ＭＡＧＩＣ　ＴＥＭＰＬＥ
　
96年：スター・シネマ・プロダクションズ
監督：ペケ・ガリアーガ、ロール・レイエス
主演：ジェーソン・サルセド
　　　 ジュネル・ヘルナンド
　　　 ジュン・ウルバノ
　　　 アンナ・ラルセア
　　　 ジャッキー・ルー・ブランコ
　　　 マーク・ソリス
　　　 シドニー・サクダラン
　　　 ジーナ・パレニョ
　　　 アルジョン・ヒメネス
　　　 ココ・トリニダッド
　文学にはジュヴナイルというジャンルがあるが、映画だとこんな感じかもしれない。
　ペケ・ガリアーガ、ロール・レイエスがエリック・マッティとともにストーリーを考案し、少年少女を主人公に空想の設定での冒険活劇をくり広げる。
　ただし大人の目でみれば、相当につまらなくて退屈を招く。
　師匠のシフ（ジュン・ウルバノ）の門下になったジュバル（ジェーソン・サルセド）が故郷を離れて超自然的な能力の修業をつむ。頭の中で念じることで物体を動かすパワーをもつジュバルとともに、動植物と会話ができるサンバグ（ジュネル・ヘルナンド）、フルーツの種子を口で噛んで爆弾をふきつけるオマール（マーク・ソリス）の仲間三人で旅にでる。途中で不死身の老女のテラン・バヤワク（ジーナ・パレニョ）が首吊りに合っているのを助け、親しくなって反対にあれこれ助けてもらったり、幽霊の少女のヤスミン（アナ・ラルセア）が現われてサンバグが恋したりで、バラバラだった三人がしっかりと絆で結ばれるようになる。一方で悪の化身のラヴェナル（ジャッキー・ルー・ブランコ）が賢人のグランド・マスター（ココ・トリニダッド）を拘束で地上の支配をたくらみ、いったんつかまった三人がこれを阻止する。
　シフが弟子を決めるときに少年時代のジュバル（カルノ・アキノ）よりも優秀だったものの、意地悪っぽい性格がうかがえた少年時代のレクスター（クリストファー・ペラルタ）を落とす。それでラヴェナルの配下に加わったレクスター（アルジョン・ヒメネス）がジュバルのライヴァルとして対立。ありがちな展開といえばそれまでだろうし、各登場キャラクターにもイマジネーションがイマイチなところ。首だけのお化け、水をくれて親切だけど、鬼の顔をしている農民、やはり親切だけど、ヘンな実を食わせるので閉口する水牛の角のはえた男たち、アヒルの変形の監視鳥、エイリアンみたいなデザインから組みあがる骸骨とどこかでみたようなイメージのものばかり。中国様式とキリスト教の要素が混じるのはフィリピンっぽい部分で、冒頭に墨絵のような山が広がれば、崖を歩く風景にはヨーロッパのファンタジーのような雰囲気が感じとれる。三人がビーチで太極拳を学び、ジュバルが滝にうたれれば、グランド・マスターは大司教のような帽子をかぶるし、ギリシア神殿のような建物がでてくる。テラン・バヤワクたちが乗る、足のはえたかやぶきの小屋にはアジアふうのおかしさがにじむ。ラヴェナルの正体である魔の戦士は日本の戦国時代の鎧をカリカチュアしたようなモンスターなのが笑えて、ちょっと『未来世紀ブラジル』を思いださせる。背中に矢の束をうけているようなデザインがおマヌケでよい。ラヴェナルは顔の半分の目とほおをおおうマスクをつけ、ミュージカル『オペラ座の怪人』を意識したのかと勘ぐる。三人のピンチに現われて助っ人となる幼い少年（シドニー・サクダラン）は少林寺拳法の達人で、おそらく『カンフーキッド』のいただき。ワイヤー・アクションでの動きは定石ながら、さほど迫力がなく、この手法を嫌う自分を再認する。ラヴェナルがヤスミンを瓶に閉じこめるのが『ふしぎの国のアリス』なら、単純に瓶を割って外へだすのにアイディア不足を感じる。少年のジュバルとレクスターがシフに能力をアピールの方法が座禅のまま空中浮遊なのは、麻原彰晃かよと日本の客には苦笑がおきる。
　戦いに際して三人が意外とそれぞれの特性をいかしていないも、とうもろこしを爆弾にかえたオマールが敵の兵たちに吹きかけてやっつけ、それらの死体から芽がでて花が咲くのが、そこそこ愉快。ジュバルとレクスターの光線対決はありがちすぎる。中途半端なジュヴナイルを読んだあとのごときもの足りなさがここにも残る。
　日本の特撮番組ならお姉さん女優をみるのが楽しみだし、悪役の女優に引かれるのが本音。本作は欧米ふうの美人のジャッキー・ルー・ブランコによる熟女の黒いコスチュームに期待が高まったのが、ボディーにフィットしたタイプじゃないのでセクシーさを欠いて落胆を招く。ジュバルを誘惑の舞など、さっぱりゾクゾクしない。むしろ骸骨の壁からでてくる三人のニンフを演じるモネット・ガルセス、マルー・タロヨ、ロウェナ・バンガルのほうが、ベージュのハイレグ・レオタードで全身のプロポーションを浮きあがらせて色っぽい。またジュバルの母をテス・ミチェレナ、レクスターの母をメエ・アン・アドニスが演じていて、テスが年増の魅力うかがわせる。