ＭＡＧＩＮＧ　ＡＫＩＮ　ＫＡ　ＬＡＭＡＮＧ
（ただ一つあなたが私に起こすこと）
　
87年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：リノ・ブロッカ
主演：クリストファー・デ・レオン
　　　 ロルナ・トレンティノ
　　　 ディーナ・ボネヴィー
　　　 ジェー・イラガン
　　　 ボン・スアレス
　女性の陰湿な嫉妬劇ながら、そこそこみせる作品。
　クリストファー・デ・レオン演じるアメリカ帰りの建築家をめぐり、二人の女性が対立する。ロルナ・トレンティノ演じるのが開発会社の令嬢で、自らも重役。クリストファーにホレていて、社員に登用し、交際を持ちかける。でもクリストファーはディーナ・ボネヴィー演じる旅行社の事務員が好きで、ロルナとディーナは友人同士との設定。ロルナから強引に迫られたクリストファーは振りきり、ディーナに求婚。腹いせでロルナはジェー・イラガン演じる部下を誘惑し、わざとクリスファーたちの婚約旅行先であるバギオを訪ねたりする。利用されただけと知ったジェーが、ロルナを襲う。ココ・ナティヴィダッド演じるロルナの父が亡くなり、社長に就任したロルナは、ココの遺言にあったクリストファーではなく、ジェーを副社長に抜擢。結婚のあとディーナが妊娠し、今度はズバス・ヘレロ演じる悪徳顧問弁護士をつかってハイメ・ファブレガス演じるディーナの主治医を買収。死産だったと告げさせると、生まれた赤ん坊を奪ってアメリカへ行く。七年後、ボン・スアレス演じる少年をロルナが「息子だ」と連れ帰り…
　との展開で、通俗ドラマにありがちな内容が、まずまず退屈させずに進んでいく。
　クリスファーとディーナがボンのことを実は自分たちの子だと気づくきっかけがちょっと安易ながら、裁判になって、法廷でのエピソードがさすがに盛りあがる。ズバスの狡猾さや、セシリア・ブラオン・ガルーチョ演じる女性弁護士の論調など、なるほどリノ・ブロッカだと納得の描写。ハイメが「立派な医者になりたかったのに、どうしてこんなことに」と嘆くとき、大げさじゃなく、自然な演技に指導している点が買える。
　でも、ボンを引きとったものの、なつかないとディーナが悩むあたりはいささかしんどいし、ロルナがジェーをおろしてクリストファーを経営者に昇格させ、ジェーが銃を持ちだすクライマックスがありきたり。ボンの父親をロルナが「クリストファーだ」と証言したことに対するディーナの反応が甘いなど、けっこう不満を残す。
　昼メロの小型版と思えば、こんなものかもしれない。
　まあ、本来ならロルナは誘拐罪のはずだが、責任を問われていないし、ハイメも無罰のままなど、カネ持ちには刑法がないフィリピン体質がうかがえるうえ、すぐにあの超アホ国家・アメリカ合衆国へ行きたがるのもフィリピンで、リノの狙いとは別の次元において、そうした要素がにじみでたあたりが興味深かった。
　もっとも、ロルナはすごくセクシー。郊外の別荘へクリストファーとでかけたとき、ビーチで虹色のワンピース水着がまぶしい。濡れてボディーにペタッと貼りつき、乳首のポッチまで浮きあがらせてオッパイの形がくっきり。ウェストのくびれ、ヘソのくぼみやヒップラインも色っぽく、ガーンと悩殺される。しかもクリストファーが泡風呂につかっていると「私も入っていい」と現われ、ガウンを脱ぎ、またもワンピース水着。バス・タブからあがるショットがクリストファーだけでロルナを欠くのは残念なものの、ほかの作品も含め、八十年代後半のロルナはミス・水着と名づけたい。
　ディーナはロルナより美人だし、個人的にもタイプなのだが、ここでは意外と洗練のイメージに遠く、ネグリジェ姿くらいしかそそるシチュエーションがみあたらないので、存在感が薄かったのはしょうがないか。
　とにかく陰険な演技ぶりと、最後までクリストファーをあきらめきれない女心の表現もプラスし、ロルナの魅力が映画のすべてだったようだ。