ＬＯＶＥ　ＯＮ　ＬＩＮＥ
　
09年：オクトアーツ・フィルムズ／Ｍ−ゼット・ＴＶプロダクション／ＡＰＴエンターテインメント
監督：トニー・Ｙ・レイエス
主演：ヴィク・ソット
　　　 ポーラ・テーラー
　　　 ジーナ・パレニョ
　　　 マリニン・レーネス
　　　 レオ・マルティネス
　　　 ホセ・マナロ
　　　 マット・エヴァンス
　　　 メリッサ・リックス
　　　 ダニエーリエ・カスターニョ
　　　 ウォリー・バヨラ
　　　 リッキー・ダヴァオ
　　　 リッチー・レイエス
　　　 ジャッキー・アキノ
　トニー・Ｙ・レイエスとヴィク・ソットのコンビによるコメディーで、ビベット・オルテサとトニー・Ｙ・レイエスが脚本を担当し、おなじみのスタッフに、タイの女優のポーラ・テーラーをヒロインにむかえてロマンス色を強め、インターネット社会を風刺ながら、あまりできがよくない。
　インターネット・ショップを営むサムソン（ヴィク・ソット）は洗濯屋を営む母のデライラ（ジーナ・パレニョ）と仲がよく、義理の弟のトット（ホセ・マナロ）に洗濯屋を手伝わせるが、紳士のサムソンに比べてトットが下品で、いつも仕事をさぼってインターネットの出会い系サイトにのめりこむ。所有の土地を買いたいと弁護士（リッキー・ダヴァオ）があらわれるや、デライラが愛犬のテリアをどう猛なドーベルマンにみたてて追い返す。一方、同じく土地の買いあげを断るドン・ペドロ（レオ・マルティネス）は姪のバニー（マニリン・レーネス）と暮らし、病気で歩行困難になったため、介護でタイに住む娘のポーラ（ポーラ・テーラー）がフィリピンにやってくる。トットは出会い系サイトのプロフィールに醜い自分ではなく、サムソンの写真を貼って女性を誘い、やはりブスのバニーはポーラの写真で男たちを引きつける。トットとバニーがデートの約束をとるも、お互いに相手をサムソンとポーラと思っている。なんてことでサムソンとポーラが恋に陥り、トットとバニーが嫉妬をおぼえる。
　サムソンがデライラに気づかいすぎで恋人のクレオ（ダニエーリエ・カスターニョ）にふられて落ちこみ、トットがインターネットでパートナーをサムソンに探せば、超デブのオカマで逃げだす。トットはホテルへ連れこんだ刺青の女が強盗だったと皮肉を入れるながら、現実に出会い系サイトが売春の場の実態はでてこない。映画ゆえのフィクションだろう。
　もてずに落胆のトットにデライラが適当なまじないを教え、サムソンとポーラがデート中にトットが呪文を読めば、本当にきいてサムソンとトットが入れかわる超自然のありえないシチュエーションはファンタジーの要素。いきなり下品にひょう変のサムソンにポーラがショックをうけて去る。マジックは６時から９時までとの時間限定で、さしずめシンデレラ状態。サムソンが謝って仲が復活し、６時前に別れるデートをかさねてサムソンとポーラがラヴラヴも、サムソンの自宅へポーラを招いたとき、６時をまわってサムソンが下品に変身に驚き、ポーラが心を閉ざす。トットと入れかわるマジックなんて信じるわけがなく、ペドロの脚が治り、ポーラがタイへの帰国を決めるや、あまりの落胆ぶりにバニーが動き、かたくなに弁明を聞くのをこばむポーラにサムソンと再会の機会をつくる。
　ポーラの性格がいささか単細胞で、底の浅いドラマなあたり、いかにも一般向けを意識におく構成。バニーとトット、デライラとペドロにもハッピー・エンドを与えて、安易さが娯楽作品なんて感じかな。
　せっかくインターネットとのメディアを題材に使うも、世界をカヴァーできるこの媒体を活用でフィリピンとタイの間に恋が生まれるわけでなく、フィリピン国内で交際だから、主人公の片方をタイとフィリピンのハーフに設定の意味を欠く。
　ポーラ・テーラーの出演に、もっとアイディアがほしいところ。
　サムソンの姪のリシー（メリッサ・リックス）がボーイフレンドのデーヴィー（マット・エヴァンス）とインターネット・ショップでなりゆきをながめ、インターネット・ショップにたむろするボク（ウォリー・バヨラ）やふたりの若者（ドミニク・ロコ、デーヴ・セルヴァンテス）が傍観者の立場で、さほどドタバタと騒がない点が全体におさまってプラスに思える。サムソンの友人でバランガイ・キャプテンのオクサ（リッチー・ドゥホルシー・レイエス）も控えめなバカっぽさがまずまずの印象。洗濯屋に雇われるベーブ（カカイ・バウティスタ）とビューティー（アン・ボレチェ）のコミカルな愉快さがリズム感にあふれる。デライラが入院で女医（ジャッキー・アキノ）が「彼女の血液型はAB型で、非常にまれだ」とサムソンに説明も、確かにフィリピンではAB型が日本の半分ほどだが、血液型はあくまで輸血など医療に関係の事柄で、性格判断と無縁が欧米と同じ。冒頭と途中に２０６９年のマニラが入り、百歳を超えるサムソンとトットが入れかわっていて、結局はマジックがとけずじまいがおかしく、肯定面も多いながら、未来の背景がＣＧじゃなく、絵にすぎないのはまだしも、ディジタル撮影の全編の画面づくりが平面っぽいため、ＴＶのヴァエラティーのごとき軽さが芝居の質までをさげる。
　弁護士の顧客が日本人でヒロシ（クレイトン・オラリア）と名のり、前金を要求の弁護士に大金をわたし、ペドロへ紹介におじぎで「はじめまして」といえば、ペドロが土地を売らないため、前金で話がついているとだました弁護士に「バッキャロー」ときれて弁護士が「トモダチー」とあわてる茶番は、日本人の風刺でいつもの定番のカリカチュア。
　ポーラに「あなたは美人、私はデブでブス」と落ちこむバニーが歯にギブスをはめ、髪の毛をモジャモジャにのばすのみならず、眉毛をワザとらしい小細工で太くメイクはどこか日本のイモトというタレントをイメージするが、実際にまねたのかもしれない。
　親子以上に親密なサムソンとデライラが旧約聖書にあるカップルの名前なのは宗教のもじりで、どこかに上座部仏教のタイと対比を盛りこめばよかったと感じる。歩行訓練のペドロが「さあ、歩きなさい」で倒れるギャグも、少し新約聖書のキリストの奇跡に連想がつながる。
　Ｇレーティングのために色気の皆無が個人的に不満な部分をなし、ポーラ・テーラーは短パンでヨガのときにノー・スリーヴのシャツの胸を突きだすも、ブラが浮かぶ程度。ややキュートなメリッサ・リックスはセクシーさがゼロで、女優名が不明だが、トットにホールド・アップ強盗の刺青女はホテルで脱がないまま。未来のベイ・ウォークを歩く光沢短パンのエキストラたちがちょっと気になるかな。ヒロシの妻のサイダ役はペティテ・アイコチョと思うが、ミニスカに太腿がみえる。なんといってもそそるのはミス・フィリピン出身のダニエーリエ・カスターニョで、容姿がムズムズと欲望を刺激し、つい「やりたい」と声をあげそうながら、トットと入れかわった下品なサムソンとベッドでイチャつき、やはりワンピースにパンティーがのぞくかどうかくらいの誘惑だった。