ＭＡＫＡＭＵＮＤＯ
（浮き世）
　
04年：ホワイト・セニア・フィルムズ
監督：バルド・マーロ
主演：ジョコ・ディアス
　　　 ガルド・ヴェルソザ
　　　 ローズ・ヴァレンシア
　　　 サリーナ・ポールマン
　　　 ジーン・サブリッツ
　　　 ダリア・ラミレス
　　　 レイ・ＰＪ・アベリアーナ
　　　 ディック・イズラエル
　ローズ・ヴァレンシアに新人のサリーナ・ポールマンを共演させたエロス作。
　と予想したのだが、アクション派のバルド・マーロが監督にあたったせいか、ジョコ・ディアスとガルド・ヴェルソザの男優陣が目だつ印象になっている。
　ジョコ演じるジプニー・ドライヴァーが主人公で、となりに住むサリーナ演じる娘に恋しているも、ぜい沢な暮らしへの野心を抱くサリーナは気にもとめない。近所でカインデリャを営むローズ演じる女性がジョコに好意をもっている。サリーナは乗用車でやってくるガルド演じる男になびくシチュエーションにおいて、酔ったときに介抱をうけた際、サリーナとローズの顔がダブってジョコがローズとセックスし、しょうがなく結婚を決める。楽しい新婚生活を送らないうちに、ヴィザがおりたのでサウジ・アラビアへ海外就労に出発。本当はカネのなかったガルドとサリーナがケンカがちになり、ガルドにローズが親切に接する。ガルドの子をサリーナが出産で、貧しく育児の反面、ジョコの仕送りでローズの部屋には電化製品が運びこまれる。二年ほど経ってジョコが戻ると家を新しく変え、ディック・イズラエル演じる友人に車を買い、一緒にパンパンガで魚の養殖事業を始める。そしてガルドにもひと口乗らないかと誘う。
　出かせぎによっていきなり小ガネもちとの図式が、いささか極端であきれるばかり。いわゆるフィリピン人の幻想をそのまま表わしているように思われる。
　ディックと一緒にガルドが養殖現場に住みこむと、マニラに残ったジョコが強引にサリーナを征服。サリーナがジョコの子をはらみ、養殖場へ食べものを運んでくるローズは、ガルドへますます引かれるものを感じる。ジョコとサリーナの不倫をマリテス・テンプロ演じるディックの妻がガルドに教え、ガルドが飛び帰ってきて、セックス中だったジョコと格闘のすえに殴り殺す。その拍子に身重のサリーナが階段から落ちて亡くなる。ジョコの死が事件でなく事故で処理され、ガルドが赤ん坊を引きとり、ローズと幸せな家庭を築く。
　とにかくサリーナがジョコからのプレゼントを目の前で捨てるのみならず、ジーン・サブリッツ演じる母、レイ・“ＰＪ”・アベリアーナ演じる叔父と同居し、まだ幼いレイの二人の子をしばきまくるのが単細胞すぎるキャラクター。カネに弱いフィリピン人の典型とはいえ、ちょっとバカバカしすぎる。包容力のあるローズとの対比で、きつい性格がやさしい性格に負けるとの狙いはわかるながら、もっと頭をつかってほしい。またジーンとレイがサリーナをみかぎり、子どもを連れて姿を消す説明があるも、冒頭でジョコを起床させていたダリア・ラミレス演じる母がいつの間にかでてこないのは、いかにも不自然でブディー・パラドの脚本がいい加減。サリーナを自分のジプニーに乗せるためにジョコが運転手仲間相手に暴れるほか、ガルドが養殖場近くの泥棒を退治といった余計なエピソードは、単純にハデな見せ場を加えたかったとの安易な構成がマイナスなだけ。
　バルドのタルいテンポが退屈を誘い、前半からイライラばかりを伴う。
　多少とも興味深い点を探せば、路上闘鶏に熱狂する貧民街のようすや、エルニー・サラテ演じる市長が略式でおこなううちわの結婚式、淡水魚の養殖風景くらい。
　それでローズとサリーナの脱ぎっぷりはどうかだが…
　ローズはジョコとの初セックスで乳首をギリギリに露出せず、初夜のセックスはオッパイをガバッとだし、バックで挿入が迫力なのに暗い画面でみづらく、ジョコが不在中に思い出のセックスはオッパイをチラッとさらすものの、粒子を荒らしたモノクロに処理されている。ガルドとのセックスもモノクロで、しかもガルドがパンティーの上からローズのお尻をもみまくるのに、パンティーをさげたあとのモロだしショットをそらし、オッパイは乳首がチョロチョロ程度だからかなりの不満が残る。サリーナはジョコの願望の夢において、ジョコから力づくのキスのあと、不倫のデートで訪れたタガイタイのホテルで、ガルドが駆けつけるとき、実は赤ん坊がジョコのレイプによる子だったとの告白でジョコに犯されるモノクロの回想での四回も盛りこまれるセックスが、いずれも暗いばかりでなく、オッパイを隠しているのがアレレ。さして美人じゃないながら、なんで巨乳の全開を惜しむのよー、と怒鳴りたくなる。
　もう肝心のハダカすら中途半端な駄作。
　もっともサリーナが黒いビキニになり、ハイレグ・パンティーの左右からはみでたお尻の肉をプルプルと振るわせてビーチを走るところのみ、カッカ興奮を呼ぶ。そんな、水着くらいでと笑われるかもしれないが、趣味なもので…
　結局、ファイト・シーン専門のバルドにまかせた、監督の人選ミスが致命的だったようだ。
　なお、サウジ・アラビアの寮にジョコがサリーナのヌード写真を貼っているのは、現実的に考えれば、どうやって手に入れたのとの疑問がわく。田代まさしみたいに盗撮か、なんてね。個人的にカノジョのハダカを撮りまくっているものにすれば、ジョコの気持ちはよく理解できるのだが…