じていたのだが、白いピタパンでバツグンのプロポーションを浮きあがらせ、犯人に追われて逃げるラストなど、ぞくぞくそそる色っぽさ。思わず抱きしめてキスしたいかわいさだなあ、と再確認するも…
　やっぱり中身のボディーをみたくなる。
　リカとディンドンの仕事仲間の一人をニッキ・ヴァルデスが演じ、こちらもきわどいシーンがなくて残念だった。